小沢さんが、にらんでいた先 小さな竹島の大きな問題

こうする、アイフル。

岸田 徹 【岸コラ】
2006年4月19日(水)

お金の貸し借りは一般的な現象だと思い込んでしまうが、実は、そうでもない。日本人がコツコツと貯めている銀行の定期預金の額がだいたい200兆円。サラ金の額がだいたい20兆円と言われているので、日本全体からすればサラ金の額は少ない。200万円の定期預金をしている人がサラ金から20万円借りたとしても問題にならないのと同じ感覚だ。

ところが、問題は指摘するまでもなく、コツコツと定期預金を積んでいる人がサラ金からお金を借りている場合は少ないから問題になるのだ。定期預金をしている人とサラ金からお金を借りている人がほぼ別人だというのが、サラ金問題を解決できない根本的な問題だ。

なぜなら、法律を決めたり、サラ金業を経営する人は、定期預金を組む方の人で、サラ金地獄を経験していない。だいたい、こんなような人たちが世の中の支配層(エスタブリッシュメント)になっているから、まともな法律ができないで、いつまでたってもサラ金問題が解決しない。サラ金規制法は、サラ金をあたかも規制するような法律に思えるが、実際は、業者寄りの法律だ。

日本にとっても世界にとっても、社会的な制度として個人にお金を貸す商売は歴史が浅い。日本のサラ金は1960年代に生まれたという団地金融が元だし、アメリカのコンシューマー・ローンも1900年代に入ってから生まれたものだ。

日本では、住宅ローンを最初に扱ったのは銀行ではなく政府の住宅金融公庫だった。1950年のことだから、庶民が住宅建設にお金を借り出してからまだ50年ぐらいしかたっていない。銀行は、それよりずっと後になってから住宅ローンを扱い出した。

銀行が、住宅ローン以外にお金を貸し始めたのは20年ぐらい前のことで、武富士やアコムやレイクが儲かっているのを横目で見ながら、監督官庁の大蔵省が、金融の自由化が始まったらちゃんと儲けないと大蔵省はもう護送船団しないぞと脅し始めてからのこと。

実際のところ、貸す方も借りる方も成熟の域には到底達してはいない。

そんな環境の中でアイフルが行政処分を受けた。アイフルはいったい金融監督庁になんて怒られたのか。その理由は、次の五つ。

(1)諫早店で、お客から委任も受けていないのに委任状を取って、公的証明書を取った。(貸金業法第13条第2項違反)

(2)五稜郭店で、精神上の障害があると家庭裁判所から認定されたお客に、支店長が取立てを行なった。(貸金業法第13条第2項)

(3)カウンセリングセンター九州で、正当な理由なくお客の勤務地に電話をし、お客を困らせた。(貸金業法第21条第1項違反)

(4)西日本管理センターで、お客の母親に督促状を発送し、数回にわたり電話をして母親にお金を返すよう要求した。(貸金業法第19条違反)

(5)新居浜店で、お客に第三者からお金を借りて返済するよう要求し、さらに妻と母親にも返済交渉に参加させるよう迫った。(貸金業法第21条第1項違反)

これらが今回アイフルが処分を受けた理由だ。ひどいと思われる方もいるだろうが、お金を貸したのに返してもらえない方の立場からすれば、このぐらいやるかもしれないという常識が日本にはあるのも事実だ。

お金を借りた側も、「委任状」とだけ書かれている白紙委任状に平気で署名捺印する人もいれば、金を返さなければ、会社や親のところに取立屋が来るだろうなとびくびくする人もいる。これは、金貸しビジネスが成熟していない証拠だ。

貸金業法(「サラ金規制法」とも呼ばれているが、正式には「貸金業の規制等に関する法律」)ではこれらのことはすべて禁止している。現在の法律では、午後9時から午前8時までは自宅に取り立てに行ってはいけないことになっている。そればかりか、誇大広告もいけないし、高金利(年109.5パーセント以上)の契約については無効だとも規定しているし、暴力団は貸金業者になれないし、法律をちゃんと勉強した者が貸金業に従事しなくてはいけないことも規定している。さらに、業者は協会を作って、苦情の受付もしなくてはいけないことになっている。

事細かく規定はあるのだが、まったく役に立っていない。それは、どうしてか。理由は簡単。法律の趣旨がまったく理解されず、業界からの目で、役人が法律を作ったり改訂したりしているからだ。本当にサラ金地獄で苦しんでいる人のための法律にはなっていないのだ。

本来のサラ金規制法は、貸し過ぎ防止のために作られたもの。もちろん、悪質な取立てを規制することも大事な要素ではあるが、どうして悪質な取立てが行われるかと言えば、返せない人に返せと迫っているからなのだ。返せる人に対して罵声を浴びせているわけではない。返せない人に恐喝まがいの行為をしているから問題なのだ。

なんで返せないのかと言うと、返す当てがないのに借りているから返せないのだが、貸す方も返せるかどうかしっかり審査しないか、あるいはひどい場合は、返せないと分っていて貸すから当然返せないのだ。

そこで、自分では返せないので、誰かに借りて返せと迫るから問題になる。別に、紳士的に回収を迫れば合法だというわけではない。怒鳴ってはいけないと言う訳でもないのだ。本来、商売としてお金を貸すのだから、申し込んできた人に、本当にお金が返せるかどうかをちゃんと審査した上で貸しているはずだ。その審査が甘かったり、見込み違いをしたりしたら、本来貸した方も十分責任がある。それを一方的に、「借りたものはきちっと返すのがまともな人間だ、お前なんか生きている価値がない」と迫るのは最初から自分は責任をもって審査していないと言っているようなものだ。事業としてやっている資格はない。

消費者サイドに立って物事を考えれば、そんなお金は、返さなくて当然との結論が出るはずなのだが、そういう法律がなかなかできない。

お金が返せなくなったら、日本では自己破産の申請をして借金をチャラにする制度がある。ところが、この法律行為は手続きが結構大変で、日本人なら誰でもできるレベルにはなっていない。

自己破産ができる条件は、(1)借金の額が年収を超える、(2)失業して収入がない、(3)処分する財産がない――のいずれかの場合だ。裁判所に申立てをし、借金の一部でも返済をするという誠実さを示せば、借金はチャラになる。自己破産をしたからって、人権にかかわる権利がなくなるわけでもなく、選挙権もちゃんとある。弁護士や会社の役員など一定の職には就けないだけが社会的な制裁だ。最大の苦痛は自宅などすべての財産の提供が必要になることだ。

誰でもができない理由は3つあって、自己破産は破産債権確定手続を行なう一種の裁判なので、通常は弁護士が必要だという点で、借金苦でお金がないのに、弁護士費用を40万円ほどを捻出しなくてはいけないのと、やはり弁護士と一応の話ができる常識が必要だという事。もう一点は、その借金が浪費性のものや賭博によってできたものではだめだという点。つまり、いつの間にか借金が膨らんで、どういう状況になっているのか分からない人たちにはとても利用できない制度である点は否めない。

そのため、最近は自己破産の件数が多くなってきてはいるものの、救済の決定的な解決方法にはいまだになっていない。

アイフルがとがめられた行為に、勤め先に電話をしたり、妻や親に言うぞと脅したり、第三者から借りて来いと迫ったりしたものがある。もし一般の人が貸したお金が返ってこなかった場合思いつく手段がこれらのものだ。しかし、法律ではこれらの行為は貸金業者には禁止している。なぜ、禁止しているかいうと、考えるとこうだ。

これらの行為は、結局他の業者から金を借りさせて、自分のところが助かる結果になるだけだからだ。お金を借りた人は再び別の業者から脅されるだけで、何の解決にもならない。しかも、その場合は、すでに自分はお金を返していないという情報が信用情報センターにインプットされているので、次に貸す業者は高い金利でないと貸さない。借金の額が雪だるま式になる原因となる。そうなる前に、何とかすべきだから、「他から借りて来い」という取立てを禁止している。

しかし、貸金業者が業容拡大を狙うのなら、金を借りている人にどんどん貸す方が楽なのだ。貸した先がパンクしそうになった瞬間、別なところから借りさせて、自分の分を回収する――これがプロの腕の見せ所となっている。

だいたいサラリーマンが普通に借金を返せる額は、年収の3割か50万円までと言われている。日本の人口の1割がサラ金を利用して50万円を借りたとしても、その合計はたかだか5兆円だ。現在の20兆円という残高はすでに飽和状態だと言える。それを拡大しようとすれば、返せない額を貸すことに走ってしまうのは当り前の話。

そんな機関車が全速力で走っているときに、夜から朝は取り立ててはいけないとか、奥さんに知られないように取り立てなくてはいけないとか、会社には電話をするななどと言って止める方が無理。いくら法律を作っても、取立屋に警察官が同行しているわけではない。厳しい取立てを禁止することで、サラ金業者の暴走を止めようとしても、実務的には不可能なのだ。

それより、返せない額を貸しているのだから、そちらの方を厳しく禁止し、返せないものは返さなくていいという法律を作った方がよっぽど上手くいく。

そうすれば、お客が借りに来た場合、はたしてこの人はいくら借りているのかが気になってくる。自分のところで借りて、他のところに返して、ドロンしちゃうのじゃないかと心配が先に来るからだ。同業のサラ金からいくら、クレジット・カードでいくら、銀行からいくら借りているのか、この情報がなければ、危なくてお金を貸すことはできない。

【岸コラ】ではたびたび問題にしているが、現在は、これらの情報を一元管理しているところがない。サラ金業界とクレジット・カード業界、銀行業界はそれぞれ別な信用情報センターを運営していて、各センター間で返済状況がどうなっているのかの情報のやり取りは行なっていない。これが、そもそも貸し過ぎの原因だと随分前から指摘されているのだが一向に改善されないのは、監督官庁がバラバラで、指導的に一元化しようとする人が誰もいないからだ。監督官庁も業界も自分のところのエゴばかりが先行しているから一本化できない。その犠牲者が消費者なのだ。

規制の法律をいくら厳しくしても、また、いくら信用情報センターを一元化しろと叫んでも、誰も何もしないで、サラ金地獄は解消しない。もうこうなったら、消費者の立場になって「返せない金は返さなくていい」という一行を法律に加えなければ解決しない状況だ。そもそも借金というのはそういう性質のも。一生を台無しにして返すべきものではない。

もし、法律で明確に「返せなくなったら返さなくてもいい」とうたえば、貸す方もどうやって返すのかを親身になって審査するようになる。貸金業者は本来そうやってお金を貸さなくてはいけない。50万円を20%で貸し漬けにすれば、年間10万円の利息が業者に入ってくる。5年で元が取れ、それ以降は、黙っていても10万円が毎年入ってくる。これでは奴隷制度状態。利息だけ取る商売であぐらをかいて一部上場の高収益企業でございますと自慢できる業態ではないのだ。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「消費者金融」「住宅ローン」

参考サイト:

アイフル株式会社(貸金業登録業者)の業務停止について

法的救済方法〔自己破産・免責手続〕

貸金業制度等に関する懇談会(第7回)議事要旨

日本生活向上協会

統一消費者信用法要綱案

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