今度の参議院選挙 年金問題、本当に大事なとこはどこ?

松岡元農相は本当に自殺だったのか。

岸田 徹 【岸コラ】
2007年7月7日(土)

松岡元農相が自殺してから1カ月以上たった。何で松岡元農相は飯島勲元小泉首相秘書官に遺書を書いたのか――このなぞは依然解けない。

松岡元農相には不明朗な金の動きが指摘され、また参議院選挙の影響を心配する方面から、その死については今でも取りざたされている。他殺説もくすぶる。他殺説が生まれてくる根拠はいくつかある。

そのひとつに朝日新聞が報じた救急車のサイレンがある。松岡元農相が自殺を図ったその日(5月28日)の夕刊に、「現場にいた警察官の話によると、午後1時すぎ、救急車と消防車が宿舎からサイレンを鳴らさずに出て行ったという。到着時もサイレンを鳴らしていなかったという」――との記事がある。道路交通法施行令の第14条には緊急車両は緊急の用務のために運転する場合は、サイレンと赤色の警光灯をつけなければならないとしている。どちらか一方ではだめで、両方行わないと緊急車両として活動できない。他の車両に優先して走ることができなくなるのだ。

もし、朝日の報道通り救急車がサイレンを鳴らさずに来たのだとするのなら、すでに松岡元農相はその時点で死亡が確認されていたことになる。一方、同日夕刊の産経新聞には「救急車の車中では救急隊員が心臓マッサージを施しているのがみえた」との記述があり、もし蘇生を試みているのならサイレンを鳴らしていたのではないかとも思える。

救急車がサイレンを鳴らしていたかどうかは、松岡元農相が病院に運ばれる時点で死亡していたのかどうかを判断する材料になる。サイレンを鳴らしていなければ、生死の境はとっくに越し、死体を運んでいることになる。サイレンを鳴らしていれば助かる可能性を秘めて運ばれ、松岡元農相は病院で死亡したことになる。

死体が病院に運ばれたら、死に至る過程が医師には全く分からないので、警察の検視官は司法解剖を要求することになるだろう。一方、病院で死亡が確認されたということになれば、検視官の判断で解剖されないことも考えられる。読売新聞の報道によれば、赤坂警察署は松岡元農相の室内の状況から自殺と判断し、司法解剖を行わずに遺体を家族に引き渡している。自殺の夜には仮通夜が都内で行われ、翌日(5月29日)に熊本に遺体が戻り通夜、その翌日には密葬が行われた。検察の疑惑捜査が入ろうとしている先なのに、あまりにも早い葬り方だ。

赤坂署が自殺と判断したと同時に安倍首相らにあてた遺書が6通あったということが報道された。遺書の存在は警察発表が最初のようだ。他殺説の憶測はそこから始まる。サイレンを鳴らさず松岡元農相の遺体を運んだ救急車が病院に入れば、司法解剖は免れない。そこで、遺書を用意し自殺の状況を作り出したというのが他殺説の一つの根拠だ。

松岡元農相が自殺か他殺かでは、飯島元秘書官に対する遺書の意味が違ってくる。自殺ならば、飯島秘書官あての遺書は、今までの恨みの意味合いが強くなる。松岡さんは抵抗勢力の中心人物の一人だったが、方針を転換し、小泉首相の所に日参して安倍政権誕生に協力した。農林水産大臣になったのは小泉サイドの推薦で、飯島元秘書官のお陰だと入閣時には地元紙に語っている。金にまつわる疑惑は入閣前から大きく、小泉政権では飯島秘書官の「身体検査」に通らなかったと言われている。

松岡さんは飯島さんに恩義を感じながら、安倍内閣の内情を逐一飯島さんに報告していたと言われている。飯島さんの手足になっていたと見ることもでき、自殺ならばそのような締め付けに対して堪え切れなかったとも考えられる。

一方、他殺の場合は状況が180度変わる。遺書は自分の意志では書けない。誰かが書いたか、誰かに脅かされて書かされたのかのどちらかだ。飯島元秘書官に遺書を書くというのは自分の意志ではなく、殺した人の何らかの目的で遺書を書くことになる。飯島さんに遺書を残すのはそれだけリスクがあるので余計な仕事だ。明らかに、飯島さんに不利益をもたらそうとする人による行為だと判断できる。

不思議に輪をかけるのがマスコミの報道だ。松岡元農相の遺書は全部で8通あったとされている。(1)安倍総理宛(2)農水事務次官宛(3)秘書官宛(4)景山俊太郎参議院議員宛(5)身辺警護の警察官宛(6)飯島元秘書官宛、以上が封書で、次の二つが便箋にそのまま書かれていた。(7)国民の皆様、後援会の皆様(8)遺書を発見した人へのメモ。

この8通の遺書についての宛先を全部まとめて報道した新聞はない。特に飯島元秘書官宛に遺書があったと報じたのは朝日新聞だけだとされている。確認できた範囲でも、読売新聞、産経新聞ともに飯島元秘書官宛に遺書があったということを報道していない。遺書については、警察が記者クラブで宛先を全部発表しなかった可能性もあるが、もしそうなら記者サイドから発表するよう要求されるのが普通。また、警察が隠したければもともと発表しないはずなので、記者クラブでは全宛先が発表されたはずだ。となれば、朝日新聞以外は、報道しない方がいいと判断したか、報道は控えるようにどこからか圧力がかかったかである。

飯島元秘書官は、この遺書の存在が明らかになるとFNN(フジテレビ系列)の取材に応じている(5月30日)ことから、小泉・飯島サイドから圧力がかかったというのは考えにくい。また、記者クラブに所属していないメディアでは飯島氏宛の遺書については興味深く報じている。

検察は国家機関の中にある行政官だが、司法権にかかわることから身分が強く保証されているので、比較的時の政府の影響を受けにくい。一方警察は国家の治安を維持することから政府の指揮が当然及ぶ。国民に政治責任がある国務大臣の死を警察が一方的に処理するのはこの点で問題がある。

また、万人に都合のいい政治はありえないことから、行政の責任者は常に命がけだ。国務大臣は常に命が狙われると認識すべきで、SPはそのためについている。遺書があったから自殺だというのはあまりにも早計だ。たとえそうであっても、後々のために司法解剖はすべきだった。そうすれば、自殺であることはこの時点で動かぬ事実になる。司法解剖なしに葬ってしまえば、永遠に憶測が付きまとう。かたや、こんなに簡単に大臣の自殺を認めてしまうと、それこそ自殺を装い命を狙う組織が出てきてしまう。

さらに言うなら、国家権力という絶大な権力をもった政府と警察が一体となり、マスコミ操作を行って国民を誘導したら、再び戦争に加担する時がやってくる。権力を持つ側はより謙虚に国民に対して関わりのないことを証明すべきで、今回の処理は大きな流れに迎合した感じが否めない。松岡元農相が国家犯罪のターゲットになったとは言えないが、そうではなかったという調査や捜査は同様に全くない。権力が集中する国家機構の中にあって、ここら辺はあまりにも無防備な日本だ。


参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2007:「検視」

(07参院選 一票の力)公示目前、また逆風 与党陣営に危機感 久間防衛相辞任[2007年7月4日朝日新聞東京朝刊]

[軌跡・現職大臣の死](下)灰色処理、松岡マネー(連載) [2007年5月31日読売新聞東京朝刊]

[軌跡・現職大臣の死](上)「黙っていた方がいい」指示に従うしか…(連載) [2007年5月30日読売新聞東京朝刊]

自殺した松岡前農水相からの安倍首相あて遺書、内容を明かす 事務所費には触れず [2007年5月30日朝日新聞東京朝刊]

松岡農相自殺 宿舎に遺書など8通 国民へ「迷惑かけた」/東京・赤坂署調べ [2007年5月29日読売新聞東京朝刊]

自殺連鎖 弔問中、また衝撃 「談合解明進むのか」 公団元理事が自殺 [2007年5月29日朝日新聞東京夕刊]

公団元理事が自殺 東京地検、参考人聴取中 緑資源談合 [2007年5月29日朝日新聞東京夕刊]

疑惑噴出の果て、何が 説明避け続け 永田町・霞が関、騒然 松岡農水相が自殺 [2007年5月28日朝日新聞東京夕刊]

東京・赤坂の新議員宿舎入居100人に 批判一段落で引っ越し増 [2007年5月19日読売新聞東京朝刊]

ボロボロ、ヨロヨロ安倍政権 「問題なし」で済ますのか?ずさんな政治資金収支報告[2007年1月26日週刊朝日]

参考サイト:

イザ 「松岡利勝」

消防自動車等の緊急走行に対する理解と協力を!

何故、スキンヘッド飯島は、テレビ出演し松岡遺書を振りかざしたのか?

晴天とら日和

松岡農相:議員宿舎で首つり 遺書見つかる

松岡利勝農水相が自殺、議員宿舎で首つる

景山さん宛ての遺書

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