日本の食糧政策 まだある靖国問題

プール事故で考える

榊原烋一 【サカスト】
2006年8月3日(木)寄稿

埼玉県ふじみ野市(最近の地名の付け方のデタラメさがまさに日本人の文化認識の程度の低さや事なかれ主義を露呈しているが、これは脇道)で起こった気の毒な事件、小学生のプール事故死について考える。

私は最後の仕事が学校の校長であったから、管理責任者として子供の事故については特に細かく気を使って来た。なにも自分の責任を回避しようというためではなく、親の下から離れた子供の安全を守ることは学校の当然の責任であるからだ。お勉強がいくらできても学校にいる間に事故に会ってしまえば、成績などは何の意味ももたなくなる。つまり人間の命を預かる仕事とはまず第一にそれを損なうであろうすべての出来事を可能な限り予測する責任があると思っていたからだ。

ただしこのことと管理主義になることとは全く意味が違う。管理者自身がその姿勢を示すことによって、学校であればすべての教師、そして事務員から用務員に至るまでのすべての教職員に子供の生命を守るがことが何よりも大切であるという意識を身に付けて欲しかったからだ。

今回のプール事故について、現在なんの責任もない立ち場になってつくずく有り難いと思う。学校の校長だったときにはプール指導が始まってからの期間は本当に気の休まる暇がない思いをさせられた。夏休みになると毎朝誰よりも先に学校へ出勤し、プールの塩素の投入状況、プールサイドのコンクリートの状態そして排水溝の周囲を見回った。塩素の濃度によっては子供の目を傷める事例も報告されていたし、プールサイドでは子供がはだしで歩くことが常識だから怪我をしないような注意を払うこと、そして排水溝の柵のはずれはそれまでにいくたびとなく重大な事故の報告が全国からあったからだ。

一つの学校の管理者と不特定多数の住民の命を預かる管理者とでは責任の範囲が遥かに違うことは当然である。もちろん行政の立ち場ではそれぞれの部署が分担して責任を負っているから、すべてに首長が目を光らせている訳には行くまい。しかし首長の意識のあり方はそれぞれの行政の担当者に必ず伝わるはずである。

住民の生命に直接かかわる部署として、とりわけ小さな命にかかわる部署はもっと生命の尊重に意をそそぐべきである。新聞紙上をにぎわす事故にはあまりにも当事者の意識の低さを証明するものが多すぎる。公園の遊具による事故もたびたび報じられ、その際だけは各自治体が大騒ぎして点検するが1年もすれば同じ事故が違う自治体で起こってくる。事故の一覧や点検箇所、特に注意すべき事故防止策などは必ず所管官庁からその都度通達の形で示されているはずなのに同様の事故が繰り返されるのはなぜだろう。

今回の事故も市営の流れるプールで起きている。所管はどうやら市の教育委員会にあるようだ。学校でもプール事故で一番こわいのが排水溝の柵の不備による吸い込まれ事故だ。水圧の強さは予想以上のものがあって、プールの排水時に排水溝の柵が外れていれば大人だって脚を吸い込まれて脱出不可能になる。流れるプールの場合は水を循環させているわけだから今度のように吸水溝の柵が外れていれば子供がそこから吸い込まれることは当然予想がつくはずだ。

直接の責任はプールの管理を請け負った会社にあるだろう。報道によればこの会社のいい加減さも相当なもののようだ。仕事を下請けに丸投げするわ、監視のアルバイトは救急法も知らないわのていたらく。しかしこんなことは役人の世界の常識かもしれない。つまり前任者が決めた管理会社だから予算の範囲でその会社を漫然と継続して使い続ける。しかも業務監査はいっさい行わない、つまり全くのなれ合いそのものとしか言えない状況の中から痛ましい事故は起こってくる。

もうひとつ余り報道されてはいないがここには製造物責任の問題があるはずだ、流れるプールというのは特殊な構造だからこれを手掛ける業者も限られているはず。となればこの仕掛けを作った業者はどんな場合に人命事故が起きるかを当事者として熟知しているはずだ。したがって製造を引き受けた以上はその危険を徹底して行政の担当者に指導しておく責任があろう。

親に取ってはかけがえのない小さな命がこのような無責任な人間の集積のために奪われてしまう、いずれ最後は賠償によって結着が付けられてしまうのだろうが、いつも言うように管理会社はその支払いでうっかりすれば倒産の憂き目にあうかもしれない、しかし行政側が賠償するのは市民の税金で支払うのだから市長は遺族の前で頭を下げればそれでおしまいだ。だから【サカスト】でいつも主張するように重大な過失による損害の賠償は当事者個人に負わせるようにしなければ役人の無責任体制は未来永劫変わるはずはない。

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