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首都圏地震「4年以内に70%」?!

岸田 徹 【岸コラ】
2012年1月24日(火)

東北地方太平洋沖地震3.11の東日本大震災の影響で、地震活動が活発化し首都圏でマグニチュード(M)7レベルの直下型地震が4年以内に70%の確立で起こる可能性があるとマスコミで報道された。これまでは、30年以内に70%の確立で起きる(政府の地震調査研究推進本部)と予測されていたので、それより早く地震が起きる可能性が出てきたことになる。

4年以内に70%と発表したのは、東京大学地震研究所だ。ただ、このホームページを読むと、必ずしも予測が早まったという訳ではない。からくりはこうだ。

政府の発表数値は、過去150年間に起きたM7クラスの地震を数えて、その頻度から確率を求めた結果今後30年以内にM7クラスの地震が起きる確率は70%と試算した。先の東日本大震災以降M7クラスの地震は起きていないので、政府の発表数値は変わらないままだ。

一方、今回の東大地震研究所の発表は、東日本大震災以降小さな地震が頻繁に起きているので、その数から推測したという。地震にはひとつの規則的な運動があって、マグニチュードが小さいほど地震はしょっちゅう起き、大きいほど少ないというものだ。これをマグニチュードを考案した人の名前から「グーテンベルク・リヒターの法則」と呼んでいる。日本ではM3の地震が年に10,000回、M4の地震は年に1,000回、M5は年に100回、M6は年に10回程度あるとされている。

ところが、3.11以降、この小さな地震の回数が増えていて、M3以上の地震は3.11までの半年間は47個だったのに、3.11以降は343個に増加しているという。小さな地震の頻度が増えれば、それにつれて、大きな地震の頻度も増えることになる。M7の地震は今後30年間にどのぐらいの確立で起きるか計算したところ98%となり、これを70%の発生確率に置き換えたら期間は4年だったというのが東大地震研の発表根拠だ。

地震計測の始まりは古いが(130年頃)、P波とS波を識別できるような観測装置は、明治17年(1884年)ごろ日本で作製されたものだ。製作したのはイギリスの物理学者の二人。この頃は、政府や学校などが外国人を指導者や教師として雇用していた。有名な「Boys, be ambitious」と言ったクラーク博士もそういう雇われ外人の一人で、明治期にはその数が3,000人に上ったとされる。多くがイギリス人(8割)で、技術者を中心に鉄道、電信、鉱山などの分野で、フランス人は造船、陸軍、紡績分野で、ドイツ人は法律、医学、芸術、アメリカ人はクラーク博士に見るように教育と開拓の分野で活躍した。このような人たちは「お雇い外国人」と呼ばれている。

二人のイギリス人が地震計を作製した後、やはりお雇い外国人の地質学者が光学式の水平振り子地震計を日本で作製した。この三人のお雇い外国人が中心になって世界初の地震学会となる日本地震学会が作られた(1880年、会員数117名うち日本人37名、ただし1892年この学会は解散)。

地震がなぜ起こるのかを科学的な概念で取り上げるようになったのもこのころ(1859年)で、アイルランドの技術者が地殻を成す弾性的な物質のひずみや破壊などで起こると主張した。地震の科学的な研究はまだ150年しか歴史がないことになる。地震予知は日本ばかりではなく地震に悩む国々の悲願だが、まだ成功例は少なく確立途上だ。

地震学者からは、東北地方太平洋沖でマグニチュード9の地震を想定できなかったことへの反省が多く、その原因をデータ不足に加え、理論が未熟であるこした地震学会員が7割いる(学会アンケート調査)。また、もっと防災意識に立った研究が必要だと反省する意見も多い。

今回、4年以内に70%の確率でM7級の直下型地震が起きるとした東大地震研の発表は、これらの反省を十分意識していると思えるものだ。分かりやすく数字の根拠を説明した後に、これに対してどういう対策を取ればいいのかが書かれている。数字の根拠と対策項目は紙面割合からすれば半々ほどで、研究の結果をいかに防災に繋げようとしているかがうかがえる。

対策の巻頭は、日本であれば、どこにいてもM7程度の地震は起きると断言し、日本の国土は地震によって作られ、地震に遭い地震に備えることを繰り返すことによって今の私たちがあると文化論から始まる。次に、首都圏直下型の地震は家屋の倒壊や家具の転倒による死者が8割を占めるということなので、逆に言えば耐震補強をして家具を留めれば8割も被害を軽減できると呼びかける。その呼び掛けは続き、「家屋が倒壊しなければ,火災も発生しにくくなります.ブロック塀が倒れなければ,消火活動もスムーズになります.被害はさらに軽減できるでしょう.M7程度の地震から被害を最小限にとどめることは,ひとりひとりの心がけで可能なのです.今がその時と思って,対策をとってください.」(原文のまま)と締めくくる。参考サイト欄には東京消防庁の地震に備えるサイトのリンクが張られ、それを見ると、3.11以降消防庁が考え直した備えるべき項目がずらりと現れる。

何のための研究かを考えた結果の表れだろうが、研究者たちのいつ地震が来てもおかしくないのだとう切迫感も感じられるし、東北での被災状況を目の当たりにした緊張感も感じられる。それは、大震災が起きれば誰も他の人を助けることができないが、その後は隣近所の人々と助け合って生き延びる現実をも物語っている。

東大地震研のホームページを読んだ後、消防庁のホームページを読む。すると、危ない家はすぐに役所に電話をして役所の補助を受けながら耐震診断をしてもらい、不具合があればこれも役所の補助を受けながら早めに補修をし、家具が転倒したり動いてこないように留め、水や食料を3日間分用意し、お隣にあいさつするようにして、家族とは震災直後に会えない前提でどうするかを話し合っておけば、必ず助かると思えるようになる。恐怖心をあおるマスコミ報道とは違い、東大地震研のホームページはなかなかGoodだ。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2009:「地震」「お雇い外国人」

首都圏に直下型地震、4年以内に70% 東大地震研 2012年1月24日朝日新聞web刊 00時14分

2011.10.15 地震学者「防災意識薄い」 学会アンケートで反省の弁 読売新聞 東京夕刊 夕2社

参考サイト:

地震・火山情報 2011年東北地方太平洋沖地震による首都圏の地震活動の変化について:(東京大学地震研究所・研究内容と図の作成:酒井慎一 准教授,文責:大木聖子 助教)

とうきょう消防第4号(東京消防庁)

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