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岸田 徹 【岸コラ】 |
「解放軍報」という中国の軍関係者や安全保障専門家向けの機関紙に、日本は大変な軍事大国になっているという日本特集が8年前に組まれた(1999年2月)。日本政府がアメリカと共同してTMD(戦域ミサイル防衛)の開発を研究すると正式に決めたのが特集のきっかけになったのだろうが、その時点の日本の軍備は世界の先端をいっていたと思えるのも事実だった。
陸上自衛隊にはアメリカの戦車と肩を並べる「90式戦車」、海上自衛隊にはアメリカにしかない世界最強の防空システムを搭載しているイージス艦の「こんごう」、航空自衛隊には軽さと強度を誇る「F-2」支援戦闘機がそれぞれ配備されていた。これらの兵器は三菱重工業が中心になって製造しているメイド・イン・ジャパンだっただけに、中国は日本の軍事大国への歩みを脅威に感じたのだろう。
日本の軍事力に脅威を感じているはずの中国軍が、原子力潜水艦を約2時間にわたり日本の領海内に侵犯させた事件が突如起きた(2004年11月)。時の首相は小泉さん。2週間後に日中首脳会談が1年1ヶ月ぶりに行われる時だった。靖国参拝を中国が批判をし、さらに中国は東シナ海のガス田開発を強行しようとしている時だった。挑発とも思える領海侵犯に、今度は日本の防衛白書が中国海軍の活動を警戒すると強調した。
軍事大国同士の威嚇を思わせる出来事だったが、実際には両国が軍事力を誇るには到底至らない状態だった。というのも、中国軍はこの時すでに日本の中心的な戦闘機であるF-2が何の役にも立たないことを把握していたようなのだ。
これに呼応するかのように、北朝鮮は日本列島が射程圏内に入るテポドン2号など7発のミサイルを発射した(2006年7月)。この時日本は、ミサイル発射後も再度発射の恐れがある危険性を航行する民間の船舶や航空機に注意を促すことすらできなかった。
外国からの攻撃があった場合、反撃の主力は戦闘機だ。この戦闘機が役に立たなければ、敵は反撃の脅威を感じることなく挑発できる。実は、日本の主力戦闘機であるF-2は対艦ミサイルを4基積むと主翼が大きく振動して飛べなくなってしまうことが問題視されていた。つまり、F-2が敵を察知して緊急発進をしてもミサイルを発射することはない状態で飛んでいることになる。いわば丸腰で飛んでいる訳で、敵も脅威に感じることはない。一方、わが方の隊員は命がけで飛んでいることになる。
役に立たない戦闘機は141機調達されることになっていたが、バブル崩壊後の財政難を理由に94機で調達は打ち止めにされた。恐らく、実際には役立たない戦闘機の配備を財政事情を理由に打ち切ったのだろう。新聞記事を丹念に調べると、F-2の実用試験で主翼に亀裂が入る状態は、中国軍が日本の軍事大国化を懸念したその年に小さく報道されている(1999年6月7日付産経新聞)。
日本がF-2の製造にこだわったのは、主翼の部分に日本の先端技術である炭素繊維を使うことが大きくかかわっていた。高度経済成長を成し遂げ、経済の減速に自信をなくしていたアメリカを超えるという日本の勢いがあった。また、零戦を生んだ三菱が再び戦闘機を復活させてこそ戦後が終わるという三菱のプライドも覗いていた。(産経新聞)
日本は、当初独自に戦闘機の開発を行いたかった。ところが、日本の技術力に脅威を感じたブッシュ(父)大統領がそれまで行っていた飛行制御ソフトの提供中止と、無条件で炭素繊維の加工技術を無償提供するよう日本に突きつけてきた。これでF-2は日米共同開発となり、ロッキード社のF16を母体として、日本6−アメリカ4の作業分担で、収益配分は逆の4-6で開発がなされることとなった。F-2の開発には当初予算の倍にあたる3,700億円の費用が投じられた。それにもかかわらず、日本のF-2は韓国のF-15Kより劣り、竹島の制空権は失われたと現場では考えられている。(産経新聞)
一方、アメリカの方は財政難を克服し、再び軍事大国の道を歩む時代を迎えた。日本のF-2が失敗を重ねているのをすっかりマスターしたロッキード社はF22Aラプターという敵のレーダーにはほとんど映らないという最新鋭のステルス(忍者の意)機を完成させた。日本はこの戦闘機を購入したいとアメリカに頼んでいるが、日本の海上自衛隊で起きたイージス艦中枢技術流失事件を理由に、輸出禁止条項は解けないと売ってくれないでいる。
小池百合子元防衛相が辞任したのは、この技術情報流失事件の責任をとった形になっている。
航空機の主翼を炭素繊維で作るというのはもともと日本独自の技術だ。三菱重工が開発したとはいえ、炭素繊維を製造する東レや三菱レイヨンなどの技術がなければ三菱重工は到底主翼を作ることはできない。さらに、三菱重工が製造した戦闘機を購入したのは日本政府だけだ。日本には武器輸出三原則があり、武器を外国に売ることはほとんどできない。いわば3,700億円の国民の出費がなければ完成できなかった技術だ。
先端技術は失敗の連続から成功を導くコストのかかる代物だ。いわばアメリカ側は成功だけを取得し、その成功を導いた失敗のコストを日本側に押し付けた格好だ。こんな状態で日米同盟が存在しているとは到底思えない。日本が一般のアメリカ国民が知りもしないし要望もしていないインド洋での補給活動に固執する訳は、案外こんなところにあるのかもしれない。補給するから、ステルス機を売ってほしいと。
三菱重工は、この失敗でより強固に炭素繊維を主翼に導入する技術を自分のものにした。今年の7月、「ドリームライナー」と呼ばれるボーイングの最新鋭機「787」の1号機が初公開された。この主翼は三菱重工の炭素繊維複合材が使用されている。
さらに、三菱重工はYS-11の後継とも言える国産初のジェット旅客機「MRJ」を開発しようとしている。もちろん売りは炭素繊維をふんだんに使った機体だ。軽いので燃費と騒音の両方が削減ができると言われている。来年度から4年をかけて開発する予定だが、開発総額の1,200億円のうち400億円を国が援助することになっている。
「日の丸旅客機」のために国が支援すると言えば聞こえはいいが、三菱重工のF-2での失敗を国民の税金で帳尻を合わせるのではないかと疑いたくなる。
日本は平和憲法の国だ。もともと軍隊は必要ない。それをいいことに、防衛産業をおもちゃのように扱い、国を守れない防衛整備をどんどん行う。防衛をおもちゃのように扱うのはせめて高級料亭とゴルフの接待に止めておいてほしいが、国会やマスコミの追及が厳しくなれば、日本の防衛には国民的なクエスチョンがつくのは必至だ。
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参考資料:
Microsoftエンカルタ総合大百科2007:「F-2」「イージス艦」「90式戦車」
基礎からわかる「防衛産業」=特集 〔2007年11月17日読売新聞東京朝刊 解説〕
配線ミス原因 戦闘機墜落 [ 2007年11月16日 産経新聞東京朝刊 社会面 ]
空自、F15飛行停止 米墜落「構造的欠陥の可能性」 [ 2007年11月06日 産経新聞大阪夕刊 ]
自衛隊機が炎上 三菱重工の飛行試験で離陸失敗/名古屋空港 〔2007年10月31日読売新聞東京夕刊〕
米、F22調達終了か 日本の選定に影響 軍事紙報道 [ 2007年10月31日 産経新聞東京朝刊 総合・内政面 ]
SM3、12月に発射実験 イージス艦「こんごう」、米ハワイ沖合で [2007年10月13日読売新聞東京朝刊〕
三菱重工のジェット機 米P&W社製エンジン採用 [2007年10月10日読売新聞東京朝刊〕
内閣改造 小池防衛相を交代へ 情報流出「責任取る」 [2007年8月25日読売新聞東京朝刊〕
中国 米主導を警戒、対日接近 [ 2007年08月10日 産経新聞東京朝刊 1面 ]
小池防衛相 中国の空軍力増強懸念 米副大統領らと会談 [ 2007年08月09日 産経新聞大阪夕刊 総合・内政面 ]
チェイニー米副大統領、自衛隊の支援「高く評価」 テロ特措法延長に期待 [2007年8月9日読売新聞東京夕刊〕
【明解要解】FX機種選定と情報流出事件 [ 2007年07月31日 産経新聞東京朝刊 オピニオン面 ]
次期輸送機の調達先送り FX選定遅れで 現有戦闘機の改修優先/防衛省 [2007年7月27日読売新聞東京朝刊〕
「F22」取得困難に 米下院委、輸出禁止継続を決定 [ 2007年07月26日 産経新聞東京朝刊 総合・内政面 ]
F22導入難航 旧型F4使用延長 防衛省検討 情報漏洩が影響 [ 2007年07月15日 産経新聞東京朝刊 1面 ]
【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(1)中国軍に知られたF2の欠陥 [ 2007年07月14日 産経新聞東京朝刊 1面 ]
ボーイング「787」初公開 炭素繊維複合材で軽量化/米シアトル [2007年7月9日読売新聞東京夕刊〕
国産ジェット、商業化へ前進 機体開発へ400億円規模の支援/経産省方針 [2007年6月1日読売新聞東京夕刊〕
日本発、世界の翼 ボーイング「787」主翼完成/三菱重工 [2007年5月14日読売新聞東京朝刊〕
【正論】国際問題アドバイザー・岡本行夫 冷静に防衛体制の再点検を [ 2006年10月12日 産経新聞東京朝刊 オピニオン面 ]
三菱重工業が旅客機主翼組み立て新工場 [2005年8月5日読売新聞中部朝刊〕
2005年版防衛白書概要 「中国海軍の活動を注視」 軍事費増大を警戒 [2005年7月3日読売新聞東京朝刊〕
「スーパー繊維」増産、軽量で高強度 航空機など需要拡大/国内メーカー [2005年4月20日読売新聞大阪朝刊〕
軽量…「7E7」の主翼 三菱重工、ボーイング社から受託 試作品公開 読売新聞中部朝刊〕
日中首脳会談 ガス田、靖国…双方が主張 懸案巡り溝埋まらず [2004年11月22日読売新聞東京夕刊〕
領海侵犯 「漢型」原潜? 中国方面へ 海自は追尾を続行 [2004年11月11日読売新聞東京朝刊 〕
三菱重工業が三菱自動車の旧大江工場跡地を取得へ 航空機新工場を建設 [2004年8月31日読売新聞中部朝刊〕
[今どき…消費事情]炭素繊維、引っ張りだこ 軽くて丈夫、製造コスト半減で [2003年11月1日読売新聞東京朝刊〕
次期支援戦闘機 下旬から配備 [ 2000年09月13日 産経新聞東京朝刊 総合・内政面 ]
支援戦闘機F2、開発期間を延長 防衛庁 [ 1999年12月21日 産経新聞東京朝刊 総合・内政面 ]
F2戦闘機 配備計画ずれ込みも 実用試験で右主翼に亀裂 [ 1999年06月08日 産経新聞東京朝刊 総合・内政面 ]
航空自衛隊F2戦闘機 また主翼に亀裂 製造の三菱重工で調査 [ 1999年06月07日 産経新聞東京朝刊 社会面 ]
検証 中国の軍機関紙「解放軍報」報道詳報 「日本は軍事大国化を加速」 [ 1999年02月13日 産経新聞東京朝刊 国際面 ]
国産初のイージス艦「こんごう」が進水 [1991年9月26日読売新聞東京夕刊〕
参考サイト:
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