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榊原烋一 【サカスト】 |
昔から子育ての原則として、他人と接するときに「おはよう、こんにちは」と言え,他人に世話になったときに「ありがとうございます」と言え、他人に迷惑をかけたときに「ごめんなさい」と言える三つの挨拶を親がしつけておけば、その他のことは本人に任せておけばよい、という言い伝えがある。
近頃のテレビを見ていると、民間会社のお偉いさん方は最後の「ごめんなさい」を言うために出世して来たのだとしか思えないほどよく謝る。飛行機や電車が事故を起こした、食品に不純物が混じっていた、ガス器具の不具合があった、などなど画面に出てくる社長さん方はいつも並んで頭を下げる。ところが一方、公務員と政治家になるとどういうわけだか反対にまったく謝らない。
警察官が飲み屋の女の子にのぼせてストーカーを繰り返し、挙げ句の果てには商売道具として貸してもらっている拳銃でその女性を射殺し、自分も自殺するという大事件が起こった。昔でも同様な事件がまれにはあったが、そんな事件が起ころうものなら警視総監は必ず責任を負って辞職した。このごろは謝るどころか、犯人の警察官は死亡退職だとして一時は退職金を支払うとまで言いだす。
さすがにこれには世論の猛反撃を受けた、そこで都内の警察官が募金をして被害者家族へのお見舞金にすることになったそうだ。そこまで行ってもトップは知らん顔だ。だいたい女性を殺害した時点で既にこの警察官は殺人犯となったのだから時系列的に考えればそこで懲戒免職に値しているはずで、その後本人が死んだか死ななかったにかかわらず退職金を支払うなんてバカな話しはないと思うのが常識のような気がするのだが。
国民から集めた金を自分の懐に入れてしまった公務員がいる。これもだーれも責任はとらないしだーれも処分もされない。この社会保険庁とか市区町村の公務員なんて明らかに窃盗犯ではないか。今頃になって担当大臣である厚生労働大臣がテレビの記者会見で「泥棒は捕まえて牢屋へ入れるべき」などと、時代劇の見過ぎのような台詞をしゃべっているが時既に遅く、そんな犯人はとっくに功なり名遂げて?退職してしまった。
さて、最後は金の問題を追求されて弁明できなくなって自殺した大臣が出て来た問題。自殺を選んだということ自体、自分に非のあることを認めたようなものだが、昔ならば理由はなんであろうと、いやしくも大臣ともあろうものが自殺したとなればこれは内閣総辞職ものだったはず。
ところがこのごろの総理大臣はまるで他人事だ。自殺する大臣が出てもなんとも思わない総理大臣だから、まして失言、金絡みなどで大臣が何人やめようと平気なもの、こういうやからのことを、昔は「蛙の面に小便」と言ったものだ。そのくせ教育再生だなんてことを平気でしかも得意気に吹き回る。学校の先生こそ大迷惑だ。
いくら教師にだけ強制的に研修を義務付けたって、世間一般が通常なら尊敬すべきお巡りさんから始まって市長さん、知事さん、代議士さん、大臣様、そして最後には総理大臣さまに至るまで、人に大迷惑をかけているのにお詫びのご挨拶もできない。そんな姿が毎日のように新聞、テレビで報道されている。それを毎日見させられている子どもが先生の言うこと、教えることを信じてくれると思う方が阿呆だ。
【サカスト】を通じて私は最初からこの総理大臣には反対していた。理由の一つはその余りにも右寄りな姿勢にあったのだが、次第にこの男、本当にバカじゃないのかと思えるようになって来た。お祖父さんの岸信介氏は、旧東京帝国大学で銀時計を貰ったほどの大秀才だった。頭は良かったが人間的にはかなり評判の悪い男でもあった。最後は総理大臣として日米安保改訂に臨み、国民の大反対があった中で「声なき声は私を支持している」とか言って悠然としては見せたものの、安保反対の大合唱の中、ついにアメリカ大統領の訪日も断念せざるを得ず、しぶしぶ総理の座を降りなければならなくなった。
彼は戦前、帝大を出てから当時の商工省(今で言えば経産省)に入省、昭和10年代には国家社会主義を掲げる陸軍省寄りの新官僚として名を挙げ、局長時代にはアメリカの大自動車産業を日本に上陸させず国産自動車育成に力を注いだ。今だからこそそれが良かったと言えるのかもしれないが、当時の日本の自動車産業はとてもアメリカに歯が立つわけがない。さすがの陸軍ですら、戦場の兵隊から国産のトラックは故障ばかりで役に立たないからなんとかしてアメリカ製のトラックを送ってくれと言われていた時代の話だ。
そんな彼だから次官になると民間産業をこぞって国家統制の下におこうとして、当時民間出身の小林一三商工大臣と大げんかをして辞任に追い込まれたが、太平洋戦争開始の頃には東条内閣の大臣に返り咲き、戦後は戦争犯罪人の一人にもされたが結局は無罪となって総理大臣にまで上り詰めたという経歴の持ち主だ。首相在任中に憲法9条廃棄を堂々と唱えていたのだからやはり国家主義者の匂いが染み付いている。
安倍総理は就任直後からこのお祖父さんの思いをわれこそ受け継がんとの心が踊っていたのだろうが、それにしては余りにも人間的に中身が薄っぺらだった。初めは数を頼んでの上々の滑り出しではあったが、あっと言う間に底が割れて現在の有り様だ。願わくは、これ以上無責任体質で傷つけないうちにお引き取りを頂ければ、まだ美しい国日本は回復できるだろうと思っているのだが。
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