法律は守れるものになるのか ご都合主義

バイオエタノール

榊原烋一 【サカスト】
2007年4月28日(土)寄稿
4月29日アップ

バイオエタノール混入のガソリンがいよいよ首都圏で売り出された。混入率はたったの3%だし値段も据え置きだからべつに大騒ぎすることはないって話だが。これが食糧関係の話となると環境問題以上の重要な問題になって来るはず。

前にも言ったが環境問題で「地球にやさしい」とか「地球を守ろう」など一見するととてもよいことでもしているような気になるが、結局のところは人間の滅亡を防ごうと言っているだけのお話しに過ぎない。地球なんて千万年の単位で暖かくなったり冷たくなったりしているので、そのために地球上の生物が死んだり生き残ったりしてるだけで地球自体には何の変わりもない。

だから環境問題と言うことはまったく人間のご都合のためだけの問題ということになろう。となれば温暖化防止、CO2削減だって人間のため、となるとバイオエタノールの流行は裏返してみれば人間の食糧を燃料にするだけの話しになる。

バイオエタノールの原料は主として現在ではさとうきび、とうもろこし、それと小麦だ。今回わざわざ日本がフランスから輸入したそれは小麦原料のものらしいが、これらのいずれもが人間にとっての主要な食物でもあるところがひっかかる。

日本人は流行に弱いから環境問題が騒がれるとすぐにリサイクル運動なども普及してしまうが、物事には必ず裏と表があるはずで、今回のバイオエタノール問題は日本人にとっては重大な問題を含んでいることにもっと留意しなければなるまい。

これらの原料はエタノールに加工する以前にそのままの原料として輸入しなければならないのが日本の今置かれている姿なのだ。ガソリンにまぜて大気ガス汚染を削減したり、植物のCO2吸収が温暖化を防ぐなんてうれしいことばかりのようだが、実態はと言えば小麦はそのまま小麦粉として日本人の食卓に使われているし、砂糖だって輸入に頼らなければ到底国内の需要を満たすことはできない。とうもろこしは日本人にとっての主食ではないがこれは食肉動物の飼育にとっての主要飼料となるこれも輸入品だ。

結局日本人の場合は環境問題ばかりに気を取られているうちに、自分たちの食べ物がなくなってしまう運命にあることをすっかり忘れてしまっているのだ。一つには現在の日本人が餓えた経験がないからとも言えよう。ちょうどこれはフランス革命の原因になったとさえ例えられたマリー・アントアネットの台詞じゃないけれど「パンが食べられないの?それならケーキを食べればいいじゃない」と同じくらいの無邪気さだ。

という日本人全体にある食糧問題への危機感のなさ、それに加えてどうも今回のバイオエタノール輸入の裏には経済界の思惑が潜んでいるように思えてならない。環境問題は世界的に広がって来た。まず、欧州連合は経済界が悲鳴をあげるような厳しい環境基準を打ち出した。日本は輸出で食っている国だから、この規準を突破しなければならないと同時に国内でも二酸化炭素排出量を規準まで下げなければならない。

ところが現在の技術ではこの規準がなかなかクリアできない、これは産業界だけの問題ではなく、家庭が排出する分も大きいらしいのだが、取りあえずはこの規準をクリアするためには、排出権を金で買ってでもクリアしなければならなくなる。たとえば中国の火力発電の設備が古くて環境破壊に大きな影響があれば、そこへ日本の技術を注入して浮いた排出物の権利を日本の排出する量からマイナスする、こんなことでもしなければ現在の技術ではなかなか規準が守れないのだ。

そこで取りあえずはガソリンにバイオエタノールを少しまぜる、様子をうかがって国民がそれを自然と受け入れるようになったらば混入率を上げる、ついでに値段も少しずつ引き上げる、こんな魂胆が政府にも経済界にも潜んでいるのではないだろうか。そんなことをやって日本だって環境問題に懸命に取り組んでいますよというジェスチュアを見せようとしているのではないのか。

そんなことよりも日本はまず食糧問題をどうしようとしているのか、その答えも出ないうちにバイオだバイオだと騒ぎ過ぎては非常に危険な感じがする。なにしろ戦中戦後の食糧難の時代をやっとこ生き抜いてきた経験者はその方が先に浮かんでしまうのだ。

日本の農業問題、漁業問題を中心とする食糧問題の解決こそ早急に手を打たなければこれからの日本はどうなると思っているのだろう。いずれ貿易や関税の不平等からWTOが日本を槍玉に挙げてくることも目に見えている。それなのに既得権を手放すまいとする農水族をはじめとする役人たちよ、今、農産物関税を撤廃させられたら日本の農業は壊滅してしまうこと受けあいだ。保護政策もいい加減に見直さないと経済力だけでは片付かない問題がすぐ目の前にあるというのに、なんでバイオエタノールなのだ。

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