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岸田 徹 【岸コラ】 |
第二、第三の「姉歯」がいるのではないかと、ずっと騒がれてきたが、いまだに姿を現すことはない。姉歯問題は国家を揺るがす大問題だと指摘する人が多いが、どうも、私はたいした問題ではないのではないかと疑い始めた。
私の疑いは、姉歯問題は単なる創価学会の内輪もめではないかという点だ。もちろん、規制緩和のために建築確認の検査業務を民間に開放し、その管理体制に問題があったことは重要で見直されなければならないことだ。しかし、事の起こりと、被害の拡大という点を考えると、規制緩和後の建築確認システムが原因だと考えるのは方向が違うのではないかと疑い始めた。
この問題に創価学会が少なからずかかわっているという指摘は早くからあった。理由は、(1)ヒューザーが創価大学の卒業生を受入れ、創価大学のホームページにも卒業生の就職先としてヒューザーの名前があったが、今回の問題でその項目がホームページから消えた、(2)姉歯さんが創価学会員である、(3)創価学会と深い関係にある公明党の北側国交相が早くから事態収拾に動いていた――の三点が一般に知られている事実だ。
創価学会は、日本最大の在家仏教教団だ。会員の世帯数は821万世帯、会員数は1,700万人(平成15年)と言われている。この数字を国勢調査の数字(平成12年)と比較すると、実に世帯数では17%、人口では13%の割合で創価学会員がいることになる。つまり、約5世帯に1世帯は学会員の家で、10人に1人は学会員だということだ。日本で創価学会を抜きに物事を考えるということは、実は非現実的になってきているのだ。
20年間の読売新聞の記事に創価学会の中心的な人物である「池田大作」の名前が載ったものは666件あるが、日本のカトリック教会で代表的な人物である白柳誠一の名前が載っている記事はわずか43件。創価学会とカトリックを比べていいかどうか分らないが、「池田大作名誉会長」と役職付きで名前が載る記事は196件ある。一方「白柳誠一枢機卿」は6件しかない。一般紙にこれだけ載るというのは、学会に関心のある読者が多いということだし、見方をかえれば、読売新聞に対する創価学会の影響力は、カトリック教会の33倍あるということだ。
創価学会は、その名が示す通り、価値を創り出すことに意義を求めている宗派だ。いくら念仏を唱えてもそれが来世に役立つのでは意味がなく、現世のために役立ってこそ意味があるという信念だ。
教えの基本は日蓮正宗だが、この宗派は他の信仰を認めていない。創始者の牧口常三郎は日蓮正宗の教えに加え、信じれば利益がある点と他の信仰を持てば厳しく罰するという独自の思想を加えて創価学会を生み出した。
恐らく、その利益とは、心の益で、信じることにより心が豊かになるというのが原点だろうと思うが、実際には信じることで物理的な利益があるという点が強調されたのも否めない。さらに、他の宗教や宗派を認めない排他性は、信者間の強い結束を生み出した。
創立されたのは昭和5年(1930年)だから、もう75年もたつ。今の信者は、自ら入信した人たちだけでなく、生まれたときから創価学会の環境にあった人が多いようだ。二世、三世の信者がひとつの塊としてある。宗教は、自らの判断で入信するのと最初からその環境にあったから信じているのが当り前だというのとでは、宗教に対する構え方が違うものだ。創価学会の中にも、世代間のあつれきがあって当然だ。
さらに、利益を求める教団の限界がある。一人で利益を追求するよりは、集団になって組織的に利益を追求する方が益が多い。例えば会社という集団がそうだ。いくら能力があっても一人では限界があるが、組織力を持てば利益の幅が数倍、数十倍にも広がる。しかし、それは、一定の人たちの集まりだからこそ利益が得られるわけで、人口のうちの一割以上の人たちが集団となってしまっては、その集団の中に利害関係の調整が必要になってしまう。
姉歯問題を考えるとき、ここのところが引っかかる。国家の一大事にしては、解決に向けての動きが鈍い。さらに、証人喚問という「ショー・ビジネス」に政治家が一生懸命になっていて、一向に解決への動きがない。
そもそも、どうして姉歯問題が浮かび上がったのかについても、新聞報道では国交省の発表で事件になった経緯があるが、どうして国交省が発表したのかは実に不思議だ。
北側大臣は公明党員、創価学会のエリートだ。国交省がこの問題を発表すれば、一番困るのは北側さんだ。
一方、黒幕とされる総研の内河所長。総研内部にSG会という会員組織があることは認めている。しかし、国会の証人喚問では、そのSGの意味を問いただす人は誰もいない。「総研グループの会」で、SGだと読売新聞には報じられているが、これは疑わしい。自分のところのお客の会に、自分の会社の名前を付けるのは普通ではない。日産自動車のお客の会を「日産会」にしようという発想はなかなか出てこない。会社以外のところで日産の自動車が好きだからという理由で、愛好家が付ける名前なら分るが、社内の人が付ける名前ではない。
名前のごろも悪い。総研グループならSKGだろうし、総研グループ会はグループと会がダブってしまう。総研には、色々なお客がいたはずだ。その中で、静岡のお客の集まりなら「静岡会」などと付けるのが普通。SG会は創価学会の人がお客の会だと考えるのが普通じゃないか。
これを誰も表立って追及しないのは、かえって怪しい。追求する側の政治家もマスコミも、先刻その事実は承知しているとしか思えない。
木村建設の本社社屋には堂々と「SG 木村建設」と書かれているが、総研グループの木村建設だという意味だろうか。いや、創価学会の木村建設という表示だと考える方が普通ではないのか。テレビの映像も最初はSGの冠が付いた木村建設側をよく放映していたが、最近では側面の「丸盛 木村建設」という社章と思われる方を映すようになった。
木村建設が急激な成長を遂げたのは、創価学会の会員同士の引き合いがあったからではないだろうか。会員同士のつながりで急成長したことは十分考えられる。国会の証人喚問で総研の内河所長が、木村建設が安い工法を最も早く忠実に実現したというのは後から付けた理由としか考えられない。
どうも、政治家もマスコミもみんな知っているけれど、はっきり言えない創価学会の事件だという感じがする。
では、なんで排他的で一致団結している創価学会内の商売が、明るみに出てしまったのだろうか。これも私の想像だが、学会内部の告発が発端ではないかと思う。利害のズレか価値観のズレか世代間の断絶か、それは分らないが、3つぐらい考えられる。
第一に、一方的に儲けている木村建設に対するあまり儲からない学会員の嫌がらせか、北側大臣を頂点とする国交省内の創価学会派に対する挑戦か、もっと大きなところで、創価学会の姿勢に対する内部の不満分子が挑戦したか。いずれにしても、相当大掛かりな内部クーデターではなかったのかと思う。
姉歯さんだけが、証人喚問で弁護士も連れずに、吹っ切れたように証人喚問を受けたのは、恐らく学会の反主流派の人物に保護されているか、学会を見限って、創価学会に反対する宗派勢力か共産党かに守られたためではないかと思う。姉歯さんが国会の参考人招致に対して「外に出るのが恐ろしい」と欠席した理由は、マスコミやマンションに入居した人たちからが恐ろしかったのではなく、被害拡大を恐れる創価学会からの圧力が怖かったのだと思う。
問題は、2つある。ひとつは、創価学会内部の問題だ。すでに創価学会の信者は、日本の人口の相当部分を占めている。この人たちがひとつの価値観で押さえつけられて生きていけるはずがない。信仰に絶対性はあったとしても、学会の運営や利益配分には不満を持つ人たちがいて当然だ。それを、公に議論する姿勢が感じられない。これは、創価学会がなおも拡大する上では最大の障害になるはずだ。
もうひとつは、創価学会の信者ではないのに、利益を得ようと似非信者になったり、真実を追究しなくてはならない政治家やマスコミが自分の利害のために創価学会を利用しようとする点だ。あるいは、積極的に利用しなくても、消極的な姿勢で創価学会を批判しない。利用したらそれ以上に利用されるし、無視しても無視できない大きな勢力になっているのだから、もっとオープンにやり合わないと、日本全体が窮屈な世界になってしまう。
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参考資料:
Microsoftエンカルタ総合大百科2006:「創価学会」
週刊現代2005年12月17日号 小泉首相、公明党幹部、創価学会との「本当の関係」
週刊現代2005年12月24日号 ヒューザー小嶋社長と「小泉=清和会の蜜月」
週刊現代2005年12月31日号 内河健「離婚と育英会」カネのカラクリ
読売新聞
産経新聞
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