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榊原烋一 【サカスト】 |
昼間、某局のテレビニュースを見ていて、ヘーっと思ったことがあった。マスコミがよく行う世論調査の結果のニュースだった。それによれば、海上自衛隊の給油活動継続に賛成か反対かというもので、なんと反対が51%で賛成は37%だという。もっとも回答数が約千二、三百だというから、こんな数字で国民全体の感情をとやかく言うことはできないとは思うが、日本人も少し変わったと言うべきか。
同じ調査では、福田内閣の支持率も若干下がり気味のようだ。両方を合わせてみると、自衛隊の問題以前に、日本人の対米感情が少しずつではあるが変わって来たような感じがする。福田さんも総理になってすぐに訪米したが、その際にかなりアメリカから給油活動の継続を強制されて来たのではないか。自民党側からの発言を聞いていると、いま給油活動を中止すれば世界中から相手にされなくなるような口ぶりだし、新聞紙面にもそんな意見を強調するものもあった。
イラク戦争もうまくいかない、アフガニスタンもこう着状態、そこへもってきてわが国では政府のスポークスマンとも言える官房長官、また自民党のまとめ役でもある幹事長、この二人がそろいもそろってまことに役人臭く、サービス精神のかけらも見えないことも国民感情を逆なでしているのかもしれない。なにしろ現在の日本国民の感情では役人と言えば最低、最悪の人種のように思われているのだから。
そしてアメリカといえば、間もなく退場するブッシュの率いるアメリカのやることにさすがの日本人も嫌気がさしてきている匂いもする。北朝鮮問題の解決もほどなく結着を見るだろうが、ここでアメリがいい加減な解決策を打ち出して拉致問題から逃げてしまえば、おそらく日本の反米感情は火を噴くに違いない。
オーストラリアでは政権交代が実現、イラクからの軍隊撤収が実現しようとしている。オーストラリア軍といえば、わが陸上自衛隊がイラク駐屯の際の護衛軍であり、いうなれば命の恩人とも言える存在だったのだ。あの時も迫撃砲による砲撃はあったものの、地上戦は皆無だったからよかったけれど、もし地上戦ともなっていれば自衛隊は自分の身を守るだけ、そしてオーストラリア軍には戦死者が出た、こんなことが報道されたら、それこそ給油活動継続か否かどころの問題ではなく世界中に恥をさらしていたに違いない。
さてここでまた一冊の本を思いだした。それは今年7月に発行された講談社発行の「一度も植民地になったことがない日本」という新書で、著者はデュランれい子というスウエーデン人と結婚したジャーナリスト兼美術家。内容はヨーロッパに住んでいる、またヨーロッパ人と結婚した日本人が常に味わう文化的なギャップを書いたもので、中にはまたそんなお話かと聞き飽きたような誤解話もあるが、先日本屋でちょっと同じ本の奥付けを見て驚いた。今年の7月に初版が発行されて、なんと10月には第8刷まで出ている。こんなに売れている本なのだから、ひょっとして【サカスト】の読者の皆さんも既にお読みになっていらっしゃるのでは、と思いつつ家へ帰って読み直してみた。
今日のテレビニュースと合わせて読んでみるとなるほどと思わせられることがいくつかあったので、私が同感した部分をご紹介してみよう。それは「日本は『孤児』じゃないのか?」という見出しのついた一節。そこにはヨーロッパでは至る所で中国趣味の品物が売られているが、ヨーロッパ人に言わせると日本的なものと比較すると、同じアジア人の作ったものなのにまったく違うのはなぜ?と問われることが多いという部分だ。
著者の意見によれば、それは安土桃山時代に渡来したヨーロッパ文化があっと言う間に日本中に広がり、むしろヨーロッパ化されたからではないかという。この著者はご主人といっしょにスウエーデン、オランダ、ブラジル、フランスなどの各国に在住したためにものごとを比較文化的に見ることが好きらしい。
そこでこの考えをご主人に話したところ、あなたの言うことは分る、つまり中国を離れてヨーロッパ文化を取り入れ220年もの間オランダとしか付き合わない鎖国の間に独自の文化を育てたことは分るが、その間に日本は世界の孤児になってしまった、その意味は、ヨーロッパ人は血も歴史も文化もどこかでつながっているが、日本人はそのたぐいのものを220年かけてすべて断ち切ってしまったからだ、と言われたそうだ。
それに対する著者の考え方、これは現在の日本に通じると思うので、少々原文を引用してみよう。(同書p.109より)
しかし夫の言うように、もし日本が世界の孤児だとして、かえって積極的にその歴史や立場を世界の人に理解してもらったら面白い国になるのではないか。世界唯一の原爆被爆国であることも立派なアイデンティティーだと思う。
こういうことを日本が主張して来なかったのは、日本人独特の『目立つのはエレガントではない』という美意識のためかもしれない。残念ながらこの美意識は、日本人同士では通用するが、外国人には通用しない。以心伝心はヨーロッパでは通用しないことが多いのだ。ヨーロッパの人々の多くは、すべて言葉にしないと分からないほど鈍感と言ってもよい。そのうえ彼らは、日本に好奇心はあっても関心はないという人がほとんどなのだから。
彼女の言う通りで、湾岸戦争で金は出したが血は流さない金持ちの国、とやゆされたことに懲りて、他国と同じように、しかし戦争はできない自衛隊をあちこちに派遣するよりも、日本は金も持っている、自衛隊も一流の兵器はもっている、しかし、世界でただ一つ、自国の領土を侵そうとする敵があったときのためで、その他の戦争には一切参加しないという独特な憲法を持っている国、ということを世界に向って常に宣言しておけばよいと思うのだ。それが認知されれば、むしろ今の中途半端な姿勢よりはるかに賞賛される国となるはずなのに。
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