乏しきを憂えず、等しからざるを憂う

榊原烋一 【サカスト】
2005年6月25日(土)寄稿26日アップ

6月21日公表された政府税制調査会の報告を見ても給与所得者はまだ黙っているのだろうか。もちろんこれは報告書の段階だから、すぐさま実施の段階に入る訳ではない。しかし首相直属の諮問機関が出した報告書であるだけに、政府の考え方が反映されていることは当然だ。

会長の石弘光氏はテレビで日本の勤労者の8割を占めるサラリーマンの増税を考えない訳にはいかないでしょ、と豪語していた。本当に8割もいるのかは不明だが、要は取りやすい所から取れ、と言っているだけなのだ。

以前にも書いたが、役所が作るこの手の審議会とは体のいい役所の代弁者でしかない、一応はその道の権威を集めたように装いながら、その実、御用学者と役人とがぐるになってストーリーに沿って会議を行い最終的には役人の考える通りの報告書を作り上げるだけの隠れみの的存在なのだ。

日本の国家財政に占める借金の額はまさに世界最大級のものであることは以前【岸コラ】でも触れていたことがある。この借金はいつか国民が返済しなければならない筋のものだから、出来るだけすみやかに解決策を作り上げなければならない。

この点に一番気を使っているのは当然のことだが財務省の役人達だ。したがって政府税制調査会の審議という場面でも財務省の作るストーリーが中心となっていることはもちろんであろう。

報告書の形でまずアドバルーンを揚げてみる。それに対して国民世論がどう反応するか、これをマスコミの論調で判断する、思わしい反応が出れば即座に立法化を図る、期待に反して総反撃を食えば、そんな報告ありましたか、ってな顔して新作戦に転換する、これが中央官庁の常套手段だ。

国の借金を返すのに、現在の国民が相応の負担をすることはやむを得ないかもしれない、しかし表題にも書いたように、私は乏しいことを憂いとするのでなく、等しからざるを憂いとするだけなのだ。憲法30条に書かれているとおり、国民は、法律の定める所により、納税の義務を負っているのだから、増税の法律が議決されれば税金を払わないと言うつもりはない。しかし同時に憲法14条により、国民は法の下に平等でなければならないのだ。

かって、給与所得者、自営業者、農漁業従事者の収入の捕捉率をクロヨンと呼んだ、難工事で有名になった黒四ダムに名を借りた名文句の一つ、つまりサラリーマンはその所得の90%を税務署に把握されているのに対し、自営業者は約60%、農漁業従事者に至ってはさまざまな控除があるためにその40%しか捕捉されていないという事実に対して言われた言葉だ。

更にこれより一層真相に迫ったのがトウゴウサンになった。東郷さんに引っ掛けたものだろうがつまり10割、5割、3割と捕捉率に差があると言うもの。

これだけ所得の捕捉率が違っているのだから、当然それを根拠にした税金の徴収率にも差がある、つまり同じ所得があればサラリーマンがもっとも多額の税金を納めなければならない、すなわち徴税が甚だしく公平さから逸脱していたし、それが現在までも続いているのだ。

そんなところへ今回の報告書だ。これも一つのアドバルーンで本当は財務省はこれでサラリーマンを怒らせて、総理が任期中には上げないと粋がっている消費税の増税を目指しているとも考えられない訳でもない。だが消費税もあんまり公平な税でもない、第一に益税があって私たちの税金の一部が商人の懐に入ってしまう。第二に、生活必需品にまで税金をかけるから、金持ちには大した負担ではないが、貧しい人には猛烈な重税になりこれまた公平を欠いてしまうからだ。むしろ戦時中にあった奢侈税、つまり贅沢品に重い税をかけるほうがまだ合理的かもしれない。

このように、税制でもっとも怖れなければならないのは、公平を欠くことなのだ。これを解決するには今のところ、国民総背番号制の実施しかない。私個人はこの方法がベストだと考えるが最近のように個人情報があちこちで洩れている現状では国民の合意の形成は難しそうだ。

そこで少なくとも東京のサラリーマン達よ、最高のチャンスは7月3日の都議会選挙だ。おりあるごとに、候補者にサラリーマン増税の可否、更には歳出の削減に対してどのような見解を持つかを質してみてはどうだろうか。さらに最近次から次へと暴露される役人の税金の無駄遣いについても候補者はどう考えているのか。

都民の代表を選ぶには納税者もそのくらいの努力はしてみたらどうだろうか。

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