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岸田 徹 【岸コラ】 |
民主党の小沢代表は今月8日アメリカのシーファー駐日大使と初めて会談した。場所は永田町にある民主党本部だ。小沢さんはシーファー大使が待つ部屋に入り、楕円形の円卓の巷で言われるお誕生日席に座った。その向って左が大使だ。おそらく、アメリカの大使が友好国の党首とこのような席次で会談したことはないのではないかと思う。
会談は11月1日に切れるテロ対策特別措置法について行われた。大使が海上自衛隊の活動はテロに反対するために活動する大事な役割を果たしているので、ぜひともテロ特措法の延長に賛成してほしいと促した。
小沢さんは、「米国は国際社会の合意を待たずにアフガン戦争を始めた。我々の憲法解釈では、日本に直接的に関係のない地域で、米国あるいは他の国々と作戦をすることはできない」と言明し、テロ特措法の延長には反対の姿勢を示した。
その翌日(現地時間では当日)、訪米中の小池百合子防衛相がアメリカ政府から厚遇を受けていた。ゲーツ国防長官との会談を皮切りに実力者のチェイニー副大統領、ライス国務長官、国家安全保障問題担当事務方No.1のハドリー大統領補佐官との会談を次々に設定してきた。会談後小池氏は記者団に露骨にテロ特措法の延期要求はなかったものの「これはテロとの戦いだ。日本はわかってるのか」という感じだったと語っている。
その翌日(10日)麻生外相が、シーファー駐日大使と会談した。大使は日本がインド洋に残ることが重要だと述べ、麻生外相も政府として延長に向けて努力をしたいと述べた。
その翌々日、民主党の前原前代表がテレビ朝日の番組で、「アフガニスタンでのテロとの戦いから日本が抜けることは、国益に反する」と述べ、テロ特措法延長の必要性を強調した。小沢さんがノーだと言ったばかりなのに、前代表が延長を支持するという発言が出る。いったいテロ特措法はどこが重要なのか。
その答えは、この4月にさかのぼる。安倍総理はゴールデンウィーク中の4月29日にアラブ首長国連邦を訪れた。歓迎行事が行われ故ザイード前大統領の墓参をし、大統領主催の午餐会に出席したのだが、訪問の目的は恐らく違うところだ。
実は、首都アブダビは港湾都市で、海上自衛隊の護衛艦「ずずなみ」と補給艦の「はまな」が停泊していた。両艦船は今年3月に日本を出発しインド洋で英米軍などに補給活動をしている。両艦船を含め海上自衛隊のインド洋派遣部隊が、3月末時点で補給した総数は、11ヶ国の艦船に燃料を740回(47万キロ・リットル)、水5,810トンにヘリコプター用燃料を880キロ・リットル(読売新聞)。安倍さんはアブダビに停泊している2艦船を視察したのだった。
そこで隊員を前に、「就任以来、海外で活動する部隊をぜひ訪問して、直接労をねぎらいたいと考えてきた。活動は国際的にも高い評価を得ており、最高指揮官として大変誇りに思う」(読売新聞)と励ました。
テロ特措法は、2001年のニューヨークで起きた9.11事件で首謀者とされたビンラディンをアフガニスタンのタリバンがかくまったために、アメリカがアフガニスタンに制裁行動を起こすことになったが、それに日本が協力するために作った法律だ。この制裁行動でタリバンは国を明け渡したが、ビンラディンはまだ捕まっていない。最近は、タリバンの勢力が復活している。
なぜ、日本の補給活動がそんなに評価されているのかというと理由は大きく二つある。ひとつは技術力と経済力だ。補給を継続的、しかも安定的に行うのには大変な技術が必要だ。補給は給油ばかりでなく水の補給も行う。各艦船には海水を真水に精製する装置が付いているが、必ずしも十分ではない。それを日本の補給船は十分な水の補給も自力で行う。インド洋上の活動は英米艦船だけではなくNATOの22カ国を中心に多くの国々が参加しており、必ずしも能力の高い艦船ばかりが派遣されているわけではない。その艦船に十分な油と水を継続的に補給できるのは、恐らく日本とアメリカしかない。さらに、それを無償で行うとなるとできる国は日本しかないだろう。
もう一つの理由は、日本の宗教的立場だ。日本は政治的にはアメリカの影響下にあるが、宗教的にはアメリカとはまったく違う環境にある。そのため、アメリカの活動には参加できないが、日本が活動しているのなら参加するという理由が立ちやすい。
実際、活動の参加国はキリスト教国が多いのに、イスラム教国のパキスタンが名乗りを上げた。国民の間には反米感情が根強いが、日本の支援があるという理由で参加を表明したと言われている。(読売新聞)
各国とも負担が重くのしかかっているのが現状で、できるだけ多くの参加国で監視を続けたいという要望がある。特に多国籍軍の指揮を執る主導国の負担は大きく持ち回りで半年づつ行っている。パキスタン海軍はフランス海軍に代わって次期その主導国を務める予定だ。
どうしてインド洋で監視活動が続くのか、アフガニスタン国内だけ見ていればいいのではないかと思うのだが、事はそう単純ではない。
アフガニスタンで戦闘が始まったのは、ソ連が南下してきたのがそもそもの原因だ。この時アメリカがイスラム戦士に軍事援助し、ゲリラによる対ソ連のテロが横行した。これに耐えられず、ソ連軍は撤退した。その後、イスラム戦士同士の主導権争いで内戦が起き、アフガニスタンの難民がパキスタンに流入した。パキスタンはインドとアフガニスタンに挟まれた国で、インドとは仲が悪く、アフガニスタンの混乱はインドとの対抗上不利だと考えた。そこで、パキスタンはアフガニスタン解放軍を組織し内戦を収拾しようとした。その解放軍の中心となったのがアフガニスタンからの難民でイスラム神学校で学んだ若者と教師たちだった。それがタリバンだ。
タリバンは、内戦にうんざりしていた市民を味方に付け次々とアフガニスタン解放に向かっていた。内戦を続けていた一方のイスラム戦士たちは北部同盟を結成しタリバンと戦ったが劣勢だった。タリバンは国づくりのためにイスラム法解釈以上の厳格さを市民に求めたため、次第に人気が落ちていくのだが、宗教警察が国家を規律で統制した。しかし、タリバン政権は国際的に認知されず、国際社会からは孤立していく。そこに手を差し伸べたのが資金力の豊富なビンラディンで、タリバンはテロ組織と関係を深めていった。
この時起きたのが9.11テロ事件で、アメリカはビンラディンをかくまったタリバン政権を攻撃しタリバンは支配地域をすべて失った。ところが最近は、自爆テロで再びアフガニスタンの南半分の支配権を握ってきた。その背景には、アメリカなどの駐留軍がアフガニスタンで栽培していたケシ栽培を禁止したため、その農民が職を失い、内戦による負傷者ともども社会の最下層となった人たちにタリバンが援助している現実がある。
こうしてテロ組織化されたタリバンのメンバーたちは、陸上と海上を移動し、スーダンやソマリアなどでテロの軍事訓練を続けている。この移動を監視しているのが英米仏などNATOを中心とする多国籍軍で、これまで5トンを超す大量の武器や弾薬を押収している。その艦船に補給活動を行っているのが日本の海上自衛隊で、日本の補給活動がなければ、これらの監視活動は到底続けることができない仕組みになっている。
そういう状況の中で、7月19日韓国人23人がタリバンに拉致された。当初タリバンは韓国軍を撤退させなければ人質を殺害すると言ってきた。韓国軍がアフガニスタンの軍事行動に参加しているのは、インド洋の海上監視ではなく、9.11でビンラディンをかくまったタリバン政権をアメリカが攻撃した後に、輸送支援部隊、医療部隊、工兵部隊を順次派遣した(しんぶん赤旗)。しかし、これには韓国国内でも反対が多く、今年いっぱいで韓国軍は撤退することになっていた。
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参考資料:
Microsoftエンカルタ総合大百科2007:「タリバーン」「テロ対策特別支援法」
テロ特措法延長に反対 民主・前原前代表「国益に反する」 [2007年8月13日読売新聞東京夕刊]
テロ特措法延長で麻生外相と米大使会談 [2007年8月11日読売新聞東京朝刊]
小池防衛相、訪米で厚遇 テロ特措法延長などで会談 [2007年8月10日読売新聞東京朝刊]
テロ特措法延長に民主・小沢代表反対 党内調整難航も 保守系議員が懸念 [2007年8月9日読売新聞東京朝刊]
検証・テロとの戦い 海自派遣、国益守る 燃料補給で国際監視支援(解説) [2007年8月3日読売新聞東京朝刊]
[スキャナー]パキスタン神学校事件 拉致や脅迫、学生暴走 過激派放置のツケ [2007年7月11日読売新聞東京朝刊]
安倍首相、インド洋海自部隊を激励 テロ掃討作戦に協力/UAE・アブダビ [2007年4月30日読売新聞東京朝刊]
[春待つアフガニスタン](上)神学生ゲリラ「タリバン」(連載) [1995年2月26日読売新聞東京朝刊]
参考サイト:
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