もう誰も舵が取れない日本の国債発行

岸田 徹 【岸コラ】
2005年5月26日(木)

個人の借金については、銀行からのローンとサラ金からのローンには意味合いの違いがあることを前回のコラムで書いた。じゃ、国家の借金は例えて言えば銀行ローンかそれともサラ金ローンかどちらだろう。圧倒的にサラ金ローンの色彩が濃い。

国債には二種類ある。ひとつは建設国債で、もうひとつは赤字国債だ。

建設国債は国家建設のための負債で、税収でまかなえない道路だとかダムだとかの建設資金を借金するわけだ。これは、目的がはっきりしている。個人で言えば住宅ローンのようなもの。もしも住宅ローンがなかったら、家を持つにはコツコツと貯金して、家が買えるほどの貯金ができたときには、すでに人生が終わりという状態だろう。その家は子供のために建てたような羽目になる。これでは、お父さんが可愛そうだ。

建設国債も同様で、税収だけで道路を作ろうと思ったら、税金を払った人と道路を使う人が別の世代になってしまう。そこで、道路を使う世代にもその分を負担してもらおうということから、建設国債で道路を造るというのは理にかなっている。

ところが、お父さんやお母さんが毎日仕事で疲れ、ストレス解消のために六本木のクラブや新宿のホストクラブに通い詰め、お金がなくなったらサラ金から借りて、いつの間にかその額が500万円になっていた――となると、そのお金を子供たちが返さなくてはならないというのは不条理だ。そんなバカな事があってはならない。

国家もそんなバカな借金をしてはならないので、赤字国債は発行してはいけないと法律で決められている(財政法第4条)。もし、ストレス解消をしなくては回っていかない国家のシステムだったら、そのシステムを直すのが筋で、ストレス解消のために借金をするべきではないからだ。

ところが、ご承知のように赤字国債は小泉さんが年間30兆円以上は発行しないと一時約束したように、どんどん赤字国債は発行され、日本の国債は残高が増える一方だ。まさにサラ金地獄。借金を返済するために借金をする状態で、国債を償還(返す)ために、国債を発行(借りる)する状態なのだ。

なぜ、赤字国債を発行してはいけないという法律があるのに、発行できるのか。国会の決議があればいいという法律があるからだ。法律を作った時点では、万が一の場合を考えて、赤字国債を発行せざるをえなかったら国会でその旨の法律を作ってできるようにしたのだろうが、今では毎国会その特別法が承認されるという異常事態になってしまっている。法律の趣旨がまったく無視された国会運営だ。

しかし、ことは重大で、きれいごとを言っている場合ではない。サラ金地獄はアリ地獄で、国家財政はもうにっちもさっちも行かない。早く手を打たなくてはと言っている場合ではすでになく、国家が破綻したつもりで抜本改革をしなくては、必ず国家財政は破綻する。

国債の保有者 【2004年3月末現在財務省理財局資料より作成】

郵貯・簡保
24.6%

国債残高約570兆円の保有者内訳

銀行
21.2%
日銀
15.0%
その他金融機関
14.9%
財投
9.4%
公的年金
7.1%
海外投資家
3.7%
個人
2.6%
その他
1.6%
合計
100%
国債は市中消化が鉄則だ。今のところ国が発行する国債は、ほしいという人の方が多い。どんな人が国債を買っているのかというと、右の表のとおりだ。

この時点の国債残高は約570兆円だ。そのうちの4分の1が郵貯と簡保に預けた国民の財産で買われている。

郵貯は233兆円、簡保は124兆円の合計357兆円あるが、そのうちの約4割の140兆円が国債に代わっているということだ。

さらに複雑なのは、財政投融資(財投)の資金は郵貯のお金から多く出されているが、それがまた国債に回っているということで、お金に色が着いている訳ではないので追うことはできないが、ひょっとしたら国債残高の3分の1が郵便局からの資金ということが言えるかもしれない。

ここで、悪夢のようなあの日のことを思い出す。バブルが崩壊したときのことだ。バブルはどうしてできたのかいまだにはっきり解明はされていない。しかし、現象面として実感できたことがあった。こうだ。

絶好調の景気で東京を始め大都市圏のオフィス需要が加熱し、地上げが行なわれ、土地が上がった。その土地を担保に銀行がお金を貸し、そのお金で株が買われた。株は買われたので値が上がり、それを担保に銀行や関連の貸金業者が金を貸し、そのお金でゴルフの会員権が買われた。みんなが買うのでゴルフの会員権の値が上がり、それを担保にまた業者が金を貸し、そのお金で再び株を買ったり、レジャー施設の会員権や絵画を買ったりしたので、相場がつくものはすべて上がった。こうやって、個人の財産がどんどん値上がりし、バブル現象が起きた。

これでは日本経済が破綻すると日銀の三重野総裁が金融を引き締めて銀行からお金が出ない政策を採ったら、株価が下がり、株を担保にしていたゴルフの会員権が担保割れし、追加担保を入れるように銀行が要望したが、借りている方はそんな担保は株か他のゴルフの会員権しかないので、それを売って埋めようとしたのだが、全員がそうするから、一つ二つでは足りなく、あっという間に株とゴルフの会員権が売りに出され、それでも足りないと土地を手放した。結局終わってみると丸裸。いや、利息の分と過剰な消費の分は大赤字となった。バブルの最中に乗った人は、処分できない二束三文の財産と大きな借金だけが残った。

土地と株とゴルフの会員権は、その購入資金が密接に入り混じっていた。だから、何かの拍子にどれかが崩れるとすべて崩れたのだ。貸し借りは逆だが、国債と郵貯の関係はこれに良く似ている。さらに見逃せない関係がある。財投と年金資金だ。これらも国が預っているお金で国債を買っている。国は二重にこれらのお金を保証していることになる。

先進7カ国国債のムーディズ格付け

Aの数が多いほど信用力があり。
さらに数字でランク別されている。

日本
A2
アメリカ
Aaa
イギリス
Aaa
フランス
Aaa
ドイツ
Aaa
イタリア
Aa2
カナダ
Aaa
国が関与している負債は、国債の570兆円を筆頭に郵貯の233兆円、簡保の124兆円、厚生年金・国民年金の158兆円、地方債の196兆円と、これだけで1,280兆円に上る。これらの債務は、郵貯のお金で国債を買ったりしているので、ダブルところがあるから実際には少ないと財務省は一部で述べている。しかし、逆に考えれば、バブルのときと同じように、国債の価格が下がれば、郵貯にお金を返せなくなるわけで、何かの拍子にすべてが崩れる恐れがある。

この関係は民間企業にも及んでいる。民間の銀行は120兆円の国債を保有しているが、銀行(信用金庫を含む)が集めたお金はだいたい600兆円ほどだ。その2割が国債に回っているわけだ。もし、国債が暴落してこの2割が銀行に戻ってこなくなったら、預金者は我先に預金を引き出すに違いない。

日本は経済大国と世界から賞賛されるが、最近はその賞賛は冷笑に変わっている。日本ほど財政が豊かではない先進諸国でも、しっかり自国の財政を切盛りし健全なところばかりなのだ。G7で格付けがトリプルAでないのは、日本とイタリアだけ。イタリアはそれでもトリプルAに限りなく近い。

こんなに情けない国債を保有しているものだから日本の主要銀行もいい格付けがもらえない。東京三菱もA1でしかない。日本の企業でAaaはトヨタだけ。トヨタは日本国よりはるかに信用がある。日本国債のA2は、南アフリカ、イスラエルなどと同じ。近隣のシンガポールはAaa、台湾はAa3、香港はAa2と日本を懸け放す。

この格付けはあなどれない。もし、これ以上下がるようなことがあれば、日本の国債はもっと金利を払わなければ売れなくなる。その金利が将来新たな国債を発行させるのだ。ただ金利を払うだけのためにだ。まさにサラ金地獄で、そんな国債は危なくて買えない。借金財政は破綻する。日本経済は回らなくなってしまうのだ。我々の預金も貯金も年金も破綻してしまう。そんな日が本当に来るのか。構造改革ができないのだから、必ずやってくる。

個人がサラ金地獄で破産するのとまったく同じ理由で国家は国債で破綻する。破産寸前の人を助けられるのは結局親戚縁者しかいないのだが、国家の場合も同様だ。日本を救えるのはアメリカしかない。しかし、浪費大国日本を救ったら、アメリカも危ないのだ。

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このコラムに関連する【サカスト】 「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」(2005年6月25日寄稿)

参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2005:「国債」

債務管理レポート2004−国の債務管理と公的債務の現状−(財務省理財局刊行)

参考サイト:

ムーディーズ ジャパン株式会社

平成十六年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律


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