|
岸田 徹 【岸コラ】 |
国の特別天然記念物だったコウノトリは1971年に絶滅した。コウノトリは兵庫県の県鳥。また、兵庫県の豊岡市がコウノトリの最後の生息地だったことから、豊岡市は「兵庫県立コウノトリの郷」を拠点にコウノトリを再び野生に戻そうという取り組みを行なった。
この取り組みは壮大なもので、118羽のコウノトリが「コウノトリの郷」で飼育されたが、そのほとんどは20年前にロシアのハバロフスク地方から贈られた幼鳥の子孫だった。人里で絶滅した鳥を野性に返す試みは世界では例がない。
去年(2005年)の9月24日、そのうちから5羽のコウノトリが見事に大空に舞ったのだった。その式典に秋篠宮ご夫妻が参列された。市民が見守る中、「コウノトリの郷」公園に5つの木箱が並べられた。午後2時30分、秋篠宮ご夫妻のテープカットを合図にひとつの木箱が開けられ、7歳のオスが勢いよく飛び出した。一瞬の沈黙の後「わー」っという歓声とカメラのシャッター音が鳴り響き、続く4羽も元気よく飛び発った(読売新聞)。
鶴に似ているコウノトリは、その動きが雄大だ。この時の模様は、ちょうど同時期に行なわれていた愛知万博の長久手会場でも生中継され、大きな拍手に包まれた。その見事な羽ばたきに秋篠宮様ご夫妻も感動なさったに違いない。
この時の感動を詠まれた歌が、【サカスト】でも真っ先に紹介された先月の「歌会始の儀」の秋篠宮ご夫妻のものだ。今年のお題は「笑み」。笑みを介して様々な歌が詠まれる中、お二人はお二人ともこの時のコウノトリを詠まれたのだ。
コウノトリは日本ばかりか韓国でも絶滅し、繁殖地のアムール川流域でも2千羽ほどしか生息していないと言われ、絶滅の危機にある。
一方、よく赤ん坊を連れてくると西欧で言い伝えがあるコウノトリは、実はシュバシコウという種類で別物。くちばしが赤い。こちらの方は80万羽以上いるとみられ、絶滅の恐れはない。毎年春になると同じ場所の木や家の煙突などに巣を作り、雛に細やかに接することから赤ん坊を連れてくるという連想が生まれたとされている。
もし、秋篠宮ご夫妻が、まるでコウノトリが赤ん坊を連れてきたように次のお子様を授けられたとするならば、以下の話は全く無意味な話だ。しかし、経験も豊富で見識のあるご夫妻が、自然に任せた行動を取ったとは思えないので、話を進めたいと思う。
紀子さま懐妊のビッグ・ニュースは【サカスト】にもあるように、2月7日の国会中継中にNHKがテロップで流した。テレビ朝日のスーパーモーニングによれば、テロップの中身は「秋篠宮妃の紀子さまご懐妊 宮内庁発表へ」というも。午後2時8分に流された。小泉総理が秘書官からそのニュースを知らされたのがそれから4分半後の午後2時12分30秒。宮内庁の発表はそれよりはるかに遅く午後9時だ。
先日の地検特捜部のライブドア捜索もNHKが家宅捜査前に第一報を流し、連続スクープをNHKはやってのけた。よく頑張っているという評価もあるが、私の見方は違う。NHKは予算の承認を国会でもらわなければならない政府のコントロールが利きやすい組織だ。地検の動きや宮内庁の動きを政府の見解より早く報道するという事は本来あってはならない。つまり、従来のコントロール機能が麻痺し、誰かに使われてしまっているという見方だ。
それでは、今回は誰に使われたのか。スクープ報道というのは、忍耐強い記者が必死になってニュース源に近付き、まるでスパイのように危険を冒してある事実を掴む印象があるがそんなことはない。そういうスクープはどちらかというとフリーのジャーナリストが行なって雑誌社が買うような場合だ。サラリーマン化した全国紙や全国ネットの放送局がそんなスパイもののような行動は取れない。
東横インの一件でもそうだが、誰かがニュース源を報道機関に持ち込まないとできないものだ。記者そのものはニュース源ではないのでいくら頑張ってもニュースにはならない。協力者がいてはじめて記者は事件の現場に接し記事にすることができる。
今回のニュースは、紀子さまのお体の問題で、例え、ご本人が「自分は妊娠した」と誰かに漏らしても、それを記事にするとなると「紀子さまが妊娠したとおっしゃった」というものでしかない。これではニュースにならない。本人の言動よりも実際に妊娠したかどうかが重要で、これを掴まなければニュースにはならない。
ということは、NHKの記者は、ご本人にかかわる医療関係者から直接情報を得たということだ。この場合、医者から直接情報を得たというのが一義的に考えられるが、医者の発言を責任をもって代弁できる人からの情報も適格な情報源として認めることができる。つまり、紀子さまの身の回りのお世話をしている責任者だ。
宮内庁はNHKの速報があってから7時間後にようやく羽毛田長官が会見をした。宮内庁は懐妊の事実を知らなかったのだろうか。宮内庁には複数の部局があるが、その中に「長官官房」と「侍従職」とがある。「長官官房」は秘書課や総務課、主計課などが置かれ、宮内庁の事務を行なっている。これに対し「侍従職」は侍従長の統括の下に天皇皇后両陛下の直接の身近な仕事を行なう部署で、命令系統が分かれている。もちろんすべての責任は宮内庁長官が負っているわけだが、仕事の内容が違うので、長官は「長官官房」の方が近い。
恐らく、NHKは歌会始のコウノトリの一件から両方に取材攻勢をかけていたのだろうが、今回NHKに情報を提供したのは「侍従職」サイドの方だろう。
しかし、ここで疑問がわく。いくら近くで紀子さまの身の回りの世話をしていたとは言え、国家公務員だ。長官からの命令系統を無視してまでNHKに情報提供するだろうかという疑問だ。そんなことがバレたらその人の公務員人生はそこで終わりだ。その点を考えると、宮内庁も事前に知っていたか、あるいは、「侍従職」サイドでは相当周到に計画し、組織が防衛する形を取ったかでないとこのような情報提供はとても恐ろしくてできるものではない。
そこには、女系天皇を許さない勢力の介在が想像されるが、私の確信はそちらの方ではない。なぜなら、皇室典範改正での女系天皇容認議論は、それ自体は賛成しても反対しても誰も得しないからだ。皇族にとっては当事者になるので利害関係がないわけではないだろうが、天皇陛下の地位そのものが危険を犯してまで固執したい地位かどうかはまったく疑わしい。
男系天皇を主張する勢力も、これを利用して小泉政権に打撃を与えたいとする政治的な企みは沸くだろうが、男系天皇を維持したところで得をする政治勢力や企業勢力があるわけではない。そこは、郵政民営化と大きく違うところだ。郵政民営化の場合は、外国銀行や日本の金融機関でも得をする勢力がある。
それでは、どうして秋篠宮は歌にまで詠んで第三子に挑んだのだろうか。歌会始でコウノトリについてお二人で歌を詠んだ点について、キーがある。
皇族の歌が詠まれる中で、もし突然二人でコウノトリを詠えば、大変な波紋が皇室を走るに違いない。皇太子にはそういう意外性のある行動があるかもしれないが、秋篠宮にはないと見るべきだ。秋篠宮は皇太子の雅子妃人格否定発言について、「せめて陛下とその内容について話をして、その上での話であるべきではなかったか。残念に思います」と気持を述べている(秋篠宮39歳の記者会見で、2004年11月30日産経新聞)。その秋篠宮がまさに国会で皇室典範の改正が議論されようとしている中で、唐突にコウノトリを出すはずがない。
恐らく、コウノトリの歌をお二人で詠むことは、事前に天皇陛下にも秋篠宮から伝えられたはずだ。いや、伝えたというより、十分に議論し相談したといった可能性の方が強い。
皇室典範の改定は今国会で行なうと小泉首相は言明していた。今国会とは第164回国会で会期は150日、1月20日から6月18日までだ。秋篠宮ご夫妻がコウノトリの歌を詠んだのは1月12日。ご懐妊のニュースは2月7日だ。この時期に秋篠宮がコウノトリを呼ばなくてはならなかった理由は、皇室典範の改定にかかわるという事だとは容易に想像が付く。
秋篠宮妃の懐妊は、どうして6月18日まで待てなかったのだろうか。もし、皇室典範が改定後に秋篠宮妃が懐妊した場合、そのお子さんが例え男子であっても天皇になる可能性は、ぐっと低くなる。女系天皇が認められれば、今の皇太子が天皇になった後は、愛子さまが天皇になり、その子供が天皇を継ぐことになるからだ。
それが、不満だから秋篠宮は今コウノトリを呼んだのだろうか。それは、考えづらい。もしそうなら、もっと以前に男子を生み自分の地位を優位にし、最初から皇室典範の改定をさせない方向にしておけばよかったからだ。男が生まれるか女が生まれるかは分らないところだが、産み分けについての研究は相当盛んだ。男を出産させる方法が皆無だとは言えない。
それでは、なぜ今コウノトリを呼び皇室典範の改定を阻止しようとしたのか。女系天皇が認められれば、現状として何が一番変化するかと言えば、愛子さまが確実に天皇になり、その子孫が代々皇位を継いでいく可能性が強くなるということだ。
ということは、愛子さまが天皇になることが決定的に困る事態が起こったと考えられる。雅子さまの病状だ。恐らく回復の兆しが見えないばかりか、悪化しているのではないだろうか。
思い起こせば、2003年12月に当時の宮内庁長官だった湯浅氏が「秋篠宮さまのお考えはあると思うが、皇室の繁栄を考えると、3人目を強く希望したい」(読売新聞)と言った発言は、非人道的で到底許される発言とは思えなかったが、それほど雅子さまの病状が緊迫したものだったのかもしれない。
この長官の発言に対して、当の秋篠宮は職務上せざるを得なかった発言ではないかとかばうような発言をされている。この時の長官の発言は、すでに秋篠宮や天皇と打ち合わせ済みで、国民や各方面の反応を見るためのアドバルンだったのかもしれない。この湯浅長官の発言に対しては、概して反応は攻撃的で賛同するものは出なかった。以降、雅子さまの回復報道がされるようになる。
しかし、ここのところは、再び雅子さまの病状については回復しているとするものがない。恐らく、公務復帰は絶望的で、ひょっとしたら、皇室を離脱することが現実的に議論されているのではないだろうか。その場合は、間違いなく皇太子も一緒に下野するのだろう。そうなると、愛子さまが皇位を継承することはできない。皇太子が天皇にならないからだ。
今の国民的な人気を考えると、愛子さまが天皇になることについてはまったく問題がないばかりか、国民の多くが愛子天皇誕生に期待している。このまま皇室典範が改定になり、愛子天皇の道が開けた後に、雅子さまが皇室を離脱した場合、国民の落胆は相当なものだ。
皇室典範が改定になる前に、秋篠宮家に男子が生まれ、皇位継承の地位に着けば、愛子さまに対する国民の期待を静めることができる。その後皇室を離脱し、皇太子一家が民間人として生活すれば、皇位継承の問題は一挙になくなる。
皇位継承は皇室の問題でありながら、憲法上皇室のメンバーは法律の成立に影響するような意見を述べることはできない。このまま、女系天皇を認める皇室典範の改定が行なわれ、愛子天皇への期待を裏切るようなことになれば、一番心を痛めるのは、間違いなく天皇皇后両陛下だ。ご両親思いの秋篠宮が紀子さまと重大な決心をしたその表明がコウノトリの歌だったに違いない。
恐らくこの決意は兵庫県豊岡市のコウノトリを大空に放ったときにすでにあったはずで、コウノトリが羽ばたいたときの感動は、ご両親とご兄弟を思う秋篠宮ご夫妻にとって歌にあるような人生最大の笑みに包まれたものだったのだろう。
(この記事は、事態の結果を分析し消去法的に結論を推理したもので、ある確信的な事実を掴んでのものではありません)
この記事の読者数:
参考資料:
Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「コウノトリ」
紀子さまご懐妊 どうなる典範改正議論 男子誕生40年なく、継承の不安背景に [2006年2月8日 読売新聞東京朝刊]
旧皇族・竹田家 竹田恒泰氏 男系変えてはいけない [2005年12月11日 産経新聞東京朝刊]
秋篠宮さま きょう40歳 [2005年11月30日 産経新聞東京朝刊]
秋篠宮さま きょう40歳 ご会見全文(2−1)[2005年11月30日 産経新聞東京朝刊]
秋篠宮さま きょう40歳 ご会見全文(2−2)[2005年11月30日 産経新聞東京朝刊]
コウノトリ放鳥 夢40年、舞った! 野生定着「一歩一歩」飼育関係者 [2005年9月25日 読売新聞東京朝刊]
コウノトリ、復活の日 発信器つけ5羽を放鳥/兵庫・豊岡 [2005年9月25日 読売新聞東京朝刊]
愛知万博情報2・9月25日 [2005年9月25日 読売新聞中部朝刊]
コウノトリ放鳥に「心強い」 秋篠宮さま「国際かいぎ」に出席/兵庫・豊岡 [2005年9月24日 読売新聞東京夕刊]
皇太子さまに真意確認へ 宮内庁長官「真摯に受け止め」 [2004年5月14日 読売新聞東京朝刊]
皇室典範に関する有識者会議報告書 拙速批判は無視 10カ月で結論、人選も疑問 [2005年11月25日 産経新聞東京朝刊]
秋篠宮さま39歳会見 皇太子さま「人格否定」発言 陛下とお話なく「残念」 [2004年11月30日 産経新聞東京朝刊]
陛下のがん手術「心配しました」 秋篠宮さま38歳に [2003年11月30日 産経新聞東京朝刊]
参考サイト:
![]() |
![]() |
Copyright (C) Toru Kishida 2005 All Rights Reserved.