騙すつもりが騙された朝鮮総連 松岡元農相は本当に自殺だったのか。

今度の参議院選挙

岸田 徹 【岸コラ】
2007年7月3日(火)

安倍総裁と小沢代表安倍総理の腹は、最初っから決まっていた。年金時効撤廃特例法と社会保険庁改革関連法、改正国家公務員法の三法案を成立させて、参議院選挙に臨むことだった。

今度の参議院選挙は安倍さんの意向に反し年金問題が焦点になってしまった。4月に年金の納付記録が紛失している社会保険庁のずさんさが明らかになってしまったためだ。

本来、安倍さんは憲法改正や拉致問題を焦点に参議院選を戦いたかった。しかし、年金記録漏れ問題はどんどん問題が発展してしまい、年金納付の記録が真正なものに変更になった場合は時効は撤廃すると言わざるをえなくなり、そのための法案を参議院選挙前に成立させたかった。さらに、このような問題が起きたのは社会保険庁がルーズな運営をしていたからで、国民が納付した大事な年金資金は、社会保険庁から切り離す社会保険庁改革関連法をこれも選挙前に成立させたかった。これに、そもそも社保庁がルーズになったのも公務員が安易に天下りをするシステムができているからだとばかりに、公務員の再就職を一元的に管理するセンターを設置するための改正国家公務員法も選挙前に成立させたかった。

この三法案の成立で、安倍内閣は国民のために積極的に悪しき官僚と闘っているというシナリオで参議院選挙を戦うことになった。

これらの三法案は、数の上で独占状態の衆議院を難なく通過し、選挙を控えた参議院での対応が注目された。日本の国会は、イギリスのように議員が一堂に会する本会議で議論するのではなく、アメリカ式に各委員会が集中的に議論し採決されたものが本会議に上がり決議される。

三法案のうち、年金時効撤廃特例法と社会保険庁改革関連法は厚生労働委員会で審議される。委員長は自民党の鶴保康介氏で、6月28日夜に審議を終了し採決を行った。自民・公明の賛成多数で可決し、参院本会議に持ち込まれることになった。ところが、天下りの改正国家公務員法は内閣委員会が審議を行っていて、委員長は民主党の藤原正司氏。藤原氏は自民党の採決要請になかなか応じなかった。

そこで、自民党は6月30日未明の本会議で、藤原委員長に審議の中間報告を求める動議を出し、藤原氏が報告をすると、採決を求める動議を出して委員会の採決抜きで本会議で決議してしまった。藤原氏は中間報告の最中、時折ハンカチで目頭を押さえながら、「本院が法律製造会社の下請けであるかのような首相官邸の振る舞いに、唯々諾々と中間報告で対応する結論しか取りえなかった本院に無上の悲しみと怒りを感じる」と声を張り上げた(産経新聞)。

今の国会は、数がすべてを通していることを象徴するような結末だった。会期は7月5日まで残っていたが、この三法案の成立を待っていたかのように、今回改選になる参議院議員と各党幹部は選挙区に散っていった。

安倍さんは、自分が総理に選ばれたのだから自分が思うように政策を通し、その結果が駄目なら国民が選挙で審判をしてくれるという姿勢だ。一見立派な姿勢だが、その姿勢を通すために、数で法案を通し、有権者に対して「あなたのためにやった」と言うのだが、その裏には自分が通したい法案は審議をする必要がないという暴力がある。

国民が改革を望んだ結果、多くの議席が改革を推進する自民党を応援しているというのなら、数の論理で改革法案をどんどん通すのは国民が望むところだ。改革にはそのぐらいの荒技が必要だ。

しかし、今の状況はそうではない。

現在の衆議院は480議席のうち自民党が305と6割以上を占め、公明党の31議席と合わせれば、ちょうど7割の議席を確保している。国会は、衆参両院で構成されているが、憲法改正以外の法案では衆議院が優位だ。衆議院で可決された法案が参議院で否決されても、もう一度3分の2以上の賛成が衆議院であれば法案は可決成立する。3分の2とは66.7%のことで7割を自民・公明で占めている衆議院では、両党が仲たがいさえしなければ、どんな法案でも通る体制ができている。その気になれば、参議院の審議は全く不要なのだ。先の藤原氏の「法律製造会社の下請け」との発言はそれを物語っている。

この圧倒的な大多数は、小泉さんが行った郵政解散の結果だ(2005年9月)。しかし、その前の衆議院総選挙では思惑が外れ自由党と合併した民主党が議席を伸ばし、2大政党制の実現を想像させた(2003年11月)。その後の参議院選挙でも民主党が躍進した。

小泉さんは、首相就任時と退任時に絶大な人気を誇示したが、中だるみの時期が長いことあり、不景気、年金未納、イラク特措法、格差社会など小泉政権に対する不満は絶えることがなかった。これらの不満を吹き飛ばしたのが小泉劇場で、郵政民営化法案が身内からの造反で衆議院はぎりぎり通ったものの、参議院で否決されたのをきっかけに衆議院を解散した。参議院はもともと解散できない。だから、衆議院を解散するというのは無謀だったが、造反議員を徹底的に排除した小泉さんのガンとした姿勢に、多くの有権者が改革への強固な姿勢と誤解しのめり込んでしまった。

衆議院は4年に一度の改選だ。今度の選挙は解散しない限り2年後までないわけで、われわれは、自民・公明の数の暴力に常に怯える生活をあと2年も強いられる。

これを少しでも和らげるのが今回の参議院選挙だ。参議院は6年に1度の改選だが、改選される人は半数ずつと決められている。参議院の定員は242名だが、そのうちの半分の121名が6年に一度ずつ改選になる。なので、3年に一度は参議院選挙がある。前回は岡田民主党が躍進し、改選38議席から50議席に増やし、安倍幹事長の自民党は50議席から49議席に減らした。強引な年金改正法に対する国民の不満が民主党の勝利につながったのだろうが、小泉改革が一向に進まない不満もあった。小泉さんの人気は下降気味で、その手助けに拉致問題で人気があった安倍さんを選挙参謀の幹事長にして戦った。

民主党が躍進しても参議院を制することができなかったのは、もう半分の参議員が自民党多数だったからだ。この人たちは2001年の小泉首相誕生時の選挙で当選した人たちで、田中真紀子が色をつけた小泉人気に乗った参議院の先生たちだ。この先生たちが今回改選になる。すでに支えてくれた小泉さんは首相ではなく、小泉旋風で当選したと思われる先生たちは内心穏やかではない。その数64。一方の民主党は32議席で、もし、自民の64と民主の32が逆転になったら、民主党は参議院で113議席となる。過半数の121議席まであと8議席。公明、共産以外の政党でも、組めば過半数を制することができる。

自民党の数の暴走を止めるには、民主党の躍進がもっとも手っ取り早い。こうなれば、2年後の衆議院選挙では数の暴走が不利に働くことが分かり、衆議院でも数で突っ走る行為がなくなる。

分かってはいるのだが、民主党がいま一つバラバラで、小沢さんが安倍さんにやり込まれたりするのだから情けない。

しかし、【サカスト】があれほど反対した教育基本法の改正やいつの間に防衛庁が防衛省になる危ない国家戦略、法体系を無視した年金時効撤廃特例法など、とても一党独裁でないと通らない法律がどんどん通過してしまうのは本当に怖い。

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関連コラム:

年金法案が見せた「日本の国会は官僚が占拠」の根拠 (2004年4月30日【岸コラ】)

棄権は危険だ (2007年6月23日【サカスト】)

参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2007:「参議院」「衆議院」

[07参院選・激戦の行方](上)政権危機 首相、退路断つ(連載) [2007年7月2日読売新聞東京朝刊]

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参院選あす公示 投票率低下の恐れも/読売新聞社全国世論調査=特集 [2004年6月23日読売新聞東京朝刊]

年金改革法案廃案を求める 緊急アピールを発表/関西経済同友会 [2004年5月29日読売新聞大阪朝刊]

参考サイト:

2003年衆議院選挙特集

2004年参議院選挙特集

衆議院会派名及び会派別所属議員数

参議院会派別所属議員数

年金、社保庁法が成立 「中間報告」で公務員法

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