銀行で借りた金は堂々と言えても、サラ金から借りている事がバレたら困る訳。

岸田 徹 【岸コラ】
2005年5月24日(火)

いくら借金をしているかよりは、どこから借金をしているかの方が気にかかるものだ。銀行から2千万円を借りているのは平気で言えるが、サラ金から100万円借りているのはちょっと言えない。この不思議はどこからくるのか。

銀行から借りているお金と、サラ金から借りているお金はどう違うのか。ピンとくるのが取立てだ。銀行から借りているお金が返せなくなっても、怖いパンチパーマのお兄さんが来るとは誰も想像しない。でも、もしサラ金から借りた金が返せなくなったら、昼夜を問わず家に来られて、ドアを開けないと扉に「金返せ、泥棒」と張り紙を張られ、電話がかかれば「死ね」「売れるものはなんでも売れ」「娘の命はないものと思え」と脅される。勤め先にも電話がかかり気まずい思いをする。こんな幻想がよぎる。

しかし、実際には取立ては午後8時以降は行うことができないという規制もあり、いわゆるサラ金で借りた場合はそういう事はない。こんな場面はヤミ金といわれる最初から金は返らないだろうと承知で貸す悪徳業者のものだ。

こんな幻想を取り除いてみると、銀行からの借金とサラ金からの借金では何が違うのかが分からなくなる。それなのに、なんでイメージが違うのか。これは、はっきり中身が違うからだ。

基本的に銀行が貸すお金は何に使うかが明確なもの、サラ金が貸すお金はなんでもOKという違いがある。借りる方はその点をよく心掛けていて借りる先を選んでいる。ところが、よく調べてみると、銀行にも何に使うか聞かない「フリーローン」というのもあるし、サラ金でも「進学ローン」はちゃんとある。

使う目的がはっきりしているお金は、その目的が自分のためになっている間は必ず返済されるという基本原則がある。例えば、英会話の教材。これをローンで借りた場合を考えればよく分かる。

毎日5分間聞いているだけで、ネイティブのように英語が聞けて話せるという触れ込みで毎月4,663円なら安い、12回で完璧なら夢みたいだと思っていても、最初の一ヶ月で挫折してしまえば、2回目以降の4,663円は払いたくなくなるものだ。

反対に、みるみる上達して、本当に外人の言う事が分かるようになると、4,663円の12回は必ず払う。人は効果があるものにはいくらでも金を払うが、自分のためにならないものには10円だって払うのが嫌なものだ。

この原則からすれば、何年もかけて返済するのに住宅ローンは滞りが少ない理由が分かる。住んでいて快適ならば返済するからだ。それが、地震で家が倒れてローンだけが残った場合は、返したくなくなる。この感情は、人間性とはまったく別なもの。まじめで几帳面な人柄でも、住んでもいない住宅のローンは返したくないのが人情というもの。

同様に、進学ローンで入学した学生が、こつこつまじめに学校に通っていれば、借りた親は満足して返済するが、万一途中で学校に行かなくなってしまえば、親だって返したくなくなる。これも人情。

銀行とサラ金の金利

【2005年5月現在】

貸し手
東京三菱銀行(固定)
武富士
教育進学ローン
6.375%
13.5%
マイカーローン
7.875%
――
出産ローン
――
13.5%
リフォームローン
6.375%
――
ウェディングローン
7.875%
17.5%
転職ローン
――
17.5%
フリーローン
9.375%
27.375%
そんなこんなはあるけれど、住宅ローンや進学ローンは多くの場合順調に住んだり通学したりの率が高い。返済がちゃんとされれば、銀行は儲かるので、必要以上の金利を取ることはない。だから、住宅ローンや進学ローンの金利は安い。

これとは反対に、返済が滞りがちなローンは、その分の穴埋めをしなくてはならないので、金利が高い。例えば、右の表でも分かるように進学ローンの金利より、ウェディングローンの金利の方が高い。これは、退学の率より、離婚率の方が高いからという理由ではない。進学ローンは、入学後ちゃんと学校に通っている間にローンの返済がなされるので、学校に行っている間の効果に対して費用を払う感覚でお金を返そうという気持が働くが、結婚式は終わってしまえばそれで終わりだ。その式や披露宴の効果が結婚生活に影響して返済しようという気持に貢献するということはない。

「トラベルローン」が意外に少ないのはそのためだ。旅行が終わってしまうとそれまでで、返済意欲がわかないのだ。最も典型的なのが「美食ローン」。いくら鉄腕シェフのめったに食べられない高価な食事でもローンは絶対ありえない。食べたら終わりだからだ。

ところが、そのようなニーズがないわけじゃない。例えば、「六本木ナイトライフローン」とか「歌舞伎町ロイヤルローン」があれば、借りる人は多いはずだ。一晩で何十万も使うのだとしたら、貸すほうもなかなかいい商売になる。ところが、豪華な夜も日が昇ればすべて終わり。そのために使った金を毎月jコツコツと返そうなんて思う人はいない。万一そんな人に貸せば、回収には大変な努力が必要だ。

そういう人たちのためのローンが「フリーローン」といわれたり「カードローン」と呼ばれるリボルビング式のローンだ。最初から返ってこないことを想定しているローンなのだ。50万円の貸し出し枠をつくり、その金額の範囲ならキャッシュカード感覚でいつでもCDから下ろせる。返済は毎月一万円でOK、その中に金利が入っている。そこから30万円を引き出して歌舞伎町に行けば、もうその30万円は帰ってこない。銀行やサラ金はそれでいいのだ。その30万円は一生貸し漬けて金利を取る。

こういくローンは、何に使うかを聞いても意味はないのだから、他でどのぐらい借りているのかが重要になる。サラ金業者は、この情報のやり取りをしているので、「むじんくん」(アコムの自動契約機)でも審査ができるのだ。例えば、武富士で50万円借りていて順調に返済していれば、アコムでも50万円借りられるが、アコムで借りた後にすぐレイクでも借りようとしたらこれは怪しいので自動契約機は「No」と答える。

この情報のやり取りはサラ金業者間だけなので、銀行はできない。だから、銀行は過去の取引はどうなのかとか勤め先はどうか年収はいくらか家族構成はどうなっているかを聞かないと融資ができない仕組みだ。これによって、貸す方の得意分野が自然とできたと言える。

そのために、他人に言えないお金を借りるのがサラ金で、他の人にも堂々と言えるのが銀行のローンという図式になってしまった。だから、サラ金で金を借りている人イコール無駄遣いをする悪い人というイメージが付きまとう。ところが、実際は、銀行でお金を借りている人もサラ金でお金を借りている人が多くいるというのが業界の常識だ。昼と夜の顔がちゃんと分かれているのだ。

これに関連して、もうひとつ言えることがある。それは、他人にお金を借りた理由が言えるものは返しやすく、言えないお金は返せないというバックグラウンドがある。例えば、住宅ローンのお金が返せなくなったとか、事業に失敗して銀行から借りた運転資金が返せなくなったとか、リストラにあって息子の進学ローンが返せなくなったという場合には、親戚縁者が助けてくれる場合が多い。

ところが、サラ金で借りたお金は何に使ったのか問い詰められても、「生活が苦しくてつい」という理由なら言えるが、200万円借りているとその理由が成り立たない。クラブ通いや浮気、博打といった言葉がぞろぞろ出てくると助けてくれる親戚もいなくなる。そこに返済の催促がくるとヤミ金業者が待ってましたとやってくる。

お金が返せなくなった場合はなるべく早くバンザイすることが大切なのだが、なんでそんなに金を借りていたのかが言えないと、その時期がどんどん延びてすべてを失うことになる。

この記事の読者数:


参考サイト:

東京三菱銀行「国内預金金利・ローン金利」

武富士「店頭商品のご案内」


Copyright (C) Toru Kishida 2005 All Rights Reserved.