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榊原烋一 【サカスト】 |
技能オリンピックで日本の若者が活躍してくれた。日本の企業が安い賃金で働く労働者を求めて工場を海外に展開し続けてきたため、また、団塊世代の大量退職もあって優秀な技能者が育ちにくくなったことが心配されていたが、今回の結果を見れば少しは胸をなで下ろすことができそうだ。もともと日本人には、器用さや熱心さ、そして時間の正確さなどの特質が世界の何処にも負けない美点としてあるはずなのだから。
なかでも私が感心したのは、ケーキづくりで金メダルを獲得した若いお嬢さんがいたことだ。技能工の場合、成績優秀者はいずれもトヨタとか日立のような大企業でこの日のために研修に励んで来たものが多かったし、会場も今回はホームである日本国内であったというハンデにも恵まれたのだから当然と言えば当然とも言えるが、ケーキづくりに挑戦したお嬢さんは、聞くところによればたった3年間、お菓子づくりの専門学校に通っただけだというし、審査員の中には欧米人もいたというから、当然日本人の味覚とは違うだろう中で金メダルを獲得しているからだ。
テレビで本人が話しているのを聞くと、もともとお菓子を作るのがきらいではなかったが目標をたててそれに向って努力するという習慣はあまりなかった。しかし、今回の受賞で,自分でも目標に向って夢中になることの大切さを身にしみて感じたと言う。こんな若者が存在していることも将来の日本にとっては心強い限りである。
それに反して今の日本を率いるはずのお偉いさん方のみじめさはもう救いようがない。【岸コラ】でも指摘しているように、実戦の役にも立たないような戦闘機に高い税金を惜し気もなく使う。そのかげで高級官僚は汚職にまみれる。政治家達は自分の保身の術しか考えようとしない。前から言っているけれども、この国にはノブレス・オブリージュなる考え方はまるでないも同然の惨状。こんな無駄遣いをほったらかして財務省の片棒かついで増税を叫ぶ与謝野さん、それこそ「君上げたもうことなかれ」ですぜ。
それでも最近もう一つ、こんな新聞記事にほっとさせられた。それは日経新聞11月22日夕刊の「化学兵器の番人 全廃に向け奔走」と題したかこみ記事である。
その内容は、かつてオウム真理教というインチキ教団が使用して大事件となったサリンのような化学兵器を全廃させるべく監視する国際機関があるというのだ。その名を化学兵器禁止機関(OPCW)といってオランダのハーグに本部があるという。今年で発効10周年を迎えた「化学兵器禁止条約」に基づいて主としてアメリカ、ロシアなどが大量に保有する化学兵器の全廃を進める総勢520人の「化学兵器の番人」をたばねているアルゼンチン人のロヘリオ・フィルテル事務局長とのインタビュー記事である。
同じ国際条約である「核拡散防止条約(NPT)」では、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国だけには例外的に核兵器の所有を認めているのに対して、この事務局長に言わせれば「化学兵器禁止条約」は加盟182のすべての国に化学兵器の所有は許さないというものだそうだ。それを監視する機関がOPCWと呼ばれる機関で、世界的に活動をしているという。
ところが核兵器の場合は、材料となる高濃縮ウランやプルトニウムの製造に大規模な施設を必要とするが、化学兵器の場合には小規模な施設でも民生用の化学物質に少し手を加えるだけで製造できてしまうために、その査察の対象が膨大なものとなり、条約加盟国でありながら査察に非協力的な国もあってまことに面倒なのだという。北朝鮮やシリアのように条約に加盟しないが疑惑が多分にある国もあるそうだ。
そのような中でフィルテル氏が強調しているのが模範生としての日本の存在だ。日本国内にはおよそ550ほどの化学メーカーの施設が査察の対象に指定されているが「OPCWへの協力では日本の右に出る国はない」と言う。業界にとってみれば査察団の受け入れは業務にも支障を来す場合が少なくないが、日本の業界がまことに模範的な受け入れ体制を見せているために、他国に対しても「日本を見習え」と強く言えるのだという。
かつて満洲事変前後よりハルピンにおいて日本陸軍は通称731部隊と呼ばれる細菌兵器製造部隊をもうけ、中国人に対して人体実験まで行ったことは有名な事実である。このような歴史を振り返りながら、現在の日本はせめて大量虐殺事件と呼ぶしかない「戦争」だけは二度と起こさない、という意思を世界の中に示し続ける必要がある。そのためにも、この記事が事実であれば、これもうれしいできごとの一つとなってくれる。
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