本当に地球は温暖化しているのか。

岸田 徹 【岸コラ】
2005年9月30日(金)

地球温暖化地球は20世紀の100年間に平均気温が0.6度上がった。平均海面水位は10〜20cm上昇。日本でも平均気温が1度上昇している。このままいけば、最悪の場合、2100年には気温は5.8度上昇し、海面は88cm上昇する。――これは、環境省が出している「STOP THE 温暖化」という20ページにわたるパンフレットに書かれていることだ。

危機をあおる環境省のパンフレット

パンフレットにはこの他にも2004年夏の日本の猛暑で熱中症の患者数が過去5年で最大になり、過去最多の台風が上陸したことや、2002年夏にはヨーロッパ各地で百年に一度という大規模な洪水が起きて、70人以上が死亡、40万人以上が避難したことなどが書かれてある。また、世界最大規模のスーパーコンピューターである「地球シミュレータ」を使っての予測では、2100年の日本の夏の平均温度は、4.2度上昇し、真夏日も70日増加すると示されていて、このままでは、本当に手遅れになるという危機感をあおっている。

生態系にも異常があると伝え、イロハカエデの紅葉は過去50年に比べると2週間も遅くなり、ナガサキアゲハの生育地域は北に分布が広がっていると書かれている。

そして、温暖化のメカニズムと原因というページで、大気に含まれる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが太陽で温められた地表の温度を放射せずに適度に地球を温めてくれているが、その二酸化炭素が産業革命以降石油や石炭などの燃料を大量に燃やすので多くなってしまったと解説している。

つまり、太陽で温められた地球の周りに二酸化炭素などのガス層の覆いが保温役になっていているのが、その覆いが大きくなりすぎて、今までは襟巻き状態だったのが分厚いコートになり、どんどん地球を温めていると言いたげな表現になっている。しかし、これが地球温暖化の原因だとは関連付けていない。単に、地球は保温効果のガス層があるから温かいのだという点と、産業革命以降化石燃料を大量に燃やしたという事実だけが書かれている。

さらにパンフレットは温暖化のもたらす深刻な影響を羅列する。農作物への影響で収穫が減る恐れがある、熱波の影響だけではなく、マラリアやテング熱などの病気を媒介する動物の生息域を拡大する恐れ、ブナ林が影響を受け日本の生態系が変わる可能性、スキー場が営業できなくなるなどの産業への影響が続々出てくる。

CO2を削減できない事にはのんき

では、そうならないためにはどうしたらいいか。もちろん二酸化炭素の削減だ。日本は京都議定書を推進した国だ。削減の約束は6%。

いくらアメリカが同調しなくても、地球の一大事だ、この6%は当然やるのだろうと思うとそうではない。3.9%を森林管理で吸収するが、排出量が8%上回り、削減約束は守られず、その差は14%に広がっている(2002年現在)と、パンフレットの記述は実にのんきだ。

そして、今後の温暖化対策は、長期(2100年ごろ)、中期(2030〜2050年)、短期(2020年くらいまで)の目標設定が有効だと書いてはいても、それがどういう目標なのかの数値はない。最終ページには「おわりに」と題して地球温暖化の原因やその影響の現れ方は複雑だと告白し、それでもすぐに後世のために行動することが必要だとかきたてる。しかし、必ずしも日常生活を犠牲にする必要はなく、「豊かな生活」と「温暖化対策」は両立可能だと結ぶ。

いったい緊急なのか、どうでもいいのか、大変なのか、そうでもないのか、さっぱり分らない。

不思議な論拠

ここで、事実関係について不思議だと思うことが三つある。ひとつは、パンフレットの最初に出てくる20世紀の100年で地球の平均気温が0.6度上がったという点だ。平均気温だから、0.6度というのは大変な上がり方だとは思うが、地球の歴史から考えると珍しいことではない。

約164万年前の氷河期では氷期と間氷期を繰り返し、約1万年前から間氷期に入った。その移行期間の1000年単位の平均気温は約5度上昇したというから、100年で0.6度は十分ありうる数字だ。

二番目は、二酸化炭素などのガス層の役目だ。太陽の光で地表が温められ、温かくなった空気が上昇しても、地表を覆う二酸化炭素のガス層が放熱を防ぎ、適度な温度の地球を保っているという。それが、二酸化炭素のガス層が大きくなりすぎて温暖化させているというのは一見もっともそうだが、熱を逃がさないのなら、地球に降り注ぐ太陽の熱も反射してしまうのではないか。逃がさないけど受入れるというのは理屈に合わない。太陽の熱を阻めば、地球は冷たくなるはずで、温暖化には向わない。

もうひとつは、石油は無尽蔵にはないという常識を無視している点だ。石油は、現在発見されている油田の埋蔵量を今の調子で使えば、1997年の時点で41年後には枯渇するという予測がある。つまり、2038年には石油がなくなるとの予測だ。なくなる石油を温暖化防止のために使うなというのは無理がある。放っておいたって、原子力や太陽エネルギーの利用などに振り向けられるはずで、温暖化で地球が大洪水になるような危機感をあおるほどのことではない。むしろ代替エネルギー政策にもっと真剣に取組まなければ、温暖化の前に社会システムが崩壊してしまう。

では、何で地球温暖化をあおるのか。そこには、官僚の天下り先が見えてくる。

不可解な温暖化防止法

そんなに地球温暖化が人類の生死にかかわる重要な問題なら、法律でも何でも作ってちゃんと規制すべきである。地球温暖化に関して、どんな法律が日本にはあるかというと、あまりないのだ。あるのは三つ。

ひとつは、「省エネ法」と呼ばれている法律で、公害を規制する法律(1979年)を環境問題の視点から改正したものだ(1998年)。それに関連して「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」(1997年)がある。

三つ目は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(1998年)で、これは京都議定書の採択をうけてできた法律。この法律は、まさに地球温暖化を防止するための世界で最初の日本で唯一の法律だ。

これがいい加減な法律なのだ。どんな法律かというと、地球温暖化について状況をよく把握して、それを国民に啓蒙しようというものだ。京都議定書の目標についても達成しようというスローガンがあるのだが、目標を達成しない場合の責任追及はまったくない。

それでは、どうやって温暖化を防止するための活動をするかというと、「地球温暖化対策推進本部」をつくるというのだ。本部長は総理大臣をもって充てる。副本部長は内閣官房長官と環境大臣に経済産業大臣だ。本部員はそれ以外のすべての国務大臣を充てるとある。全部の大臣が一体となって事に当たるように感じるが、全員がやるという事は全員がやらないという事。まったく意味がない。

天下り先がザクザク

ところが、次が大事。この推進本部に幹事を置くのだ。この幹事は「関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する」とある。つまり、官僚が事務方をやるのだが、総理大臣が官僚の人選を行なえるはずがないから各省庁が推薦した人がなるに決まっている。それが、全部の大臣が本部員になっているので、どこの省庁でも推進本部の幹事が置ける仕組みになっている。環境省ばかりでなく、どこの省庁でも温暖化防止に向けた役所仕事ができるのだ。つまり、予算が付く。

さらに続く。各都道府県にも「地球温暖化防止活動推進員」を置くことができ、それを知事が委嘱する。ここに官僚が天下れる。

さらに続く。都道府県知事は、啓発のために「地球温暖化防止活動推進センター」を置くことができる。これは、NPOなどの非営利団体を指定することになるのだが、各県にひとつ置くことができる。これにも官僚が天下れる。

さらに続く。二つ以上の都道府県をまたぐ場合には「全国地球温暖化防止活動推進センター」が啓蒙活動を行なうとして、全国センターを置くことができる。ここにも官僚が天下れる。

さらに続く。地域で推進活動をしたければ、「地球温暖化対策地域協議会」を作ることもできる。ここも天下れるが、お金があるかどうかは分からないので人気はないだろう。

実際、全国地球温暖化防止活動推進センターの代表である大木浩氏は、かつて環境庁長官だったが、その前は通産官僚だ。

また、地球温暖化防止に関する国連での科学的な研究を続けている「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)と呼ばれる組織には、日本からも委員を派遣しているが、その派遣元になった「地球産業文化研究所」という財団法人は経産省管轄。理事長は東京電力の南さんで、理事にはソニーの出井さん、野村の氏家さん、ウシオ電機の牛尾さんなどが名を連ねるが、専務理事と常勤理事は通産官僚だ。IPCCに派遣された人も元通産官僚がいる。

温暖化防止は本当にできるのか

地球温暖化と公害防止は日本では連続している歴史がある。公害防止には自動車の排ガスと工場の廃液などが取締りの対象になったので、通産省と運輸省が大きな役割を果たした。これが、ひと段落ついたので、地球温暖化に乗り換えたのではないかと疑える。

天下り先を作るために、適当な法律を作り、国民の危機感をあおって予算を計上し、さらには環境税の創設も考えている。誰も「地球温暖化防止」と言えば、Noとは言えない状況だ。地球環境を守るにはひとつの企業や一個人が努力してもできない。どうしても全国規模や全世界規模でやらなくてはならない仕事だ。民間ではできず、官僚でなくてはできない仕事。

地球温暖化は事実かもしれない。地球の平均気温は上がっているのだろう。しかし、それが石油を燃やし過ぎで二酸化炭素がいっぱい出るから温暖化につながっているという因果関係は今のところ立証できていない。

もし、地球の自然な現象で地球が温かくなっているのだとすれば、これは人類がどう努力しても温暖化を阻止することはできない。しかし、仮に温暖化は人間の消費活動のせいだとなれば、規制をかけることができ、政府や官僚が中心になって仕事ができる。そこに官僚が飛びついただけの話ではないのか。地球温暖化についてはもう少し冷ややかに見る必要がある。

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参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2005:「地球温暖化」「気候変動に関する政府間パネル」

[とれんど]ハリケーンと温暖化 論説委員・桝井成夫 [2005年09月28日 読売新聞東京夕刊]

[社説]温暖化条例 議定書へ自治体の責任も重い [2005年03月30日 読売新聞東京朝刊]

温暖化防止法案 環境庁が骨格示す 排出抑制・削減へ都道府県に指導権限 [1998年01月26日 産経新聞東京夕刊]

温暖化対策措置法の導入 中環審が初の提言 /要旨 [1997年11月11日 産経新聞東京朝刊]

第2次橋本改造内閣の顔ぶれ [1997年09月12日 読売新聞東京朝刊]

環境庁検討会中間報告書・CO2抑制対策で2010年まで毎年3兆円が必要 [1992年09月10日 産経新聞東京朝刊]

通産省人事=6月23日 [1992年06月17日 読売新聞東京朝刊]

[ミニ時典]省エネ法 [1991年07月03日 読売新聞東京朝刊]

参考サイト:

環境省「STOP THE 温暖化」

地球温暖化対策の推進に関する法律

エネルギーの使用の合理化に関する法律

地球文化研究所 ディスクロージャー資料 役員

地球文化研究所 IPCCに関する動向

環境省「チーム・マイナス6%」のキックオフについて

東京都環境確保条例で定められた書類の提出について

全国地球温暖化防止活動推進センターあいさつ

京都府地球温暖化防止活動推進センター

地域のリーダとして活動する北海道地球温暖化防止活動推進員


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