こうする、アイフル。 日米軍事同盟をいまさら結んでいいのか。

小さな竹島の大きな問題

岸田 徹 【岸コラ】
2006年4月27日(木)

このイラストには、エンカルタ総合大百科の地図が一部に使われています。今月の22日、日本から外務次官がソウルに出向き、韓国の外交通商省の第一次官と協議をし、竹島問題を棚上げにしてきた。

棚上げした妥結の内容は、こうだ。韓国側は6月にドイツで行なわれる海底名称に関する国際会議で、竹島周辺の海域に韓国名称を提案することはしないが、日本側も竹島周辺で日本が行なおうとしていた海洋調査を中止するというもの。さらに、竹島問題が絡む排他的経済水域の境界画定の交渉を両国で5月中に行なうとした。(読売新聞)

ドイツで行なわれる国際会議というのは、「海底地形名称小委員会」というもので、ユネスコの海洋学委員会などが行なう。そこが作っている海底地形地図を今回改訂することになったので、国際会議を開いて、海洋学の専門家に名称が妥当かどうか検討してもらおうとしている。名前を付けるのは、海の中の山とか溝などだ。その名称を各国が独自のデータに基づいて会議に提案することになっている。

これが、この海底地形名称小委員会で認められると、海底地形の名称が海底地図に書き込まれることになって、実際に世界各国で使われることになる。例えば、世界で一番深い海中の溝はマリアナ海溝で、日本の近くにも日本海溝がある。これらの名称はまだ付いていないものが多くあり、海中の山にあたる海山は世界全体で2千ほどが確認されているが、調べれば数倍はあると言われている。

韓国は竹島周辺の海洋調査をしてまだ名前が付いていない海山など10箇所程度を発見したらしい。それに韓国語の名称を付けて国際会議に提出しようとしていた。

この動きを察したのが日本の海上保安庁で、日本も海洋調査をして海底地形を把握した上で日本語名を付けないと先を越されると主張したようだ。日本では竹島周辺の調査を30年ぐらい行なっていない。

竹島は韓国では「独島」と呼んでいるが、世界地図では「竹島」が世界標準だ。韓国は独島を韓国の領土だと主張しているので、それを世界的に認めさせるため、周辺の海底地形の名称を韓国名にしたいようだ。

この動きを棚上げするため、日本側は海底調査はしない代わりに韓国側も韓国名の提案をしないという妥結を見たわけだ。

ところが、昨日(4月26日)には韓国の交渉相手だった柳明桓外交通商第一次官が、ドイツで行なわれる名称の国際会議に韓国名の提案を見送ったとは言っていないと言い出し、国会で「海洋調査と地名変更問題を関連付けているのは日本側であり、われわれは受け入れられない」(産経新聞の共同電)と言い切っている。

盧武鉉(ノムヒョン)大統領も前日(4月25日)のテレビ演説で、竹島の領有権問題に関し「韓国政府は対応方針を全面的に再検討する」(読売新聞)と述べ、靖国問題と歴史教科書問題とともに姿勢は崩さないとアピールした。

竹島は、日本と韓国との間にある日比谷公園ほどの島だが、島と言えるかどうかは疑問な点もある。岩が突き上がったような地形だからだ。竹島と一言で言うが、小さな地形は東島と西島に別れる。しょせん人は住めない領有権主張だが、排他的経済水域を考えれば、漁場の面でも地下資源の面でも、両国にとって領土にしておきたい場所であることには間違いない。

しかし、客観的に見て、竹島を韓国の領土だと主張するのには無理がある。日本は明治38年に竹島を島根県所管と定めていて、韓国はそれを日露戦争時に韓国から奪ったと主張している。しかし、その事実はない。

竹島はずっと日本の領土だったが、第二次世界大戦直後、GHQにより日本の領有権を棚上げされた時期があった。その間に韓国が李承晩ラインを制定し、勝手に竹島を自分の領有側に線引きしたのだった。その意味からすれば奪ったのは韓国側だ。

しかし、それには絶妙なカラクリがあった。李承晩ラインは戦後日本から独立した韓国で初代大統領になった抗日運動家の李承晩が強引に海洋上に引いた線だ。その線の中に他国の漁船の立入禁止を一方的に宣言したのだった。これには、韓国の外交戦術があった。

李承晩ラインを宣言した3ヵ月後に日本の戦後体制をどうするかのサンフランシスコ講和条約が発効することになっていた(1952年)。その中で、日本は日本の領域について、(1)朝鮮の独立を承認し、(2)台湾、澎湖島、千島列島、南樺太を放棄することになった。ところが、講和条約締結前の構想では、放棄する領域に竹島も入っていたのだが、日本の外交努力で竹島は放棄する領域から外れたようだ。その動きを察知した李承晩がサンフランシスコ講和条約が発効する前に李承晩ラインを宣言し、竹島を自国の領土だと宣言したのだ。

この李承晩ラインで日本漁民はどれほど泣かされたことか。日本政府は、竹島は放棄する領域になっていないことから、漁民たちに竹島周辺でも漁をするように推奨した。ところが、韓国側は、李承晩ライン内に入ると日本漁船を拿捕したのだった。

拿捕された船は328艘、抑留者は3,929名、死傷者は44名だった。これらの暴挙に、日本は孤立無援だった。日米安保条約があってもアメリカが援軍を出して抑留者を救出してくれることはなかったのだ。

この惨状は、日韓条約が結ばれる1965年まで続いた。日韓条約は岸首相の時に結ばれたものだが、岸さんの出身は山口県で、竹島のある鳥取県の隣だ。ともに拿捕された漁船の多いところだ。当然のことだが、岸首相のもとには抑留された漁民の一日も早い帰還を願う家族の陳情が続いた。

この願いが最優先された交渉の結果が日韓条約締結ではなかったのか。李承晩ラインの撤廃と抑留者の帰還の代わりに、日本は日本国内に収監されていた在日韓国人と朝鮮人の犯罪者472人を釈放し、在留特別許可を与えた。

さらに、恐らく戦後補償と引き換えに日本統治時代の在韓資産を放棄した。一説では、当時の日本人の在韓資産は韓国資産の8割を占めていたとされている。財閥の資産も相当数あったから当然かもしれない。

日本はこんなにひどい目に合っているのに、竹島問題については韓国政府が独善的に事を進め、韓国国民はそんな韓国政府を支持している。日本政府は問題の棚上げばかりに努力するのはなぜなのか。

考えられるのは、2つ。拉致問題とも関連するが、ひとつは両国議員同士の馴れ合い。もうひとつは、学校教育と報道姿勢の違いだ。

特に、学校教育では韓国の教科書が一貫して韓国の領土を侵害されたと記述しているのに、日本の教科書は韓国も領有権を主張しているとの記述が多い。この差は日韓の歴史の違いでもある。李承晩ラインを宣言した李承晩は日本の占領下にあった朝鮮での反日戦士だったので、当然のことながら、日本がいかに朝鮮民族にひどいことをしてきたかを徹底的に宣伝し、子供たちにも教育した。その体制で育った世代が、今の韓国大統領の世代で、頭から日本は悪いと教育された人たちだ。

これは、マスコミの報道にも通じるものがある。

一方日本は、中国、韓国から占領時の悪政を非難され続けてきたので、両国が言っていることは正しいのではないかという心理が働く。

しかし、どちらの国も相手の非難について、それを利用する国内勢力がいるから問題が複雑になり、解決がいつまでたってもできないのではないか。これは大きな問題だ。

李承晩ラインが引かれ、多くの日本漁船が非合法に拿捕された。抑留された4千人もの漁民に何もできなかった日本の姿を、恐らく北朝鮮の政権はじっと見ていたに違いない。北朝鮮はそれを見て日本人を拉致しても問題にはならないと踏んでいたのではないか。

日本には解決していない領土問題が他にもある。中国、台湾との間で三つ巴になっている尖閣諸島、それにロシアとの間にある北方領土だ。これらの国々は、日本の竹島問題に対する対応を見ながら領有権を主張しているはずだ。

1954年以降現在に至るまで竹島は韓国の警備隊によって占拠されている。アメリカとの間でも結ばれたサンフランシスコ講和条約で竹島は日本の領土であることが認められているにもかかわらず、韓国政府によって占拠されている。これは少なくとも日米間では領土侵害だとの認識がないとおかしい。場合によっては、日米安保条約第5条の規定によって日米がともに軍事行動に出るという事をちらつかせても不思議ではない。それなのに、日本政府は日米安保条約について何も言わないという事をアメリカ政府は事実として認識しているはずだ。

日米安保条約は日本の領土の一部が他国によって占領されても日本はアメリカに助けを求めることはないと解釈されるものに事実上なってしまっている。

竹島は小さいがここから派生される問題は日本を揺さぶるほど大きい。

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このコラムに対する【サカスト】の論評

参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「竹島」「韓国」「サンフランシスコ講和条約」「日米安全保障条約」「尖閣諸島」

海底地名「見送り合意ない」 [2006年04月27日 産経新聞東京朝刊]

「領土、断固として対応」 韓国・盧大統領が対日特別談話 [2006年4月25日 読売新聞東京夕刊]

竹島海域調査 日韓が妥結 韓国の地名提案見送り 日本は測量を当面中止 [2006年4月23日 読売新聞東京朝刊]

政府淡々「大人の対応」 竹島周辺の海洋調査 国際法前面、世論に訴え [2006年04月21日 産経新聞東京朝刊]

竹島周辺の海洋調査 海底地形図改訂 韓国すでに独自名称 [2006年04月20日 産経新聞東京朝刊]

高校教科書検定 「領土」厳格化、鮮明に 政府見解を反映 [2006年3月30日 読売新聞東京朝刊]

【国境は守られているか】第1部(8)失われつつある領土「竹島」 [1997年05月27日 産経新聞東京朝刊]

【沈黙の大国】(183)国の守りを考える(2)忘却の島 [1993年10月14日 産経新聞東京朝刊]

参考サイト:

竹島領有権問題に関する隠岐の島町見解

下條正男講演「領土問題の現状と課題」

李承晩ライン

平和条約の発効とその影響

日韓条約と李承晩ラインでの日本人拉致

三菱広島・元徴用工被爆者裁判の争点

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