マスコミは信用するな、利用せよ 防犯カメラの皮肉

くたばれ官僚

榊原烋一 【サカスト】
2006年3月25日(土)寄稿
26日アップ

経済産業省の打ち出した「家電用品安全法」の適用が今年4月1日に実施されるということについて前の【サカスト】で文句を言った。

マスコミでこれが報じられると、中古家電品販売業者よりも音楽用品の販売業者から、そして楽器の使用者側から猛反対が起きた、これも予想通りで、電子楽器やオーディオ製品の中にはいわゆるビンテージものと称する中古品があり、特殊な高い需要があるからだ。

これらがいっせいに販売できなくなる、言い換えるならば商品価値が一挙にゼロになるということだから著名な作曲家坂本龍一氏等による反対署名運動が起きた。さてこれはこれでまたまたマスコミの望むところとなった。前にも書いたように、法律の猶予期間が間もなく切れるという間際までマスコミが動いた形跡はなかった。つまりマスコミ各社もこの法律の実施に付いてはもともとさしたるに関心がなかったと思える。

ここで誰かが声を挙げた。一説によると赤旗が一番先という説もあるそうだが、中古家電製品の取り扱い大手業者の中には既に法律実施を見越して検査器具を準備、PSEマークをつける用意も出来ていたらしい。ところが世間に顔の売れているミュージッシャンによる反対運動はマスコミによって大きく取り上げられてしまう。

ここで経産省の役人は、我々の広報活動が不足だったと思ったか、もっと言うならば中古楽器にまで影響が及ぶことには想像が到らなかったというのが正直なところだろうが、よせばいいのに慌ててビンテージもののオーディオ関連には適用しないと言い出した。

こんな言い逃れをするから更に反対運動者から追い討ちをかけられる。「ビンテージものかどうかの判断を官僚がするのか」これでまた困った役人は次に「ビンテージものとは製作を中止したもの」との返答を出す。

経産省にだってロック大好き人間やオーディオマニアだって大勢いるはずだ。省内で聞いてみなさい、こんなバカな論理が通用するかどうかを。売れなくって製作を中止したものはいくらだってある、そんなものは誰も貴重品扱いするはずはない、趣味や芸術の分野ではその人がこれでなけりゃと思うものだからビンテージになるのであって、必要のない人にとってはタダだと言われたって欲しくないものなのだ。

さて、ついに役人は得意のへりくつをあみ出した、つまり中古品を販売するのでなくレンタルするのならばPSEマークは必要ない、そして検査が終わってマークをつける状態になったそのときに販売したことにする、しかもその期限は当分定めないというもの。

中古品業者は経産省立ち会いの記者会見の席で、われわれの主張が認められた、と明言する有り様だ。ここで不思議なことがある、つまりこの法律は何のために出来たのかということだ。極めて素直な解釈をする国民ならだれでも、いい加減で危険な電気製品を市中に出回らせないための法律のはずと考えるに決まっている。ところがレンタルならば危険なものでもかまわないのか、はたまた中古と称して粗悪な電気製品を安売りしたらどうなるのか。

以前からたびたび言うことだが、役人は予算が付かなければ自分のやる仕事はない、だから頭をしぼって必要そうなことを考え出して立法化する。ところが悪知恵のある人間も世の中にはごまんといて法律の抜け穴探しをする、そして行政はその穴塞ぎのために議会の承認の必要のない省令、政令でこれまた自分に都合の良い解釈行政を行う。かくして善良なる国民諸君は右を向いても規則、左を向いても規則という息苦しい世の中に放りだされるのだ。

しかも今回の事件のようなケースは極めて珍しく、役人が一度法制化したものは何があっても、どんな理屈を付けても遂行しようとするのが普通の姿だ。これを官僚の無謬性など言っているが、要するに決めたことは直接自分たちの利害関係に大きくかかわってくること、もう一つそれを決めた先輩たちの考えを否定することは決してしない、という不文律が官庁には厳然として存在しているのだ。

今回の事件はその意味で官僚が墓穴を掘った形にも見えるが、さて次にどんな手をうってくるか、それが見物だ。

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