ふたたび教育問題 続・自衛艦事故

 自衛艦の事故は重大だ

榊原烋一 【サカスト】
2008年2月20日(水)寄稿

漁船に衝突したイージス艦イージス護衛艦が漁船に衝突沈没させ、漁夫2名が行方不明のニュースは各メディアが大きく取り上げることになった。これは当然のことで、数百キロメートル先のミサイルを一度に二百もの方向に向って迎撃しこれを破壊することができるとのふれこみの護衛艦が、こともあろうに目の前の漁船を見落としてしまったのだから。

ミサイル迎撃の作業はほとんどがコンピュータによってなされる。人間は画面を見てその指示に従って機械の操作をするだけだ。ところが日本近海での操船は、多数の漁船、客船、遊覧船などの間を縫うようにして航行するのだから、これこそ人間による監視の活動が最優先され、しかもその人間が重い責任感、使命感をもって当たらなければならない作業なのだ。

もちろん最新型のイージス艦のことだから、遠方ばかりでなくごく付近の海上にある船舶だって探知可能なレーダーを備えているはずだ。ニュースによれば遠距離用のレーダーを近距離向けに変更することを忘れていたなどの報道もあったが、とにもかくにも人災的な要素が極めて強いと感じさせる事故ではあった。

戦争をしないでも一定の期間無事に過ごせばひとりでに階級が上がって行く、いわば官僚制度の軍人である自衛官だから、もともと緊張感が乏しくなっていることもある。しかしここのところ一連の海上自衛隊に起きた不祥事を見ていると、このような事故も起こり得べくして起きたとしか思えない。

まず防衛事務次官の収賄事件だ。大臣を除けば官僚トップの事務次官が数年にわたってゴルフ接待ばかりでなく娘の留学の世話まで業者にしてもらっていた。こんな男にでも、就任式となれば大まじめで閲兵式に加わらなければならない自衛官が、幹部に対してどんな思いをもったことか。

更に、海上自衛隊に限ってもイージス艦の極秘情報が中堅自衛官によって漏れてしまうわ、自衛艦の中で不審な火災が起きるわ、インド洋での給油の量をでたらめな数字でごまかすわ、挙げ句の果ては航海日誌まで紛失するわと、やることなすことだらしのない限りの事件の連続だ。

しかも最近の週刊誌が報じたところによれば、自衛艦の中での部下いじめは相当に深刻なものがありそうで、自殺者まで出ているとのこと。もしこれが本当だとするならば大問題だ。とにかく一度港を出てしまえば見ている者は艦内の人間に限られてしまう、そこでとりわけ階級社会の見本のように上下関係の厳しい中で上官によるパワーハラスメントが行われるという体質が形成されているとしたら、これはもう旧陸軍内務班顔負けのいじめ体質が出来上がってしまったと言わざるを得ない。

こんな人間関係が出来上がってしまうと、下の階級の人間の上級者への信頼は著しく低下してしまうことは火を見るよりも明らか、となれば上官の命令を忠実に果たそうとする人間もいなくなってしまうから、今回のような事故にもつながってしまう恐れ十分だ。

まして戦前の軍隊は徴兵制だったからいくらいやがっていても葉書一枚で召集されてしまったが今は志願制、あたかも相撲部屋で若者がいじめ殺されたおかげで、若い日本人の力士志願者が激減してしまったと同様の状態が、今度は自衛隊にやってくる可能性だってないとは言えない。

そう言えばつい先日、駅前で50がらみの背広の紳士が慇懃な態度で私に寄って来た。何だろうと思ったとたん、かれは私にポケットティッシュを渡したのだ。最近のティッシュ配りにはとうとうおじさんまでかり出されたのかと思いながらそのティッシュの表にかかれた広告を見てもう一度びっくり。そこには自衛官募集、説明会会場はどこどこと書いてある。

受け取った時には、あのおじさん私のことを若く見間違えたなと大いにおかしかったのだが、もしまじめに80のおじいさんにでもすがらないと自衛官の募集が困難になったかと思うと背筋が寒くなってくる。反対にこんなありさまでは日本は再び戦争をやれる国でなくなったことには大いに賛成だけれど。

とにもかくにも、今回の事故で言えることは、大臣以下防衛幹部は絶対に責任をとってもらいたいことだ。特に石破防衛大臣は引責辞職すべきだ。彼は軍事オタクと呼ばれるくらいの軍事大好き人間、だから防衛大臣のイスはかれにとっては最高のイスであったとは思うのだが、いくら自衛隊だと言っても玩具の軍隊ではない。こういう事態にあってなお幹部のだれ一人として責任を負わないという組織であり続けることは、今後更に危険な事態をひき起こしかねないからだ。

つづき

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