中国餃子バッシングの不思議 「中国餃子事件」は日本の事件(?)

中国餃子事件と福田訪中

岸田 徹 【岸コラ】
2008年2月5日(火)

中国の冷凍餃子事件は、不可解な部分が多く、いまだに事件なのか事故なのか、中国国内で起きたのかそれとも日本国内で起きたのかがはっきりしない。謎のまま、毒物のメタミドホスは中国の製造工程で混入されたのではないかという疑いが強くなっている。

その根拠は、メタミドホスが検出された商品の包装に注射針であけたような穴があるものとないものがあるためだ。被害をもたらせたすべての商品の包装袋に穴があいていれば、日本国内で注入されたと疑われるのだろうが、完全な包装状態で輸入されたものもあるとなれば、メタミドホスの混入は餃子を製造する過程かそれを包装する過程で行われたのではないかということになる。

しかし、この疑いは、中国の野菜自体に農薬被害の問題があるという誘導の上に成り立っている。

もし、まったく逆の誘導を起こすものがあれば、日本国内での注入も強い疑惑となるのだが。その因子が実はあるのだが、誰も取り上げていない。それは、福田首相の訪中だ。

問題の餃子を食べて中毒症状を起こした3家族のうち、最初の被害にあったのは千葉市稲毛区の母親と女の子で、去年の12月28日に購入し激しい嘔吐と下痢の症状を起こした。

3家族とは別に、昨日(2月4日)兵庫県警は、大阪府のスーパーから異臭がすると返品があったものを調べた結果、6つの包装袋にメタミドホスが検出されたと発表した。この袋はいったん店頭に並んだものだが、外装がべたべたすると返品になったものだ。返却されたのは去年の12月27日。返品先のジェイティフーズ大阪支店では年が明けた1月9日に東京本社の品質管理に送ったが、「油上の汚れ」という結果で終わった。ジェイティフーズは「年末年始もあって」と釈明したが、年末年始で忘れられていることがもう一つある。

福田首相は、異臭の中国餃子が返品された12月27日午後5時50分(日本時間)、政府専用機で北京国際空港に到着。赤い絨毯の上を黒いオーバーコートで夫人とともに降り立ち、出迎えの外務次官や駐日大使とあいさつを交わしていた。この訪中には、外務省、文科省、農水省、経産省の高官約70人が同行していた。

翌28日、千葉市稲毛区の母親と3歳になる女の子が冷凍餃子を食べ嘔吐と下痢に苦しんでいた頃、福田首相は東京ドーム10個分の敷地を誇る釣魚台国賓館で胡錦濤国家主席主催の晩さん会で熱烈な歓迎を受けていた。

もし、何らかの政治目的で福田訪中に反対する組織的な勢力がいやがらせ行為をしようと考えた場合、福田首相が中国を訪問したとたん中国製冷凍餃子を食べた人たちがバタバタと倒れるというシナリオは十分考えられるものだ。

標的となったのがジェイティフーズというのもうなずける。他の大手輸入業者と違い、ジェイティフーズの親会社である日本たばこ産業(JT)は民営化されたとはいえ、株式の半分は政府が保有している。半分は国のもので、一般の民間会社より狙う「価値」がある。

被害を初めて発表した1月30日の不可解な記者会見は、ジェイティフーズの社長とJTの執行役員、JTの岩井取締役と生協の常務理事の4人で行われた。ここで中心的な役割を果たしたのはJTの岩井取締役だ。本来、いくら子会社とはいえ問題の会社の代表者なのだからジェイティフーズの社長が中心に説明すべきところだ。

ところが、親会社の岩井取締役が中心に説明や謝罪が行われた。これは、JTそのものが実際に食品事業を子会社を通じて行っていることを自ら証明している。岩井取締役は11人いる役員(監査役を除く)のうちの一人で、食品事業本部長を務める常務執行役員だ。2005年に経営戦略部長から執行役員になったエリートだ。見識や実力から考えれば会社を揺るがす大事件の説明・謝罪会見を行うには適任だと言える。

しかし、法的、形式的に言うならば、ジェイティフーズの社長が行うべきだし、親会社の責任ということを追及するのなら、実は岩井取締役の上にはもう一人重役がいる。JT副社長の武田氏で社内では財務とコンプライアンス、食品事業担当の最高責任者だ。会社の財務最高責任者は実質的にナンバー2だし、コンプライアンス(法令遵守)は国際企業としては最重要課題。また、JTにとってはたばこ産業からの脱却という社命はこれも最重要課題、その中心事業である食品事業で人の命にかかわる問題が起きたとなれば、最高責任者が出てきて説明してもいいところだ。

なぜ、武田副社長が出てこなかったのか。一番の理由は、最高責任者が出るほどの場面ではまだないということなのだろう。しかし、実務的な理由は、就任後まだ日が浅いという点だ。武田氏は去年の2月に顧問としてJTに入り、6月に副社長になったばかりだ。とはいえ、会社の社長や副社長がなったばかりだと言って会社を代表する発言をエクスキューズするわけにはいかない。

武田氏は内閣府の審議官を行い、守屋防衛次官と沖縄の普天間飛行場の移設問題を扱っていたりしたが去年の1月に退官した。もとはと言えば、大蔵省の関東財務局長を歴任したあと審議官になった大蔵エリートだ。憶測だが旧大蔵省からの天下りということが今回の件で直接責任を取らなかった最大の理由ではないか。JTは半分国のものだが、国のものとは本来国民のもの。ところが、日本は官僚国家、JTは国の代表の議員や閣僚が管理しているのではなく、役人が管理している。JTは旧専売公社で長年旧大蔵省の管轄だった。

JTの役員は旧専売公社からの優秀な社員がのぼりつめて役員になっているケースがほとんどだが、一部例外がある。トップの涌井会長はやはり旧大蔵省出身だし、常勤の立石監査役も旧大蔵省出身のいわば天下りだ。さらに、天下りのバーターとも思える監査役の村山氏は東京高検の検事長をやった方だ。

会長の涌井洋治氏は大蔵省の主計局長だった時、脱税事件で摘発された泉井石油商会の代表者から絵画を贈られ、いわば接待汚職で退任した人だ。以前も会長職は大蔵省出身者だったが、JT側はさすがに涌井氏の会長就任には抵抗したようだ。しかし、大株主の意向を無視できず会長就任となった。大株主の意向とは政府の意向で、政府の意向とは旧大蔵省の意向だ。

それほど、旧大蔵関係の政府の意向に逆らえない環境にJTはある。

一連の事件を発表したJT側の会見があった1月30日に、すでに公表が遅いとの批判が続出した。福田首相の訪中に対するいやがらせ事件だと想定するなら、この遅れは、年末年始の体制の乱れから自然に起きたものではなく、訪中時にテロと思われるような報道を避けたかった政府側の意向が働いたと想像できる。

実は、民主党が12月上旬に小沢代表を団長とする450人規模の各界の人たち(民主党議員47人を含む)を中国に送り込んでいる。小沢代表は、日中国交を果たした田中角栄のひぞっ子だ。中国とはその時から関係を深めている。福田さんも中国には独自の人脈があり、また自らも中国通であるとしていることから、訪中には一点の曇りも許せなかったのだろう。もし、小泉さんがこの事態に遭遇していたら、中国訪問中だろうがその場でテロ宣言をして、日中は手を組み国民の命を狙うテロ撲滅を宣誓しただろう。

恐らく、JTは政府関係者とこの件について相当協議していたに違いない。その時間があまりにも長かったために、途中で情報が漏れ、発表前の1月28日にJTの株価が急落したのではないか。

福田首相の訪中が発表されたのは、12月21日だ。官房長官が発表した。中国側も同日の発表だ。しかし、その前の12月17日に読売新聞が複数の政府筋からとして27日訪中30日帰国とする記事を書いた。この時点で、「犯人」はJTの中国餃子に毒物注入を計画したのではないか。それからすると、毒物混入は訪中の時に大混乱となるように日本国内で仕組まれたと考えられる。問題の中国餃子が日本に到着した11月上旬にはまだ福田訪中は決まっていなかったので、中国での注入はなかったと考えられる。

JTの記者発表も用意周到に行われたが、中国の問題となった製造工場もあまりにも簡単に操業を中止している。相当に両国政府間とJT側で話し合いが行われ補償の問題をクリアーしたのではないかと想像してしまう。

中国餃子と福田訪中との関連を誰も言わないというのは、何とも言えない不気味さを感じる。

つづく

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「中国餃子事件」は日本の事件(?) (2008年2月12日)

中国餃子バッシングの不思議 (2008年2月1日)

参考資料:

外装べたつき、返品 毒物付着見通せず 冷凍ギョーザ [2008年2月4日00時47分 asahi com. 朝日新聞]

中国製ギョーザ 殺虫剤新たに6袋 表面から検出 兵庫と同一製造日[2008年2月4日[月] 産経新聞朝刊]

中国製ギョーザ:被害拡大の恐れ…回収6袋から殺虫剤検出 [2008年2月3日 20時12分 (最終更新時間 2月3日 23時08分) 毎日jp 毎日新聞]

JT株、ギョーザ事件公表前に急落 監視委が情報収集 [2008年2月3日11時40分 asahi.com 朝日新聞]

中国製餃子食べ10人中毒 3家族被害、女児一時重体 農薬混入で/千葉・兵庫 [2008年1月31日 読売新聞東京朝刊 一面]

中国産ギョーザ:中国の製造元、門閉ざし取材に応じず [2008年1月31日 0時45分 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:ジェイティフーズ社長ら謝罪会見 [2008年1月31日 0時08分 (最終更新時間 1月31日 0時22分) 毎日jp 毎日新聞]

公表遅れ深刻事態 最初の被害は1カ月前 [2008年1月31日 中日新聞朝刊]

中国産ギョーザ:回収までに1カ月 行政対応が「後手」 [2008年1月30日 23時59分 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:埼玉、神奈川、秋田でも中毒症状の訴え [2008年1月30日 23時35分 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:中毒事件で製品撤去、消費者から不安の声 [2008年1月30日 21時19分 (最終更新時間 1月30日 22時25分) 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:JTの経営戦略に大きな影響 [2008年1月30日 21時39分 (最終更新時間 1月30日 22時47分) 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:製造元、説明を拒否 [2008年1月30日 21時29分 毎日jp 毎日新聞]

中国産ギョーザ:食中毒事件で「残念だ」…福田首相 [2008年1月30日 21時09分 毎日jp 毎日新聞]

JT、同じ工場で製造の冷凍食品自主回収・中国製ギョーザ中毒で [2008年1月30日19:48 NIKKEI NET 日経新聞]

中国産ギョウザ:千葉、兵庫で中毒症状10人 殺虫剤検出  [2008年1月30日 17時32分 (最終更新時間 1月30日 19時14分) 毎日jp 毎日新聞]

福田首相、訪中の意義強調 目立った中国の周到準備 [2007年12月31日 読売新聞東京朝刊 二面]

[福田首相の一日]12月28日 [2007年12月29日 読売新聞東京朝刊 政治]

福田首相の訪中が決定 27日から30日まで(速報) 「2007年12月21日人民日報日本語版]

「福田首相、27日から訪中」 町村官房長官が正式発表 [2007年12月21日 読売新聞東京夕刊 夕二面]

福田首相27日訪中 胡主席と首脳会談へ [2007年12月17日 読売新聞東京夕刊 夕一面]

賈慶林政協主席、自民党の二階総務会長らと会談[2007年12月09日asahi.com 朝日新聞]

新テロ法案成立に万全期す 国会再延長へ 福田首相決断、公明も容認 [2007年12月8日 読売新聞東京朝刊 政治]

民主・小沢氏、全人代副委員長と会談/北京 [2007年12月7日 読売新聞東京朝刊 政治]

内閣府人事 [2007年1月10日 読売新聞東京朝刊 政治]

普天間移設 協議会の来月再開を目指す 代替施設案で曲折も/政府 [2006年11月21日 読売新聞東京朝刊 二面]

JT会長、涌井洋治氏で最終調整 [2004年4月15日 読売新聞東京夕刊 夕二面]

新省庁人事=1月6日発令 [2000年12月27日 読売新聞東京朝刊 朝特F]

東京高検検事長に村山弘義・名古屋高検検事長 後任人事など正式決定/政府 [1999年4月23日 読売新聞東京夕刊 夕二面]

青少年交流訪中団、28日に出発 [1989年9月23日 読売新聞東京朝刊 二面]

参考サイト:

福田首相、北京に到着 武大偉外務次官ら出迎え

07年度円借款取り決めに調印 中日両国

温家宝首相と福田康夫首相が会談

胡錦涛中国主席、福田首相と会見

曽慶紅副主席、野中元自民党幹事長と会見

唐家セン国務委員が冬柴国交相、二階総務会長と会見

日本民主党代表団、西安を訪問

福田首相、曲阜の孔子廟を見学 「温故創新」と揮毫

福田首相、訪日終え帰国の途に

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