衆議院選挙、本当に困ったその中身

岸田 徹 【岸コラ】
2005年9月12日(月)

辞意を表明した民主党岡田代表 【岸コラ】直近の衆議院選挙は、前回が2003年11月、その前が2000年6月だった。2000年6月の選挙で自民党は、保守党、公明党との連立政権でのぞんだ。

はじめて中央集権になった党本部

2000年の5月12日、自民党和歌山県連の岸本会長が自民党本部に野中広務幹事長と鈴木宗男総務局長を訪ねた。そこで、和歌山一区から谷本龍哉県議会議員を公認するよう求めた。

ところが、和歌山一区からは保守党の主要メンバーである中西啓介氏が立候補することから、自民党本部は中西氏を推したいと自民党県連の要請を断った。和歌山県連はそれでも谷本氏を擁立した。谷本氏は新人ながら中西氏を破り、自民党の地方県連の強さを見せ付けた。谷本氏83,830票、中西氏65,468票だった。

無所属で当選した谷本氏はその後自民党に「復党」し森派に所属。二回目の選挙(2003年)は共産党の新人候補を破り再選。そして、今回は小泉改革を前面に出して、民主党新人候補の岸本周平氏と対決した。岸本氏は大蔵官僚出身だが、去年退官しトヨタ自動車に入社した。その後トヨタ自動車に勤務しながら内閣府政策参与になり竹中さんの税制改革をサポートしていたという。岸本氏と竹中さんは高校が同じで竹中さんは先輩にあたることから、「師弟対決」などと一時評判になった。

谷本氏は、岸本氏を破り、再び再選を決めた。谷本氏(38歳)100,868票、岸本氏(49歳)78,621票だった。

谷本氏の初戦は自民党本部の意向を無視して行なわれ県連の支援で勝利した。その谷本氏が、民主党の強力な対立候補を跳ね返す。谷本氏本人は、衆議院議員になったときに、自分の議員活動がこのような展開になるとは思ってもみなかったはずだ。

選挙というのは、恐らくこういう事の連続で、各候補者がいくら不屈の信念を訴えても、その背景を無視することはできない。かつては県連の力で選挙が動いていた自民党だったが、小泉自民党はついに党中央本部の意向で動く自民党を生み出した。

国会は委員会で動く

自民党は衆議院で、絶対安定多数の269議席を大幅に上回る296議席を獲得した。日本の議会制度は、衆議院と参議院の二院制ばかりが目立つが、実際の国会運営は、委員会制度が担っている。国会は、法律を作ったり、改定したりするのが仕事だが、その仕事の大半は委員会で行なっている。

現在、国会には15の常任委員会と8つの特別委員会がある。常任委員会は、「法務委員会」「外務委員会」「総務委員会」「文部科学委員会」「経済産業委員会」など、各省庁の名前が付いた委員会がほとんどで、事務局はその省庁が担当。

特別委員会は、「災害対策特別委員会」や「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」など、問題が限定されているものを扱う。

ちょっと前に騒いだ年金法案は、厚生労働省の所轄なので「厚生労働委員会」で審議された。今回の郵政関連法案は総務省の所轄なのだが、恐らく小泉さんの入れ込みで竹中大臣がやっているという理由から、「総務委員会」がやらずに「郵政民営化に関する特別委員会」を作って扱った。

国会議員は、どれかひとつ、これらの委員会に所属することになる。どこにどれだけ所属するかは、選挙の結果によるわけだ。当然のことだが、選出された議員が多い党が、委員会に多くの議員を送り出すことになる。

郵政関連法案は、委員会で成立したが、衆議院の本会議で小林興起自民党議員が堂々と青票を掲げて反対を表明する映像が何度もテレビに出た。自由民主党という名前の党だから、そこらへんは、自由に民主的に投票を行なっているのだと思った人がいるかもしれないが、国会内の現実はそんなもんじゃない。委員会では賛否両論があっても、ひとたび可決され本会議に上がれば、一票の反対もない。投票結果は、常に賛成する党の議員の数と、反対する議員の数で表される。それは、まるで独裁国家のような結果だ。

そもそも、施政方針が一緒の人たちが徒党を組んでいるのが政党で、その支持政党に国民は一票を投じているのだから、政党行動としてはそれが当然と言われればその通りかもしれない。

より強固になる自民党と官僚の蜜月時代

今回の衆議院選挙で自民党が絶対安定多数を獲得したということは、これらの委員会に、過半数以上の委員を送り込むことができるようになったということだ。ここで、法案が審議され、可決か否決される。可決されたものは本会議に上がって採決されることになる。

この流れで、自民党が上げた法案は、すべて問題なく可決される仕組みができたことになる。これは、もともと民意がそうしろと言っているのだから、悪いことではない。いくら選挙で支持を得た政党の議員が多くても、議会のルールでその政党の意見が通らないのでは選挙の意味がない。だから、議会制民主主義の観点からして、問題なく可決されること自体には問題はない。

ところが、日本ではそれが大問題なのだ。どうしてかというと、日本の委員会制度は、各省庁が実質的に運営を仕切っているからだ。自民党が本当に国民の負託を受け止め法案を作成すればいいが、今までの自民党は各省庁にまる投げだ。今回の自民党のマニュフェストまでが各省庁の作文だと疑われている。

小泉さんは、「脱・役人天国」を掲げているが、前回の年金法案も今回の郵政法案も官僚の横暴で失ってしまった大量の国民のお金を不問にする法案だ。

年金法案では、グリーンピアなどを運営した「年金福祉事業団」を解散させてしまった。郵政法案でも、「郵便貯金・簡易生命保険管理機構」を作り今まで集めた郵貯や簡保のお金を隔離して管理しようとしている。すべて表舞台から具合が悪いものは消し去り、責任の所在を曖昧にしてしまうものだ。どうして、そんな法案がどんどんできるのかと言えば、官僚が委員会を実質的に支配しているからだ。

いったい誰が責任をとるのか

年金ではグリーンピアに消えたお金は誰が弁済してくれるのかこれで追及ができなくなったし、郵政では、財政投融資に消えて返済不能になったお金は国が補償することになる。つまり、すべて国民の税金で処分するということだ。これは、間違いなく国民の財産を搾取した国家犯罪だ。

中央集権が進んだ小泉自民党。官僚は、今までのように地方の動きに左右される自民党本部に裏切られることがなくなった。これまで以上に積極的に党本部にアプローチし蜜月時代を築くに違いない。

大量得票に自民党は重責を感じると言うが、彼らの責任は、官僚との馴れ合い政治を払拭できなかったときに、次の選挙で敗れるだけ。本当の責任を負ったのは、我々有権者で、選んだ政党がダメだったら、負債が増えて、納税で責任を全うする道しか残されていない。

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国会の委員会について詳しく書いた【岸コラ】:年金法案が見せた「日本の国会は官僚が占拠」の根拠(2004年4月30日)

参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2005:「衆議院」「公明党」

次期衆院選 自民党本部が1、3区で擁立見送りを県連に要求 地元反発=和歌山 [2000年5月13日 読売新聞 大阪朝刊]

衆院選 公明、1区は自主投票 「他党との協力困難」=和歌山 [2000年6月9日 読売新聞 大阪朝刊]

第42回衆院選 開票結果=近畿ブロック [2000年6月26日 読売新聞 東京朝刊]

21世紀クラブの4人が自民に入復党 [2000年12月13日 読売新聞 東京朝刊]

衆院和歌山1区 竹中さん“師弟対決”、元内閣府参与と前哨戦 [2005年8月28日 読売新聞 大阪朝刊]


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