日本政府の「棄民政策」は何時まで続くか

青森明の星短期大学 藤巻啓森先生から

イラクの日本人人質事件について、今になって政府の対応にいぶかる声も多くなってきたようである。「政府の勧告に従わず危険地域にあえて足を踏み入れた本人たちが悪い」とする「自己責任論」に対して海外からの批判も聞かれる。この批判は私から見れば当然のことと思う。

今回の事件に対する政府の対応は最初から疑問点があった。やっと人質が解放されたのに、なんと運賃など一部の費用を負担させるという。しかし、もともと日本政府が自衛隊の派遣さえしなければ、在イラクの日本人は人質になどされなかったであろう。もちろん自衛隊の派遣について、是か否かという問題については、政府の中、そして国民においても意見が分かれるところであった。それを政府はなかば強引に米国に追随する形で武装した自衛隊を派遣した。それが、たとえイラク国民のための水供給などの人道支援が目的とはいっても、米国主導のイラクの占領に加担していることは事実なのである。後に人質となっていた様子の映像が公開されたが、武装グループはわざわざ人質に「演技」までさせていることから、本当に命を奪うつもりであったとは思えない。そのような行為は決して許されるべきではないが、イラクの人々に歓迎されていない米国を支持している政府が人道支援をしている民間人だけを自業自得とか、自己責任うんぬんというのはどこかおかしい。

本来、政府は国民を守ることが義務である。だが、日本政府はそこが欠けている。現在私は『日本における「満洲移民」』について研究しているが、この「満洲移民」という国策は欺瞞の政策であった。当時は日本農村経済の更生という名目で、次男三男を「満州国」(中国東北地方)に送り出し、終戦の直前までに33万人の日本人を移民させた。実は軍事的な視野からみれば、それは防御のためであった。つまり、ソ連の侵攻を防ぐために「人柱」をつくりあげていたのである。そのときから国民を切り捨ててきたのである。結局ソ連の「満州国」侵攻により、政府の「棄民政策」は実現してしまった。終戦時に日本に帰国できなかった人々は大勢いた。このような意図的な「棄民政策」により、いまだに中国残留婦人及び中国残留孤児たちの問題を残し、戦後59年たっても、まだ完全に解決していない。そして、その侵略戦争によって、解決していない問題は、北朝鮮の拉致問題にも絡んでいると思われる。

政府は国民の生命よりも、国益といって、本当は自分たち政治家の利益の方が重要だと思っているようである。4月23日中川経済産業大臣、麻生総務大臣、石破防衛長官が、国民年金の保険料を払うのを忘れていましたと、何ともお粗末であきれる会見を堂々としていた。その少し前に社会保険庁の広報に出ていたタレントの江角氏が同じように未納であったことが分かり、謝罪する会見があったが彼女の方がよっぽど潔い態度であった。いやしくも国の大臣であるものが、何年も保険料を未納で気づかないというのはどういうことであろうか。このように国民に厳しく自分たち政治家には甘い政府が、偉そうに人質となった人たちの言動を批判することは、どうみても納得できないのである。

国民がいなければ国は成り立たない。「国以民為本、民以食為天(国は民を以って本と為す。民は食を以って天と為す)」という簡単な道理が政治家たちには分からないのであろうか。

2004年4月25日投稿