ご都合主義 ウチとソト

平和国家への道

榊原烋一 【サカスト】
2007年5月17日(木)寄稿

5月10日退陣を表明したブレア英首相43歳という若さでイギリス首相となったブレア氏も長い首相の座から去らなければならなくなった。サッチャー女史の進めた改革路線を政党を異にしながら押し進め、現在の繁栄する英国の経済を樹立したことはやはり政党政治の本家なればこそと羨むばかりだ。

国内的にこれだけ功績のあったブレア政権だったのにその座を追われた最大の原因は何だったのか、それはアメリカに追随したイラク戦争こそが国民の非難の的になったからなのだ。戦争の当事者であるアメリカでさえその終結に苦慮しているイラク戦争、そしてそのためにレイムダック状態になってしまったブッシュ政権、これに肩入れをしたために国民の信頼を失ってしまったブレア政権。

こんな実態を現実の姿として見せつけられながら、わが日本の総理大臣はイラク特別措置法の延長を提案している。そして憲法を改訂するための手続き法である国民投票法も与党多数で通過させてしまった。

案の定、隣国である中国は外務省報道局長が記者会見の席で次のように述べている。「アジアの隣国は平和憲法に関する日本政治の動向に極めて関心を持つ。戦後の日本国民が選んだ平和発展の道は正しく、日本がこの方向を堅持するよう希望する」また韓国政府も今のところは事態を静観しているが既にメディアでは「周辺国の新しい脅威になるのは明白だ」と憂慮の報道をしている。

【サカスト】筆者は何も中国や韓国の言い分だけを聞けと言うのではなく、自主的に平和国家の道を目指すべきだと考えているのだ。戦後政治の決算をすると大見得を切っている安倍政権は、口を開けばアメリカの占領下で押し付けられた憲法を改訂する、またアメリカによって作られた戦後の教育制度を根本的に見直すとして、早々に教育基本法の改訂を押し切ってしまった。そんなにアメリカが作ったものがいやなものならば、この際アメリカとの同盟もやめてしまったらいいのにと思ってしまう。

アメリカに押し付けられたとはいえ、当時の日本はこれを最善の道として選んだことはまちがいがない。また現行憲法制定のときからアメリカ自身、あるいは戦勝国で組織した極東委員会ですら、日本の選んだ憲法9条はいずれ自衛のための軍隊を持つことを可能にしているとして、もっと徹底した非軍事国家にすべきだとの論さえあったのだ。

しかし敗戦後すぐに朝鮮戦争が起きると国内治安を日本自身が守るべきとのアメリカの思惑によって警察予備隊が作られ、やがて自衛隊として立派な戦力へと育って来た。しかし集団的自衛権の有無をめぐっての論議の中で、現行憲法が存する限りは海外での戦闘には巻き込まれない世にも珍しい軍隊を持つ国として大多数の国からも承認されて来たし、日本自身はこれによって戦後60年の繁栄を享受することができたのだ。

それなのに今日本人はうっかりすると戦争の出来る自衛隊を目指して動こうとしている。ブッシュはイラク戦争の泥沼にはまって動きがとれないから、日本が戦争の出来る国になろうとしていることに内心では快く思ってはいないのに音無しの構えを保っている。あまつさえ拉致問題で強硬な態度をとる日本をよそに、北朝鮮に対しては微笑外交に転じようとしている。

更に最近の報道によると、日本の要求するテロ指定国家継続の願いを、アメリカ国務省筋の解釈では北朝鮮をテロ国家と呼んだのは、北朝鮮に日本赤軍の残党がいるからだと言い出した。あたかも日本のせいでテロ国家になったのだから、日本も北朝鮮の拉致問題でいつまでも騒ぐのではない、と迷惑がっている姿さえ見え出した。

結論的に言うならばそれぞれの国は結局自分の論理で動いているだけなのだから、本当に日本が被害を被るような事態が起きた場合になってみたら、これまでこんなにアメリカの言うことを大人しく聞いていたのにこの仕打ちはなんだ、と悔やむような結果にならないとも限らない危うささえ感じてしまう。

だから軍事力を、ではなく、だから絶対に戦争をしない国という地位を保つことの方がより重要になってくると考えるべきではないか。こちらがなにも手を出さないということを知ってあえて戦争を仕掛けてくる国があったとすれば、それこそ国際的に袋だたきに会うというのが二つの大戦争をくぐりぬけてきた人類の知恵と信じるしかない。

現に北欧の国々は決して強大な軍事力を持っている訳でもないのに世界の中で重要な地位を占めている。これはすべて彼等の持つ外交の力によるものだと言えよう。日本が軍事大国の夢をもつことは決して国際的にも許される手段ではないはずだ。世界の殆どの国が、日本はなろうとすれば再び軍事大国になってしまう力を持っている国と考えていればこそ現行憲法の歯止めがある国としてのアピールの仕方を考えるべきだろう。



Copyright (C) Toru Kishida 2007 All Rights Reserved.