自衛艦の事故は重大だ 地方議会もしっかりして

 続・自衛艦事故

榊原烋一 【サカスト】
2008年3月3日(月)寄稿

イージス艦事故については、毎日のように国会での問題にもなるし、報道各社も取材合戦の様相を見せている。一方防衛省の発表もその日替わりの模様になってきた。漁船発見は2分前と言っていたのが12分前になったり、右舷の緑色の灯火を見たというのも左舷の赤色灯であったり、大臣が言うことと次官の言うこと、そして制服組の言うことなどその都度違ってくる。

しかも海上保安庁の事情聴取の前にヘリで航海長を省へ呼び出し、大臣同席で事情調査をするなんて、まるきり責任逃れの口裏合わせをしましたと言わんばかりのいい加減さ。あるテレビの解説者は、これでは鉄道事故を起こした運転手が警察から事情を聞かれる前に本社へ呼んでこういうことは言うなと命令するのに等しい、と言っていたがまったくその通りだ。

福田総理も国会で野党からの追及にたまりかねて、自衛隊は海外で国際的にも大きな評価を得ているのに今回の事故は慚愧に耐えないとこぼすありさまだ。【サカスト】でも事故早々に大臣は責任をとれと述べたが、彼は報道陣に、このような防衛省の体質をなおすのが私の役目などと居座りの模様、えらい人が自ら責任をとるという態度こそこの情けない体質をなおす特効薬になると思うのだが。

つい先日、私と同年輩の男数人で最近の社会情勢について勝手な雑談会を催した。席上この問題も当然のごとく話題となった。

まず全員がうなずいた点、それは戦前ならこんな事故は軍隊の内部で処理してしまうから絶対に社会問題にはならなかっただろう、しかも軍隊を警察が取り調べるなんてあり得るはずがなかった、ただちに憲兵が関係者全員を拘束して世間の目に触れないところで処理してしまうはず、その点では今の世の中はそれこそ民主的な世の中になったものだ、という感想だ。

ただし、この雑談仲間の中に商船大学(現在は海洋水産大学とかになったようだが)出身の船乗りがいた。彼いわく、だいたい東京湾付近の漁船の姿を見たら大型船はそれを避けて航行するのが常識なんだ、たとえは悪いが漁船は暴走族みたいなものでそんなところに突っ込もうものなら事故を起こすことが当然、彼等は仕事に夢中なんだから大型船のほうがが避けなければ事故の確率は上がるばかりだそうだ。

更にあの船には見張り(これも船乗りはワッチと呼ぶ、つまりwatchがなまったもの)が11人もいたそうでこれも驚きだという。通常の船ならたとえ10万トンのオイルタンカーだってワッチはせいぜい2〜3人しかいないはずだそうだ。彼いわく、自衛艦とはいえ戦争に行くのでもないのにワッチが10人以上いて、その挙げ句事故を起こすということなんて信じられないという。自衛隊にはよほど暇な人間がたくさんいるんだなあ、というのがわれわれの感想だ。

被害者親子は未だに発見されない。けれどもその家族は漁師の仲間に捜索は中止して仕事に戻ってほしいと依頼している。この心情も良く分る、漁船が1日操業を中止すれば収穫はまったくゼロ、まして捜索に当たれば現在のオイル高の状況から考えれば1艘あたり何十万もの金額がかかってしまう、漁民同士だからこそ分るこの遺族の気持ちを考えるほどに、この事故は気の毒としか言い様がない。

それにしても遺体が発見されるまでだれかが捜索を続けない訳には行かない、そこでまた税金がしかたなく使われるのだ。イージス艦艦長からさては総理大臣までお悔やみに行くのは当然と言えば当然の話なのだが、それを迎えたご遺族や更には被害者の属していた漁業組合の組合長さんの態度はテレビで見ている限りほんとうに立派なものだった。決して感情的にならず、と言っておえらいさんに卑屈になるでもなく、まことに冷静で淡々とした受け答えだった。

日本がまだ捨てたものでもないと一番感じさせられるのが、一般庶民の中にこの方々のような姿がまだ残っているのを見ることができるからである。政治家たちは少なくとも一流とはとても言えない世襲が大半、役人は税金の無駄遣いで保身のかたまり、こんな事実を見せつけられているとこの国はいつまでもちこたえられるのだろうと寂しく思うのだが、国民の普通の仲間の中に尊敬に値する姿を発見するとき、心から安心する気持ちになれるのだ。

それにしても石破大臣、防衛省改革のためなんていつまでも居座っているとそのうちに内部からひっくり返されてしまいますよ。だいたい三軍統一なんて出来っこない話し。戦前から日本陸軍と海軍の仲が悪いのは有名だ。その時代には空軍は独立していなくて陸軍航空隊と海軍航空隊とに分かれていたのだが、使う飛行機は両方別々、もちろん用途も違うのだろうが同じ飛行機を量産して用途別の備品を乗せれば安上がりに決まっているのに双方別に作る。海軍には有名なゼロ戦があれば陸軍には隼があるという具合。

朝鮮戦争のおかげで戦後すぐに日本には軍隊の卵みたいな警察予備隊などが出現したが、戦争のことは素人には手が出せないから結局自衛隊のご先祖様は陸軍か海軍の軍人さんたちが作ったもの、そのDNAはしっかりと伝わって来た。おまけに戦前の軍人の横暴にこりた日本はアメリカの言うように文民優位の組織としたから、内局と称する事務屋が権力をもつ、これは現場をあずかる自衛官たちには極めて不愉快なこと。守屋さんが捕まったとき彼等は溜飲を下げたに違いない。

こんな複雑怪奇な組織だからお利口な政治家なら火中に栗を拾うような危険なことはせずにおとなしく部下の言うことを聞いて任期をまっとうする。それもあるから石破さんに、いい機会だから責任をとってお止めなさいと私は忠告しているんですぞ。

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