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榊原烋一 【サカスト】 |
北朝鮮問題はマスメディアに格好の種をまいてくれた。北朝鮮の拉致問題を含むこれまでのあり方、そして今度のミサイルに始まって核実験にいたる一連の行動はついに国際問題の重要課題の一つになって来た。【サカスト】では現在の北朝鮮のありかたは、太平洋戦争へ突入していった往事の日本政府のありかたと酷似していることを警告したはずだ。金将軍は先軍政治を標榜していたが、いまや軍隊の言うことを聞かなければ自分の命さえ危うくなる危機にさらされている感がある。
日本が明らかに軍事国家になったそもそもの始まりと考えるのは陸軍の起こしたクーデターとも言える2.26事件からだったのは疑えない事実だ。そのあと政治家は軍人たちの武力に逆らうことが出来ず、少しずつ軍部の言いなりになって、最後は世界中を敵に回しての軍事行動にまでなったことがその後の日本の壊滅的な敗戦につながる。
幸いなことに日本には天皇制という伝統的な歴史でつながる文化があった。武士が政治の実権を持った鎌倉幕府以来、平時にはあってなきが如き天皇家が土壇場になってその文化的な威力を発揮した。太平洋戦争の終結に際しての御前会儀では賛否同数となり最後の1票を投じた昭和天皇の判断で無条件降伏の受諾が決定がされたのだ。さすがの日本陸軍も、徹底抗戦の姿勢を180度転換せざるを得なかったのだ。北朝鮮の金氏にはそんな力があるはずはない。
あの戦争をひき起こすまでには、伏線としては1931年9月夜,満洲に駐留していた関東軍が参謀石原莞爾中佐の謀略によって柳条湖で満洲鉄道の線路を爆破し、これを中国人のやったことと偽って攻撃をはじめた事件があった。これがいわゆる満州事変である。時の政府はあくまでも戦争の不拡大方針をとったが、出先の関東軍がこの命令に従わず、勝手に戦線を拡大して現在の中国東北部を占領し、そこに傀儡国家満洲国を建国してしまう。ここに至って政府も満洲国を承認せざるを得なくなる。
当時の中国は蒋介石率いる国民党政府の治下にあったが、東北部はそれぞれ軍閥が跋扈して中央政府の権威が届きにくかったこともあり、半ば黙認の形であったこともこの動きに拍車をかけてしまった。しかし、日本の東北アジアへの勢力拡大を恐れた欧米は事変の原因となった柳条湖の鉄道爆破に対する調査団を派遣し、日本軍の撤兵を要求したが日本はこれを拒否、ついに1933年、日本を非難する国際連盟から脱退して孤立の道を歩むことになる。
ここで一番気にかかるのは当時の日本のマスメディアの態度である。当時だって既にラジオ放送はあったし、一般国民は海外からの報道を入手できないように短波受信機の所持を固く禁じられてはいたが、報道関係者は一応外国からのニュースを入手できていた。にもかかわらずラジオも新聞も日本の攻勢のみを賛美する報道一色に染まって、国民に世界の反応が知らされることがなかった。
現代の北朝鮮が行っていることが余りにも当時の日本の行動に似ていることに大きな危惧を感じさせられる。先軍政治と称して軍事をすべてに優先する。外国の世論は全く報道せず国民には政府の行うことがすべて正義であると信じさせ、場合によっては国民が一丸となって戦闘に参加するように方向付ける。この姿は当時を知る私にとって本当に気の毒な姿としか言いようがない。
気の毒と言うのはもちろん北朝鮮国民のおかれた立ち場についてである。当時の日本国民も軍部とマスコミの言葉を信じて日本の正義を信じ、結果として最悪の道へと突き進んで行ってしまったのだから。北朝鮮では既に国民の日常生活にはかなりの不自由が生じているはずだ。このまま国際的な制裁が始まればこの冬を乗り切ることすらむずかしくなるのではないか。現在でも北朝鮮政府の姿勢には反対だが北朝鮮国民の窮乏は助けようとして様々な民間支援団体が活動していた。しかし、これらの支援も次第に困難な状況になっているようだ。
今後、北朝鮮政府がどのような行動に出るかについては様々な論評がある、しかし万一にもせよせっぱ詰って日本がかつて冒した真珠湾攻撃のような暴発をすれば、北朝鮮は最終的に地球から姿を消してしまう結果となることは想像にかたくない。
最近の日本でも、戦争を知らない世代は、日本のあの頃の行動を自衛のためのやむを得ない行動だと解釈する人間が増加して来た。しかし、同盟を組んだドイツ、イタリアを除いた世界の殆どの国が日本に対して宣戦を布告したあの状態はやはり日本の側に政治的にも戦略的にも誤りがあったことと素直に認めるべきであろう。
戦争には勝利者側の正義が讃えられ敗者は自己を語れないという厳しい現実がある。とは言っても歴史を片側からだけ眺めるのは極めて危険だ。自国の政治が誤っていた部分は感情論にとらわれず謙虚に認める姿勢こそ今の日本にも必要ではないか。最近フランスとドイツとが共同して歴史の教科書を編纂し、その第1集が完成したことが報じられている。日本で、アジアで、このような作業が行なわれるのはいつのことになるのだろう。日本と中国、韓国の3国ではこんなことを考えるだけでも難しいのだろうか。
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