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榊原烋一 【サカスト】 |
北朝鮮のミサイル発射についての問題は一応の結着を見た。日本の外交当局はわが国の決然たる姿勢が国際間の一致した見解を生じたなどおおいに意気高らかな様子だが、実態はそうでもないようだ。アメリカはイラン問題で頭が痛い、そのうえイスラエルが強硬姿勢に出る、イラクも一向に言うことを聞かない、で外交は手詰まり状態。
ロシアも現在は資源大国の立ち場を利用してアメリカ一極支配体制になんとか一矢報いようとしている最中だからここでごたごたは起こしたくはない。中国はと言えばなんの挨拶もなく北朝鮮がミサイルの発射を実行してしまって立ち場がなくなる。
韓国の現政権ははじめっから北朝鮮寄りの姿勢を明確にしているからこれまた本気で制裁に乗って来るはずはないに決まっている。とにかくこの際は六カ国協議の議長国中国の顔を立てるべく時間稼ぎをやらせ、その間に各国ともに駆け引きを行った結果があの共同声明を導いただけだ。
今回の日本の姿勢で褒められることと言えば、ミサイル発射に対してまことに敏感で迅速な対応をしたこと、そして強硬な姿勢を取り続けたことだったろう。ただそれだから共同声明が一致した訳ではなく各国のそれぞれの思惑があの程度で一致しただけの話で、日本外交の勝利などと騒げる代物ではない。
今回も北朝鮮に対しての小泉さんの姿勢には何か疑問が残る。彼の普段のしゃべりかたはそれこそワンフレーズポリティックで歯切れがいいのに、北朝鮮問題になるといつでもいささか歯切れが悪い。現職のあいだに2回もわざわざ平壌を訪問すること自体外交音痴の首相としては珍しいのに。これはきっと何か国民には明かせない密約でもあったのではとの疑惑もしだいに出て来ている。
それにつけても北朝鮮の現在の姿は太平洋戦争開戦前の日本の状況と酷似していることには驚かさせられる。
まずどこへ行っても将軍様の肖像が飾ってある、戦前の日本でも昭和天皇と皇后の写真が飾ってある家庭が地方では結構多かった。もっともあれは新聞の付録で配られたからだという意見も我々仲間の中で語られているが。そして将軍様の功績を讃える時、あるいはミサイル発射に成功したときのテレビアナウンサーの高潮した口調などは、日中戦争時代の日本軍の武勲を讃えるラジオやニュース映画の口調とこれまたそっくりだ。
最近昭和史が注目されて来たのは喜ばしいことで、日本がなぜあの無謀な戦争に突入しなければならなかったかについての貴重な資料が各所から発見され、その真実もしだいに客観的に明らかにされつつある。これは極めて大切なことで、歴史をできるだけ正確に伝えることによってのみ、再びその愚かな道を選ばない見識が国民の中に醸成されるからだ。
昨日も日経新聞のスクープで昭和天皇がA級戦犯の靖国合祀に不快の念を持たれたとのメモが発見され、それ以後天皇の靖国参拝は中止になったことが報じられているが、これも【サカスト】では昨年から述べていることで目新しいものではないが事実としての証言が出て来ることは望ましい。
日中戦争当時の首相だった近衛さんが戦後アメリカ軍の訊問に答えた資料も発見されて間もなく発刊されるとのことだが、この中でも日本の政治の中枢が軍部の圧力によって機能しなくなって行く状況が正確に語られている模様だ。
これらのことは極めて喜ぶべき現象なのだが、その当時の日本国民がいかにして戦争礼讃への道を辿って行ったのかという心理状態は、当時を生きていた人間の記憶に頼るしかない。そこで役に立つのが現在の北朝鮮の姿だと思うのだ。ミサイル問題の際、国連安全保障理事会が全会一致で北朝鮮非難の決議を行った、こういう問題で安保理が全会一致するということは極めて珍しい、すなわち今回の北朝鮮の行為はそれだけ国際的な非難を浴びるに値する行為だったはずだ。
ところがその折の北朝鮮国連大使の素早い反応は、決議を受けかねるとの抗議表明とともに退席することだった。これなどは満州事変を非難された当時の日本の代表松岡洋右大使が国際連盟を脱退した時の様子とそっくりだ。政治形態はとにかく民主主義だったけれども当時は自国に都合の悪いニュースは国民には一切知らされていなかったから、日本ではこの姿が英雄扱いでニュース映画で流され、大部分の国民はそれを見て喝采する心理状態になっていた。
北朝鮮の場合はこれに加えて独裁国家であり軍事国家でもあるから、国民に与えられる報道は更に歪んだものとなっているだろうが、戦争を知らない人間がもはや大多数になってしまった日本では、現代の北朝鮮の姿を怒ったり嘲ったりするのでなく、この道はかつて日本も歩んだ道だったとして自戒の眼で眺める必要があるはずだ。
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