岸田主筆のカルロス ゴーン物語はかなりの労作だ。主筆がここまでのめり込むからには何かその生き方に対しての思い入れがあるのかも。それはさておき、コラムに附随している参考文献(これも主筆の人格を余すところなく表している。おおむねの日本人は他人の意見を孫引きしながらあたかも自分の意見であるかのように装う人が多い。コラムの主筆はさすがに著作権の意義を明確に理解している)の中に、カルロスが14歳の頃、仏文学を学んだときの教師の言葉が印象に残ったとしている。その言葉とは「プロは物事をシンプルにし、アマチュアは複雑にする」
この言葉もカルロスの心を捉えたようだ。かれの経営哲学はまことにシンプルだったから、幹部、中間管理職、そして現場従業員までが目標を正確に理解しつつ業務に立ち向かった結果が今日の日産につながる。このことについては文芸春秋8月号にカルロス ゴーン氏自身が「我が日本型経営の真髄を語ろう(この表題は編集部の作品らしく、あまり品位がないが)」との手記を寄せている。教えた先生も偉かったし、それを実践に移した生徒も偉い。私も教師をやっていたから同じような感想を持っている。
いわく「上等な教師は難しいことを易しく教える。中等の教師は難しいことを難しいまま教える。そして下等な教師は(残念ながら教師にはこれが多い)易しいことを難しく教えたがる」私自身内心忸怩たる思いを未だにいだきながら。