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ライブドアの「悲劇」と「行く末」

岸田 徹 【岸コラ】
2006年3月14日(火)

ライブドアが1ヵ月後に上場廃止になる。どうして廃止されるかは、上場している先の東京証券取引所がそう決めたからだ。決めた理由は、東証の上場廃止基準で、有価証券報告書に虚偽記載があったら廃止すると決めているためだという。

つまり、決算書を嘘で塗りつぶした場合は上場の価値がないという事だから、上場を廃止するという。上場企業の株はいつでも売ったり買ったりできるので、その売り買いの根拠となる会社の成績が嘘だったという事になると、投資家は何を根拠に売り買いをしたらいいか分らないので、上場廃止は正しい。

しかし、厳密に言えば、東証が廃止の根拠とした「決算書の嘘」は、まだ容疑の段階だ。証券取引等監視委員会が昨日ホリエモンと他の取締役、並びに株式会社ライブドアを証券取引法違反の容疑で東京地検特捜部に告発したまでで、嘘だと確定したわけではない。

もっとも、東証の判断基準は、東証が嘘だと判断した場合に廃止することになっているので、上場廃止を決めたことについては文句の着けようがないのだが。

恐らく、「決算書の嘘」は本当なのだろう。以前の【岸コラ】でも書いたが、公認会計士の山根治さんという方が、「ホリエモンの錬金術」というブログでライブドアの有価証券報告書を2期分精査され、膨大な数字の中から、つじつまの合わない怪しい数字を指摘し、利益が出ていない会社の疑いが濃厚だとしていた。

それでも今回は、ライブドアが上場廃止に至った経緯を考えると疑問と悲哀を感じてしまう。さらに、技術的な問題では株主に同情してしまう。

ライブドアの株主は22万人いるとされている。上場が廃止になった場合、株主は持っている株を市場で売ることができなくなる。売る場合には、買う人を自分で見つけなくてはならない。これは、現実的に不可能だ。上場廃止は、1ヵ月後だ。その間に売りたい人は売ればいいのだが、あまりに株主の数が多いので、その1ヶ月間に売りが集中すると東証のシステムがパンクする恐れがある。そのため、ライブドアの株取引は午後2時から3時までの1時間に限られている。制限が付いているのでよけい売りにくい。そんな状態で規則どおり1ヵ月後に廃止するのは株主に腹を切れと強要しているようなもの。気の毒でならない。半年ぐらいの猶予は与えて当然だと思う。

疑問の点は、ライブドア型のビジネスの将来をちゃんと見据えたのかという点だ。ライブドアは特捜部の家宅捜査が入ってから、虚業の会社だったと非難されているが、株主にとっては、そこが投資の理由だったはず。

動きの激しい世の中で、ビジネスのビジョンを決めたらそれに合った企業をどんどん買収して消費者のニーズに適合させる。合わなければその会社は合うところに売却する。

自社で事業を産み育てて行くやり方とは最初から違うことは誰でも承知していたことだ。そこにライブドアの生命線があり、その生命線に投資したのが株主だった。だから、ライブドア本体の事業は何かなどという事は投資家にとっては愚問だったはずだ。

そんなライブドアの事業に必要な資金は、市場から調達していた。莫大な資金が必要なことから、一金融機関がライブドアのニーズに応じるよりは、多くの投資家が消費者やユーザーの立場になって投資する方が、事業内容から言って健全な調達方法だ。消費者感覚の支持があったからこそ、ライブドアの株が売れたわけだ。これは、日本では前例のないモデルだった。

ライブドアは上場廃止で、間違いなく会社の生命線を奪われる。ひょっとしたら会社の体裁は守られるかもしれないが、企業買収や売却でビジネスを展開しようとするモデルは立ち消えになるだろう。同様の企業家は間違いなく二の足を踏んでいる。

悲哀の理由は、ここが最も悲劇的なことだが、やはり上場廃止で誰の利益を守ろうとしているのかがまったく分らない点だ。嘘をついたら上場が廃止になりますという見せしめ以外に上場廃止の理由が見当たらない。

ライブドアが虚偽報告をしたことは、証券市場の運営上、許せる事ではない。しかし、地検特捜部が踏み込み、証券取引等監視委員会が告発するというやり方が正しかったのかは今もなお疑問だ。

本来ならば、ライブドアの監査法人が問題を指摘すべきだった。それが、できないのなら、前述の山根さんのような善良な会計士が個人的に指摘していたのを、マスコミが検証して取り上げ、市場の株主に警告するのが民主的解決方法だったのではないのか。

検察が入り監視委員会が告発するというやり方は、官僚国家日本丸出しの解決方法だ。あたかも証券取引等監視委員会は、善良な市民の味方のような印象があるが、実際にはかけ離れた存在だ。

市場の番人として金融庁の外局にあり、独立している組織ではあるが、市場の番人がこれでいいのかと思える組織だ。

委員は3人。委員長は検察庁出身、他に公認会計士出身とNHK出身者だ。いかにもバランスがとれている出身だが、委員長は70歳、他の委員も67歳に66歳。とても証券市場の悪事を暴く最前線には立てない年齢だ。

実際には、事務局長が采配を振るっているのだろうが、今の事務局長もその前も官僚上がりだ。今の長尾和彦事務局長は前関東信越国税局長、その前の新原芳明氏は富山県の副知事だったと言われているが、大蔵省出身で現在は信託協会専務理事だ。二人とも旧大蔵省の出身で、国税局の経験がある。

監視委員会が天下り先になっているのも腹立たしいが、検察と国税局は脱税摘発の関係でパイプが太い点が無視できない。検察と旧大蔵省と言えば、日本の官僚中の官僚、超エリート官僚だ。

この官僚機構がタグを組み、マスコミへの情報操作をすれば、例え白いものでも黒くなる。国家権力とマスコミが一体となる怖さは、北朝鮮を見ればすぐ分かる。日本はもっと民主的な国だとの自覚はあるが、民主国家のはずのアメリカも政府の報道操作でイラク戦争の正当性を通し続けた。

こんな形で犯罪が摘発される日本の弱点は、日本をどんどん元気のない国にしてしまう。特に若者の夢を得体の知れない権力で握りつぶした後遺症は長いこと尾を引くに違いない。

ライブドアは、社長の平松氏が社員は優秀だと強調しながらも、明確な再生ビジョンを示していない。「社員が優秀だ」という宣伝文句は身売りを意味している場合が多い。

平松さんは株主から選任された取締役ではない。社長というのは取締役会で選ばれた執行役員の代表で、株主側から見れば一社員に過ぎない。取締役と執行役員の関係はほとんど報道されていないので、「社長」となれば会社を代表していると思われがちだが、これもマスコミが平松さんを援護しているような体勢だ。実際には、臨時株主総会で取締役に選任されるまでは身動きができない状態だ。

臨時株主総会は6月に予定されているという。それまでの間、会社がバラバラにならないようにするのが彼の役目だと思う。株主総会で取締役に選任されれば、会社の意思として事業実態のある部門がどんどん身売りされるのだろう。ライブドアはこうして本当に何もなくなり、紙切れ同然の会社になってしまう。それが、ホリエモンを逮捕した権力者の目指すゴールのはずだ。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「証券取引等監視委員会」「委員会等設置会社」

ライブドア事件 堀江被告ら4人再逮捕、53億円粉飾容疑 熊谷取締役も逮捕 [2006年2月23日読売新聞東京朝刊]

ライブドア 旧経営陣の責任追及 山崎取締役に代表権 [2006年02月23日 産経新聞東京朝刊]

堀江容疑者、社長辞任 後任、子会社から平松氏 [2006年01月25日 産経新聞東京朝刊]

金融庁人事=7月2日 [2004年6月26日 読売新聞東京朝刊]

金融庁 検査局長に西原氏 [2004年6月25日 読売新聞 東京朝刊]

金融庁人事=7月12日 [2002年7月5日 読売新聞東京朝刊 ]

国土庁人事=7月1日・3日 [2000年7月1日 読売新聞東京朝刊]

大蔵省人事=7月8日 [1999年7月1日 読売新聞東京朝刊]

納税者番号制導入の問題点、専門家に聞く/政府税制調査会 [1998年7月13日 読売新聞東京朝刊]

参考サイト:

監視委員会について

監視委員会の機構図

エネルギア マネジメント スクール新春経営セミナー

ライブドア新社長に平松氏

上場廃止の決定に関するお知らせ

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