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どうして、そんなに下がる日本の株価

岸田 徹 【岸コラ】
2006年6月9日(金)

日本の株は、昨年の秋ごろからどんどん値上がりした。本日の日経新聞によれば、値上がりした原因は3つだと言われている。カネ余り、景気回復持続期待、小泉改革。ところが、ここに来て4つの不安要素が襲いかかり、日本の株式市場を揺さぶっているという。その4つとは、投機マネー収縮、景気減速の懸念、バーナキン・ショック(後述)、構造改革の不透明感。

これに世界同時株安が大きく影響し、日経平均株価は1万5千円を下回り、ついに小泉さんが就任した当時の水準にまで下がってしまった。いったいこの株価、このまま下がり続けてしまうのだろうか。

株は、上昇基調のときは買った株を担保に金を借り、そのお金で再び株を買うという連鎖が広がる。だから、どんどん株が買われ、さらに株価が上がるという側面がある。一方、下降基調のときはその逆で、担保にしていた株が下がるので担保が足りなくなり、追加で担保を入れるよう要求される。他に担保はないから、損をしても担保の株を売り精算していくようになる。担保の株が売られると、売られる株が増えるからどんどん株価が下がっていく。

こういうテクニカルな部分に加え、心理的な要素が大きく加わる。小泉改革の勢いのなさだ。小泉改革の旗印だった小さな政府の規制緩和はすっかり音なし。郵政民営化をやり遂げた後は、このまま総理退任まで何もしないのではないかという空気が蔓延している。そこに、ホリエモン逮捕に村上逮捕。規制緩和で新たな世界を作ろうとした両人がともに小菅に収監されたショックで、個人投資家はどうしていいか分からずに立ちすくす。

さらに、「バーナキン・ショック」が世界の市場の頭をすっかり押さえている形だ。バーナキンはアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の議長だ。以前グリーンスパン氏がやっていた役職だ。日本でいう日銀総裁。グリーンスパン氏はアメリカの好景気を戦後最も長く支えた立役者と言われたカリスマ的存在だったが、今年の1月末で退任した。

その後を継いだバーナキン氏がアメリカのインフレ傾向を気にかけて、どんどん政策金利を上げている。これがバリバリ響いているのだ。

インフレは景気が過熱して物価が上がることだが、行き過ぎは経済を取り返しのつかないものにしてしまう。インフレを押さえるには、金利を上げるのが普通だ。景気の過熱を抑えるのにお金を借りにくくする点と物価が上がっているのに合わせて金利を上げないと貯蓄が目減りしてしまう点があげられるが、いずれにしろこれらは国内の物価安定策だ。

これが、国際的な資金移動ということになるとちょっと別な話になる。金利には貯蓄と株式投資に与える影響がある。金利が上がれば景気の過熱が抑えられるので、株にお金が回らなくなる。また、リスクを負って株に投資しなくても金利が上がれば銀行預金をしたり国債などの債権に充てたりした方がいいという心理も働く。そのため、金利が上がれば株は下がる傾向にある。

バーナキン氏は金利を上げる政策をとっているので、株式市場は「バーナキン・ショック」になっているのだ。

金利を上げるとか下げるとかは、銀行が束になって行なえば意図的にできることだ。各国の銀行はその国の中央銀行と密接に関係している。アメリカではFRBだし、日本では日銀、ヨーロッパでは欧州中央銀行(ECB)だ。この金利政策が日本とアメリカ、ヨーロッパでは違うのが今問題になっている。

アメリカのFRBでは金利の誘導を年5%にしている。ここ半年ほどでどんどん上がったものだ。また、ヨーロッパのECBも昨年末より徐々に上げてきて、今は年2.75%の水準だ。一方、日本はどうかというと日銀のゼロ金利政策で2001年の9月以降、年0.10%が維持されたまま。

一瞬にして世界を駆け巡る現在の資本市場から考えれば、日本でお金を借りて、アメリカやヨーロッパで貯金をすれば、それだけで儲かってしまう現象が起きている(実際には、通貨の交換をしなくてはならないので、円からドルに換える人が多ければ、ドルが高くなり、思ったほどのドル預金はできないので、儲けることは簡単ではない)。さらに、アメリカの株式市場や債券市場には、日本の安い金利で資金を調達したそのお金が投資されていると言われている。

日本で調達した円は、アメリカで投資のためにドルに換えられる。そのためドルに換えたい人が多くなるので、ドルが高くなる。ということは円が安くなるということだ。日本は輸出国なので円安だと利益が上がる会社が多く、日本の株価も上がっていた。

ところが、あまりにもアメリカの金利が上がるので、アメリカの株式市場が危なくなってきてしまった。景気が減速するのではないかという不安と金利が上がれば株よりは債権の方がいいという理由からだ。世界の経済は市場の大きいアメリカに影響されている。そのため、今まで絶好調とされたインドやその他の東南アジアの国々の株式市場も1割程度下げている。

日本の会社の景気回復は大手の企業を中心に順調だ。銀行もバブル期の不良債権処理を終えた。本来なら、公定歩合を上げなくてはいけない時期だ。インフレが懸念されるし、第一、老後のための資金が100万円を預金しても年に千円も金利が付かないようでは話にならない。銀行救済と景気回復のウルトラCのためにゼロ金利政策を取っていたのだから、銀行の好決算と景気の回復が見えてきた今は当然ゼロ金利政策は止めなくてはならない。日本もヨーロッパやアメリカ並みの金利水準にするのが順当だ。

ところが、これがなかなか踏み切れない。日本で金利が上がると、世界に貸していたお金が一斉に返ってくる。すると円で返済するので円が買われ、円が高くなる。すると日本は輸出国なので輸出製品が高くなり、多くの会社が儲からなくなる。すると景気が悪くなる。さらに、金利が高くなると債権の利回りも高くなる。国債の利払い負担が増えて、さらに国債の残高が増えてしまう。

こういう国内要因に加え、どうも日本は資金の供給国という位置付けが世界経済の中でされてしまっていて、安い金利で得られる資金を求める圧力がアメリカからかかっているのではないかと疑ってしまう。

しかし、経済の常識からすれば、カネ余りでゼロ金利は景気回復基調にある日本をおかしくする。すでに日銀は金利政策を見直すメッセージを何度となく発しているし、資金もどんどん締めている。30兆円あった日銀の当座預金は10兆円にまで下がった。この当座預金残高は、日銀が各銀行が保有する国債などを買って入金したもので、このお金を使って銀行に融資を増やしてもらい景気回復に充ててもらおうとしたものだ。これを今度は逆に国債などを売って、残高を減らしている。

これらのことを考えると、日本の株価は当分上がりそうにない。しかし、そんなことで足踏みをしていたのではいけない。ここは、次期首相候補も巻き込んで、規制緩和政策をどんどん推進すべきだ。それに、忍び寄る増税観測も一掃しないといけない。年金も着実に我々のものになるという安心感も必要だ。東南アジアとの関係はアメリカ頼みの経済環境からの脱出の第一歩ともなる。今から次期首相候補は政策論争をどんどんやって、日本のビジョンを展開し、株価低落に歯止めをかけないといけない。

結局、株価は日本の力、我々一人ひとりの国民の力なのだから、我々がどういう国にしたいのかを積極的に論争することが、遠回りだが、株価を上げる残された道だ。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「公開市場操作」

日経平均「終値1万5000円割れ」米景気の減速懸念 日米欧同時株安 [2006年6月9日日本経済新聞朝刊]

日本株揺さぶる4要因 個人・海外勢、損失穴埋め [2006年6月9日日本経済新聞朝刊]

東証1万5千円割れ 米景気の減速懸念背景に 村上容疑者逮捕も影響(解説) [2006年6月8日読売新聞東京夕刊]

FRB議長、インフレに警戒感 米で追加利上げ観測高まる [2006年6月6日読売新聞東京夕刊]

株安、世界連鎖の懸念 東京1万5500円台 新興国市場も下落 [2006年5月24日読売新聞東京朝刊]

米株安 バーナンキFRB議長と市場の呼吸、合わず [2006年5月19日読売新聞東京朝刊]

[考現学]グリーンスパンFRB議長、4期目続投へ 米の好況導くカリスマ [2000年1月16日読売新聞東京朝刊]

参考サイト:

公定歩合の推移

日銀当座預金増減要因と金融調節

西暦・元号・日経平均推移対照表

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