「人の命より大事な組織」が広げた薬害肝炎 「改革」と「二大政党制」なんのため?

何が話したかったのか「福田−小沢会談」

岸田 徹 【岸コラ】
2007年10月30日(火)

福田・小沢会談の模様を伝える2007年10月30日日経夕刊「今のような状況で対立するばかりだったら、前進ないですね。お会いできるのであれば、お会いして話をしたいという気持ちは十分にあります」――福田さんは10月23日の夜TBSの記者に民主党の小沢代表と会談したいと語った。小沢さんは一国の首相がそう言うのでは「受けざるを得ない」と、10月30日、その会談が実現した。

テロ特措法が11月1日に期限が切れるために、政府はその後もインド洋で海上自衛隊が補給活動できるよう新テロ特措法を用意している。福田さんは小沢さんにその成立に協力してくれるよう頼んだとされる。1時間15分の会談だったが45分ほどは二人だけで話したというので、実際のところは何を話したのかは二人だけしか知らない。

残念なことは、こうしてテロ特措法について自民・民主の話し合いで行方が論じられようとしたことだ。テロ特措法の延長は急にやってきたわけではない。今年の7月に行われた参議院選挙の時も、11月1日にテロ特措法の期限が切れることは分かっていた。しかし、選挙戦は年金や政治と金の問題で論戦が交わされ、でテロ特措法が論じられたことはなかった。ところが、民主党が躍進したとたんにテロ特措法の延長問題が自公政権の運命を決めるかのように騒がれ始めた。

そこで、小沢さんはアメリカのために自衛隊を派遣するようなやり方には断固反対だと意思を表明。安倍政権の危機は一気に増し、ついに安倍さんは小沢さんに会談を断られたことを理由に辞任した。

そんなに重要な問題ならば、参議院選挙の時に争点にすべきだった。その結果民主党が勝てば、日本国民は自国の兵隊を海外に派遣することを否定していることになり、テロ特措法は自然に11月1日に終了する。その意思がアメリカをはじめ参加国に伝わり、日本は給油活動をやめる。これが民主主義のルールだ。アメリカだってイギリスだって民意に背いてまで政府に軍隊の派遣を要望はしない。

平和憲法の日本国が、海外に軍隊を派遣するというのは国を左右する重大な決断のはずで、本来民意を問うべきものだ。これをアフガニスタンの場合は9.11のテロで、イラクの場合は大量破壊兵器を持っているという理由のために小泉さんの決断で法律がにわかに作られ、追われるように自衛隊の派遣が行われてしまった。

そもそも論からいえば、アフガニスタンのテロ特措法も、イラク特措法も民意が問われていなかったので、参議院選挙で争点になってよかった。それがならなかったということは、意図的にしなかったのか、あるいは日本国民にとっては大した問題ではなかったのかのいずれかだ。意図的ならば政治問題化してしまうのできっぱりここで諦め、後者の場合なら期限が来る法律はそこで終わるのが当然だ。それを、選挙の結果が出た直後に国際社会の大問題のように取り上げるのはおかしい。この問題は期限のある法律が期限がきたと終わらせてよいものだ。

補給活動の意義を国会で論じている内容も実に情けない。アフガニスタンのテロ防止のために給油した燃料がイラク戦争のために転用されているのではないかという議論は実に幼稚だ。アフガニスタンでアメリカ軍が必要な燃料を日本が補給してあげれば、その分の予算は余るわけで、その余った予算でアメリカ軍がイラク戦争の燃料を余分に買えば、転用したしないにかかわらず、日本はイラク戦争に行くアメリカ艦隊の燃料補給に協力したことになる。

話題にはなっていないが、それよりひどい現状はまだある。日本は、無料で燃料の補給をしている。補給を受けている先は、アフガニスタンのテロ活動阻止に参加している11カ国の軍艦すべてだ。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、パキスタン、スペインだ。活動内容については読売新聞が詳しく、それによれば、テロ特措法が成立した2001年の12月から今年の8月末までの間、自衛隊による11カ国の軍艦への補給回数は777回に及ぶ。平均すれば1カ国あたり70回なのだが、実際にはアメリカが351回と最多で、最も補給をありがたがっているとされるパキスタンが141回。この両国だけで6割以上。最多のアメリカへの給油は45%と半分近くを占めている。

給油活動を行っているのは日本だけではない。アメリカとイギリスの補給艦も給油活動を行っている。日米英で4艘の補給艦が活動している。問題はここからだ。アメリカとイギリスの補給艦はNATO条約に基づいて有償で燃料を補給しているのだ。ということは、アメリカとイギリスの補給艦は日本から無償で燃料を補給してもらい、それを実質的に有償で他国船に補給ていることになる。日本の無償補給の経費は220億円。回数の上で半分近くを占める日本のアメリカへの補給は、いわば110億円をそのままアメリカにあげていることと何も変わらないのだ。

目的も効果もよく分らない補給活動を日本政府は国際社会への責任としてどうしてもやり続けたいという。その根拠となるのが、日本の命綱である中東からインド洋、東南アジアを渡るタンカーのシーレーンの確保だ。11カ国の軍艦はこのシーレーンを守ってくれているという。海上自衛隊の関係者によれば、――中東から日本に向けて航行すると、平均8時間おきに、日本から来る20万トン級の大型タンカーとすれ違うという。「インド洋では今、航行する多くのタンカーが、『ありがとう』のメッセージを多国籍海軍の艦船に伝えている」と話す――読売新聞。

現在、この重要な公海上の地域をアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、パキスタンの5カ国が15艘体制で警戒を続けている。11カ国が収集した情報に基づき、5カ国の15艘が協力をして怪しい船に無線照会をしたり、乗船して検査を行ったりしているという。その数は無線紹介が14万回、乗船検査が1万1千回に上った。その成果はというと、過去3年間の無線照会の回数が2004年には41,000回だったのが2005年には14,000回に、2006年には9,000に減っているというのだ。つまり、それだけ監視の目を意識して不審船が激減しているとしている。こうした活動を支えているのが自衛隊の海上補給だと9月に報道陣に公開された日本の補給船に乗った記者は成果をたたえるのだが、これには疑問がわく。

なぜなら、無線照会の回数は意図的に減らすことができる。意図的でなかったとしても、2004年の41,000回は、1艘が1日に照会した平均は7.5回だ。毎日7、8艘の船に照会をしていれば、何度も照会しているうちに、この船は怪しくないと判断されていくもので、その回数が減った結果にすぎないのではないかとも思う。さらに、警戒を続けている公海上の地域は日本列島以上に広い地域で、これを15艘の艦船で警戒することにどれだけの脅威があるのか不明だ。

この海域はもともとが海賊などの出没で危ない地点が複数ある。日米政府は特措法延長が危ぶまれた9月には延長に有利な情報を出してきたが、その中にテロ掃討作戦で5年半の間に8件の海賊などを摘発したと発表した。報道では自衛隊の貢献が実を結んだように書かれているが、なんでこのぐらいの数字で貢献が語れるのかが不思議だ。大型タンカーが航行する際、軍艦に感謝の信号を送ってくるとの報道もあったが、海路を監視してくれればお礼を言うのは当たり前で、どれをとっても11カ国の活動がアフガニスタンのテロ撲滅に決定的な役割を果たしているとは思えない。

やはり、ここは日本国民の民意で継続か廃止かを決めたかったところだ。政府と民主党代表の頂上会談がいかにもことの重大性を物語っているように見えるが、重大なら民意を尊重する姿勢が求められる。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2007:「内閣法制局」「イラク復興支援特別措置法」

首相vs小沢代表 新テロ特措法案協議、平行線 2日にも再び会談 [2007年10月30日産経新聞夕刊]

守屋氏喚問 便宜は否定 きょう党首会談 大連立含み打開模索 [2007年10月30日産経新聞東京朝刊]

新テロ法案を閣議決定 期限1年、給油・給水に限定 [2007年10月18日読売新聞東京朝刊]

[スキャナー]海自給油、1か月後期限切れ テロ監視網の緩み必至 [2007年10月1日読売新聞東京朝刊]

基礎からわかる「テロ特措法延長問題」=特集 [2007年9月15日読売新聞東京朝刊]

海自補給の多国籍軍 インド洋で摘発8件 大半海賊 テロ組織動けず [2007年09月12日産経新聞東京朝刊]

参院選惨敗 テロ特措法再延長や税制改革…重要政策に大きな壁/政府・与党 [2007年7月30日読売新聞東京朝刊]

参考サイト:

福田首相、小沢代表と会談したい考え

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