夕張市破綻は、日本経済破綻の序章か。 辞めさせてくれない柳沢厚労相に見る自民党のDNA

「亥年現象」の裏側

岸田 徹 【岸コラ】
2007年1月5日(金)

宮城県角田市 この地図の作成には、Microsoftエンカルタ百科事典2007の地図をベースにしています。今年は、4年に一度行なわれる統一地方選挙と3年に一度行なわれる参議院選挙が重なる12年に一度の年だ。この年がたまたま十二支の亥年にあたるので、この年の選挙の状況を「亥年現象」と呼んでいる。この年の参議院選挙は自民党が惨敗するとか投票率が低いとか言われている。

どうして、参議院選で自民党が苦戦したり投票率が低いかの理由は、統一地方選挙が春に行なわれるので、選挙疲れした地方議員が参議院選挙で応援に力が入らないというのが定説になっている。地方議員は地方の大物が多く、その人たちが自民党を支えているという理屈か。

「統一地方選挙」はなじみのある言葉だが、選挙制度ではない。戦後、今の憲法が施行される前に地方の議員や首長を選んだのが1947年の4月で、それ以降定められた任期の4年ごとに選挙が行なわれてきたため、4年に一度の選挙が続いているだけのこと。この間、地方自治体ごとに解散などの特殊事情がこのサイクルの年の4月以外に行なわれると、そこの議員や首長の選挙は違う年や月になってしまう。ただ、統一的にやった方が関心が高まるため、特殊事情が起きてもできるだけこの4年に一度の春に実施するようにしている自治体が多い。その点を考えれば、慣例制度と言える。

Webの百科事典であるウィキペディアによれば、今年の統一地方選挙は、知事選が13都道府県であるのに対し、地方議会は茨城、東京、沖縄を除くすべての道府県にあたる44道府県で行なわれる予定だ。政令指定都市の市長は札幌、静岡、浜松、広島の4市。同市議会は15市で行なわれる予定。ここのところ市町村の合併が多く行なわれ、地方議会は議席数が減っていることから、今年は激しい選挙戦が繰り広げられるのではないかと予想されている。

統一地方選挙は日本ばかりでなく、海外にも存在している。韓国では去年(2006年)の6月に統一地方選が行なわれた。韓国が不法占拠している竹島に不在者投票所を設置して、警備隊員ら55人が投票したとされているが、当然麻生外務大臣は領有権の侵害だと抗議した。竹島に投票所が設置されたのは初めてのことだが、与党のウリ党はそこまで国民の人気取りをしたものの、ソウルやプサンなどの主要市長選で全敗し、ウリ党議長は選挙の責任をとって辞任した。韓国メディアは当然のように「政権の国政運営に対する国民の不信、不満」が底流にあると分析(読売新聞)。

また、イギリスでも去年(2006年)の5月にイングランドの統一地方選が行なわれ、与党の労働党が各地で大量の議席を失った。イラク政策や閣僚の不祥事、極秘融資問題ですでに3期目限りで退陣を表明しているブレア首相だが、この選挙結果で早期退陣の声が高まってしまった。

統一地方選挙の結果は、必ず中央政府に影響を与える。日本でも同じだ。亥年の参院選挙は危ないと以前から言われていて、自民党は小泉人気におんぶしたかったのだろうが、小泉さんは相当前からの去年9月の任期満了で再出馬しない意向を表明していた。しかたなく、最も人気のある安倍さんを総裁にして、この選挙戦を乗り切ろうとしている。組織力がなくなれば人気に頼りたくなるのは世の常だ。

昨日(1月4日)、宮城県の佐藤清吉角田市長(77)が、次期市長選には出馬しないと表明した。角田市長は今年の統一地方選の市長選挙には予定がされていない。来年の8月のこと。まだ任期満了までに1年半ある。どうしてそんなに前から引退を表明したのか。

「まず現職が辞めることを宣言しないと、後継者が育たない。1年半あれば、市民からこれぞという人が自然に出てくると思う。現職の動向が決まらないとバタバタ選挙になり、宣伝のうまい人が当選してしまう」と理由を述べた(河北新報)。

佐藤清吉さんは、宮城県議会議員を4期務めた後、全国森林組合連合会の会長になった。この時、ガットのウルグアイラウンド合意で日本が5年で50%の林産物関税の引き下げを行なうことに疑問を呈する投書を読売新聞にしている(1994年3月)。論点は非常に明快で、読んでいて気持がいい。内容をかいつまんで言えば次のとおり。

地球環境の劣化は森林と深くかかわっている。地球環境の保全には森林の保全・培養が不可欠だ。日本は国土の67%が森林で世界有数の森林国だ。その森林は、環境保全機能を果たしており林業白書によれば平成3年時点でその効用が39兆円あると試算されている。環境保全機能は植え付け、保育、間伐等の林業生産活動を通じて初めて十分に発揮される。一方、日本の林業経営は安価な外材輸入で投資利回りが0.9%にまで低下し、林家の経営意欲が減退し、このままでは森林の適正管理がなされず、環境保全機能が損なわれる恐れがある。日本は外材依存度75%と十分に市場開放された世界一の材木輸入国である。特にアメリカからは日本の木材需要量の27%を満たし、国産材のシェアを上回っている。そのアメリカから更なる市場開放を迫られるのは心外である。こうした中でウルグアイラウンドの実質合意で日本が今後5年間で50%もの林産物関税の引き下げを行なうことになったのは日本の林業を一段と厳しい立場に押しやる。我々林業界はウルグアイラウンドを成功させるためにやむなくこの条件を受入れたが、林業の保全と林業の産業としての維持の両立に全力を挙げる難しい立場に立たされている。あたかも日本の住宅価格が高いのは日本の木材が高いためだとの作為的な暴論があるが、これは事実に反するものだ。例えば林業白書によれば土地代を除く木造住宅価格の木材費の割合は13.7%に過ぎない。これに安い外材に関税をかけなくすれば住宅価格が安くなるような意見があるが、この関税の影響は0.1から0.2%だ。日本において住宅取得が困難なのは何より土地代が高いところにあることは国民の誰もが認めるところ。日本の林業はすでに存立の限界水準にある。森林の環境保全まで奪われるような貿易の自由化だとするならば何のためにあるのかを問いたい。

この投稿がどれだけ林業を営む人たちの心を撃ったかは想像でしかないが、恐らく相当なものだったはずだ。

この投稿の2年後、佐藤清吉氏は66歳で角田市長に初当選した。市の総務部長だった58歳の無所属候補を抑えての当選だった。4年後の2期目は無投票当選。その4年後の前回は、元県議の佐藤勝彦氏を破り3選を果たした。佐藤清吉氏に佐藤勝彦氏。この2人は因縁の対決だった。

舞台は前回の統一地方選だった。この地区は、小選挙区制の前の中選挙区で旧衆院宮城一区。保守王国宮城で、三塚博氏と愛知和男氏の対立的地盤だった。愛知和男氏は愛知揆一(元大蔵大臣)の養子で地盤を引き継いだ。小選挙区になり三塚氏は宮城3区に愛知氏は宮城1区に住み分けが行なわれていたはずだった。

自民党の大物三塚博氏の宮城3区がある県議角田選挙区で、三塚氏の側近で県連総務会長の佐藤勝彦氏(当時59)が立候補した。しかし、これに無所属の新人(49)が選挙戦を挑み、勝彦氏は敗れたのだった。(2003年4月)

無所属の新人候補は、中学・高校の同級生である農業を営むO氏のところへ行き、「県議選に出たい。市長の理解を得たい。一緒に行ってくれ」(読売)と申し出て、市長の清吉氏のところにあいさつに行った。O氏は「うちは親の代から愛知派」を自認していて、田植えには愛知氏の妻(愛知揆一氏の娘)と長男の治郎氏(参議院議員)が長靴姿で駆けつける。選挙区は三塚氏のところだが、気持は愛知氏だというのだ。

一方、清吉氏は、新生党がのろしを上げたときに立ち上がった愛知和男氏とともに新生党県連を結成したメンバー同士だった。(愛知氏はその後自民党に復党)

自民党県連は勝彦氏支持の一本化を訴えたが、長年三塚派と対立構図にあった愛知派は応援できず、愛知氏自身も党より愛知応援団を大事にしたようで、新人候補を側面応援したようだった。

敗れた勝彦氏は翌年(2005年)の7月角田市長選に臨んだが、清吉氏は公明党の推薦もあり10,529票、勝彦氏7,425票で敗れた。このあとすぐ(10月)に行なわれた宮城県知事選挙では、清吉氏が推す村井嘉浩氏(自民党推薦)が当選。これで、清吉氏のラインとしては県議、市長、知事と一本化したのだが、これで中央とのパイプも見えてくる。地方の選挙は、清吉氏が市長になる前に読売新聞に投稿した内容に反して実に政治的で、綱渡りの連続と言える。

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参考資料:

任期満了1年半前 佐藤・角田市長が引退表明 [2007年1月4日河北新報]

初の民間出身、伊藤副知事が登庁=宮城 [2006年7月19日読売新聞東京朝刊]

[社説]韓国地方選挙 底流にある盧武鉉政治への不満 [2006年6月2日読売新聞東京朝刊]

「竹島投票所」韓国に抗議 統一地方選で設置 「領有権を侵害」/日本政府 [2006年6月1日読売新聞東京朝刊]

英地方選 労働党が大敗 内閣改造で初の女性外相 [2006年5月6日読売新聞東京夕刊]

知事選 仙台市長「村井氏支援」 浅野知事と対決構図=宮城 [2005年10月20日読売新聞東京朝刊]

角田市長に佐藤清吉氏が3選=宮城 [2004年7月12日読売新聞東京朝刊]

角田市長選 現・新一騎打ち=宮城 [2004年7月5日読売新聞東京朝刊]

[みやぎの自治]第4部 10年の歩み(1)「党か人か」(連載)=宮城 [2003年6月24日読売新聞東京朝刊]

激戦の残像 検証・宮城県議選(中)/知事与党/影落とす「副知事人事」 [2003年4月17日河北新報]

角田市長選 佐藤清吉氏が無投票再選=宮城 [2000年7月17日読売新聞東京朝刊]

角田市長選あす告示 無投票の公算=宮城 [2000年7月15日読売新聞東京朝刊]

角田市長選 佐藤市長が再選出馬を表明=宮城 [2000年3月23日読売新聞東京朝刊]

角田(宮城)市長選 元県議の佐藤清吉氏が初当選 [1996年7月22日読売新聞東京朝刊]

[政治考現学]投票率低下で点滅“赤信号” 最低の50%割れ寸前 [1995年7月23日読売新聞東京朝刊]

[編集手帳]盛り上がらない参院選 [1995年7月7日読売新聞東京朝刊]

[論点]環境損なう過度の外材輸入 佐藤清吉(寄稿) [1994年3月23日読売新聞東京朝刊]

新会長に佐藤清吉・宮城県連会長/全国森林組合連合会 [1991年6月26日読売新聞東京朝刊]

参考サイト:

あぶくま農学校

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