八王子のカトリック学校で父母の会のお父さんがたと飲んで電車で帰った。ガラガラの電車でも私は優先席、なぜ?あとから混むのが分かってるし。案の定少しずつ混んで来た。ところが向いの3人席のまん中も一つ空いてる、私の優先席もまん中が一つ空いてる。いきなり飛び込んできた40半ばの一見大学の先生風。座るやいなやPDAを開いた。知らん顔して次の駅を過ぎたころ、わたしはおずおずと彼に声をかけた。

「お忙しそうなところまことに申し訳ありません」

「…?」

「実は昔、心理学をやっていたものでついこんな質問を」

「は…」

「さきほどお乗りになったときまっ先にこの席にお座りになりましたがなにか理由は」

怪訝そう。

「いや、あちこちに空席があったのに、どうしてここへ」

そこでちょっと考えてる。

「いや、あの、あそこの吊り広告に目を引かれて」

「失礼ですが、いつも通勤で?」

「いや、今日はよそへ回ったものですから」

「そうでしょうね、ふつう通勤の方は同じドア、同じ席の方へ行かれますから」

そこでおもむろに私は手帳とペンを出す。

「それではあちこちに空席があったのになぜここを?」

「と言われても…」

「ではここは優先席と意識はされなかったので」

急にそわそわ。

「なるほど、向かいの席の太った女性より痩せた私の隣を無意識に選ばれたので?」

「そ、そんなことは」

「失礼ですが、優先席と御存じだったのでしょうか」

「いや、申し訳ありません」

「別に、ただ心理学の研究でつい」

次の駅でその方は降りてしまいました。いやなじいさんですね。


優先席について