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榊原烋一 【サカスト】 |
1月15日付の【岸コラ】には同感させられた。いつも極めて綿密な参考資料を用いながら自分の主張を展開して行くところなどはとても【サカスト】の及ぶところではない。
これを読みながら、私も同様に権力がマスコミを巧みに操作して国民を一つの方向へと導いて行くことの恐ろしさを、お互いにもっともっと注意する必要があると痛感させられた。
戦前だってこんな例があった。マスコミはこぞって日、独、伊3国の防共協定(共産国に対峙しようとする意味だ)の締結を礼讃していた。ところがある日突然、ドイツ総統ヒットラーがこともあろうに当時のソビエト首相スターリンと不可侵条約を電撃的に結んでしまった。ときの政府、マスコミは大あわて、ついに「欧州の動静は曰く不可解」なる名文句を遺して時の平沼内閣は退陣してしまったくらい。
つまり、内政だろうが外交だろうが、自分たちだけの希望的観測でのんびり構えている訳には行かないのに、マスコミはとにもかくにもニュースにさえなればいい、とあおりたてるだけの面が多い。そんな危機意識をもちながらもう一度あの【岸コラ】を再読して欲しい。
数字に出すと何やらもっともらしく見えるが、数字だって使い方しだい。前にも書いた気がするが、ある年、少年犯罪が急激に増えたとなれば、マスコミはいっせいに少年の凶悪化を書き立てる。しかしこれも警察が、国賓来日とか大災害がないから、今年はひさしぶりに犯罪少年や触法少年を重点的に取り締まろうとした結果ならば、数字が大きくなったって当たり前。
さて数字で最近気になるのは、福祉目的で消費税増税がやむをえないという動きが増大しつつあることだ。少子高齢化が現実となりつつあることは間違いない、だからこれからは、年金、医療などの費用がかさんでくることも当然、しかるに税収はそれほど増加しないばかりか、債務の返却すらままならない。ゆえに福祉目的税として消費税アップもやむをえない、というのが増税論の筋道だ。
そしてもっとも負担が公平なのが消費税であり、日本の消費税あるいは付加価値税は世界でも低いレベルにあるから多少引き上げても問題はないという。
【サカスト】は以前からこの論に反対してきた。その理由は、消費税には逆進性が強いこと、安易にとれる税金はどう使おうが取り上げた方の勝ちという役人の論理が透けて見えること、そして支払われた消費税の何パーセントかはどこかの懐におさまってしまうこと、などである。
しかしつい先日の日経新聞によれば、国民年金の基礎部分を税金でまかなう案が日経独自の考え方で発表された。政治の世界でも民主党はこれに近い案を出している。たしかに長い年月をかけ続けて来た結果の自分の年金が、生活保護世帯の収入以下になってしまうとなれば、もはや保険制度を維持して行くこと自体にむりが生ずる。
【サカスト】筆者のように良き時代に生まれ合わせた人間にとってみれば、今後年金生活に入る人々の不安も良く分かる。と同時に、長生きしていることがはばかられる思いもひしひしと感じる。
国民年金制度はご存知のように自分が積み立てたお金を老後にもらうという制度ではなくて、現在の老人の年金の支払いのために、現在の働き手が拠出する、つまり生命保険と同様な仕組みなのだ。一人一人が自分の親のためにお金を使うのではなく、世代全体で上の世代を養うという考え方は、自分の死後のことを考えてお金を積むのではなく、皆で積み立てたお金をたまたま死んだ人がもらうという仕組みと同様、だから保険と呼ぶのだ。
生命保険の場合には、自分が死んだ時にどれだけのお金が必要か、ということで掛け金が決まる。年金もこれまでは、退職後すくなくとも暮らしの足しにはなる、という計算が立ったからだれも文句言わずに掛け金をはらっていた。すぐに使わなくてもいい金がじゃぶじゃぶと入ってくる時代だったから、預かった金はどう使おうと知ったことではないという役人と労働組合がなれ合いになって自分たちの都合のいい使い方をしていた。
本当はこんな時代に平気で無駄遣いをしていた連中からその一部でも取り戻せ、と言いたいところだが、システムのうえからこれは不可能に近い。
老人の方が働き手より多くなるときには、たくさん支払ってももらえる額は微々たるもの、それなら払うのはいやだ、という人間が増えてくる。そうなれば保険方式は成り立たなくなる。だから今の内に全国民が老人になったときに税金で一定の部分は保障しようというのが消費税増税の考え方だ。
ただある日突然制度を変更したら、現在でも年金保険料を払っている人はその分がまったくむだになってしまうし、一方、全然保険に入っていなかった人間は丸儲けになってしまう。だから一挙に制度を変えることも出来ないところがこの問題をますます難しくしているところだ。
現実には若者、特に20代の人間の加入率はおそらく50%を切っているだろうと言われている。これではもはや保険制度とは言えない。しかし、だからといって消費税を安易に引き上げることには賛成できない。
と思ったら1月17日付けの日経新聞に、私の反対論を補強してくれる論説が掲載された。論者は早稲田大学教授宮島洋氏。その概要を紹介する。
税による保障を氏は無拠出制年金と呼んでいるが、これの最大の欠陥は国民には勤労努力、企業には雇用努力、政府には就業、雇用支援政策の誘因を低下させることだという。つまり遊んでいてももらえるものはもらえるという考え方になる。事実今から20数年前、コペンハーゲンで見た光景を思いだした。当時デンマークも手厚い福祉政策をうち出し、失業保険もほとんど就労時と差がないほどだったのだが、私が目にしたのは平日の昼間、東京で言えば銀座にあたるような街なかに驚くほど多数の若者がぶらついていたことだ。
また現在欧州連合の付加価値税の平均が20%だから日本も5%を多少引き上げたら、との考えにも、氏は、EUは市場統合、税関廃止のため域内での貿易課税が難しくなるからあえて15%以上の付加価値税を参加諸国に義務付けたという。したがってその必要のない日本が消費税引き上げの根拠にするのはおかしいと説く。
抜き書きで論者にはたいへん申し訳ないが、最後に現在日本の消費税は国際的に見て唯一消費者の負担した税が、事業者から国庫に全額納付されたかどうかの保障のない間接税だという。したがって消費税引き上げに当たっては、最低インボイス方式の採用、現在の国税の徹底した滞納対策、個人事業者の家事費と事業費との厳密な仕分け、などが必要だと論じている。私もそれらがすべて解決すれば消費税引き上げやむなし論者になるだろう。なぜならば税制には公平性、透明性がもっとも必要だからだ。
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