「学校の常識は社会の非常識」? 安倍内閣不信 その2

安倍内閣は信じられない

榊原烋一 【サカスト】
2006年11月28日(火)寄稿

安倍晋三氏が小泉純一郎氏の後を追って内閣総理大臣、ならびに自由民主党総裁になったのは僅か2か月前だ。総理就任直後の日本経済新聞による世論調査によれば、安倍氏支持は71%という高率だった。国民が彼を支持した理由の最大のものは、小泉改革の純粋な継承者であると考えたことにある。

今、かつての小泉改革の目玉でもあった郵政民営化に反対して、言うならば小泉氏に引導を渡された改革反対派議員の復党がなされた。この茶番劇は安倍首相の指導性に対して国民に大きな疑義をもたせ、支持率の急激な低下をもたらせている。

小泉前首相の政治手法には必ずしも全面的に賛成をするものではないが、少なくとも政、官、業の癒着構造のどこかに風穴を空けたことは間違いなかったし、国民の目の届かぬ永田町の薄暗がりでこそこそとうごめいていたこれまでの国民不在の政治屋の一面を白日のもとにさらした功績は大きかったことを認めない訳にはいかない。

その後継者であり、小泉氏も自分の意志を継ぐ者として推されたからこそ、国民も安倍首相の誕生を支持したはずだ。【サカスト】筆者個人としては、総理総裁就任以前の安倍氏の言動から、かれの右寄りの傾向にはかなりの危惧を持っていたが、首相着任以後これまでの間は、さすがに自分の置かれた立ち場を自覚してか、あからさまな右翼的言動は見せなかった。

しかし今回の復党劇を見ている限りでは、彼は小泉前首相とは大違い、まさしく自民党守旧派の言うなりの指導性ゼロの状態でしかない。もちろん復党組が自分一人では政党助成金の分け前にも預からず、国会での発言権もない状態からの脱出を図る気持も分るし、何よりも自民党が来たる参院選で、地方支部の応援を得ようと復党賛成に動いたことも理解できるが、つまり小泉以前の自民党の姿へ後退させる方向へと首相自身が動き始めている姿が浮かんで来た。この姿こそ安倍首相の本質が見えて来たと言うべきなのだ。

【サカスト】が前から叫んでいた教育基本法改正反対についても、本日付け日経新聞の世論調査で「教育基本法改正案を今国会成立にこだわるべきでない」とする意見が55%に達している。【サカスト】では教育基本法などは国民の間にそれほどの関心があるはずはなく、そこを見越して安倍首相が改正を急いだとの見解をもっていたのだが、どっこい、良識ある国民はやはり見ているのだと意を強くする。

教育基本法それ自体は改正しようがしまいが文字だけ見ていればそれほどの違いは見当たらない。そこが基本法の持つ恐ろしさで、これが改正されればその下位にあるそれこそ数百に及ぶ法規ならびに政令、規則などが一斉に改悪されて行くのだ。たとえば学校教育法、学校保健法、私立学校法などはもちろん、教育公務員特例法、地方公務員法など関係する諸々の法規、はては現在問題になっている学習指導要領まですべてが基本法に隠された意図を拡張させつつ改訂されて行くのだ。

だから、学校の通知表に愛国心の評価がなされるようになることだってあながち笑い話とも言えない。つまり正面切って靖国に参拝してみせなくっても、陰に回って国民の思想信条をあやつることが出来るのだ。もちろん、その目的の中に選挙戦における宿敵日教組退治の意図があることも当然の話だ。

もう一つきな臭い問題は防衛庁の省への昇格問題、これも現在表面切ってマスコミが取り上げてはこないが、少しずつ国民の合意を得るべく小出しに匂わせていることも注意しなくてはならない。

イラン派遣がまったく幸運としか言い様がないくらい無事に終わったことから、国民の自衛隊に対する慰労の念はかなり高まっている、あれだけ危険な仕事を成し遂げたのだから、せめて防衛庁でなく国防省にしてやれば隊員の士気もぐっと高まるはず、と考える国民だって少なくないはずだ。この問題ももう少し冷静になって考えてみる必要があるはずだ。

最も重大な問題は、日本人は慣れっこになって気付かなくなってしまっているが、自衛隊の存在そのものが現行憲法の趣旨から見て実にあいまいな存在であることだ。日本を取り巻く世界の情勢は大きく変わって行くし、その中にあって自衛隊の存在そのものも必要悪として、あって然るべき存在へと変ぼうしている。しかし、現行憲法の解釈からはどうしても矛盾を感ぜざるを得ないというのが論理的な立ち場だろう。

現行憲法下で、いわゆる解釈改憲的なあいまいな存在としての自衛隊ではあっても、現行法規のもとでは防衛庁はあくまでも内閣府の一外局であって、言うならば総務省の外局である消防庁と同格と言うこととなる。私はそれでよいと思うので、国民の生命を守るという立ち場から見れば、消防署員も警察官も自衛隊員もどちらが貴い仕事かと比較するものではないだろう。しかも防衛庁なればこそその主務大臣はあくまでも内閣総理大臣であって決して自衛官ではないという文民統制の大原則に基づく極めて重要な意義を持つものなのだ。

今、安倍内閣が行おうとしている方策では、本当にこれが小泉改革をひき継ぐ新しい日本の保守党の姿を作って行くとは到底信じる訳にいかない。かといって片やぶっ壊し専門、どこへ行ってもへそを曲げて飛び出す一方の政治屋、小沢一郎率いる民主党も安心して見ていられる政党とも言えない、となれば民主主義の主権者たる国民は何を頼りに歩いて行けばよいのやら。

安倍内閣不信 その2

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