金利もイメージもサラ金よりいいのに、銀行が成功しない理由

どこから、いくら借りているのかの情報が流出したら、こりゃ大変なことになる。借金情報は病歴情報とともに個人にとっては最も隠したい個人情報だ。これらの情報を一元管理しているところはない。だから、今の日本では流出しても一部の情報で、病歴でも借金履歴でもすべての情報が流出することはない。しかし、本来はどこかで一元管理すべき情報なのだ。理由はこうだ。

今まで、どこでいくら借りていたのか、また現在はどうなっているのかの情報は、貸す側にとっても重要な情報だが、借りる側にとっても大変重要な情報だ。

重要な理由は二つある。ひとつは借りるときの信用をアピールできる点。もうひとつは借金地獄に足を踏み入れないためのものだ。

信用をアピールする点とは、借りた金をちゃんとこうやって返しているという証明で、過去がそうなんだから将来もそうするという人間の信用を裏付ける「証拠」だ。自分の借金履歴をどこかでちゃんと一元管理してくれていたら、まじめな人が金を借りるときはまさに福音だ。

例えば、武富士で50万円を借りて、毎月3万円ずつ返済して22回一回も遅れることなく返済したとする。この人は、約2年間で66万円を返す能力があると判断できる。その後三井住友銀行に行って、100万円を借りたいと申し出た。ぶっきらぼうな行員が端末をたたくと、武富士で借りた金を全部返済している。急に銀行員の顔がニコニコ顔になって「こちらのお申込書に判を…」。銀行は武富士より金利が安いので同じ毎月3万円の返済でも3年で100万円返せる。お客も嬉しい。

ところが、実際には武富士で借りた情報はどこの銀行に行っても見ることはできない。なので、「何にお使いですか」からはじまって「どちらにお勤めですか」「年収はおいくらですか」「勤めて何年?」「持ち家ですか、それともアパート?」「会社の役職は」なんてしつこく聞かれる。アパートに住んでいる人はお金を返さないとでも言うのか。会社が小さいと信じてくれないのか、昨日勤め始めたからお金がいるっていうのに、何年も勤めていないとダメなのか。本来100万円借りることと、どこの会社に何年勤めているかは関係ないはずだ。こんなバカな申し込みが銀行で普通に行われているのは、お客の返済履歴が分からないからだ。

もうひとつの借金地獄だが、誰でもお金が必要だから借りに行く訳だが、「必要」の度合いが人や時によって違う。だから、借りる方も借りた責任はあるが、貸す方も貸した責任がある。貸すことによってその人がどんな運命になるのか、事前に察知しアドバイスするのが金融業界に勤めている人の責任だ。この責任が情報がないために果たせない。それをいいことに担保のある人にはどんどん金を貸す。返せなければ命まで取るのが日本の常識だ。これは間違っている。小学生に100万円貸すのと同じで、返せない人に金を貸してはいけないのだ。

この責任を果たすためには、どこでいくら借りているかを知らないといけない。これが、銀行とサラ金と信販会社の間では分からないのだ。どうしてかというと、こういう個人情報を一元管理している機関がないからだ。情報機関はあってもバラバラ。どうなっているかというと、こうなっている。

武富士で50万円借りたとしよう。次の日にアコムでもう50万円借りようとしても恐らく貸してくれない。全国のサラ金業界は「日本情報センター」という情報機関に加盟していて、借りた情報はそこに登録されるから、返してもいないのにまた50万円借りようとするのは「おかしい」と判断されて「ノー」が出る。もし借りまくるのなら、情報機関に登録される前の一瞬の隙間でないと成功しない。

もちろん、武富士で借りた50万円はいついくら返したか情報機関に登録される。だから、サラ金同士で貸し過ぎはないのだ。サラ金業界は自分たちの情報を仲間に公開しながら自分たちを守っている。

これが、三井住友銀行でカードローンを借りるとどうなるか。銀行協会の中にある「個人信用情報センター」に登録になる。しかし、返しているかどうかは登録しなくていいので分からない。返せなくなって初めて「事故情報」として登録になる。だから、銀行では返さない「犯罪者」には二度と貸さないが、返したり返さなかったりの「延滞常習者」には貸してしまうのだ。これが返せなくなったときには雪だるまの借金になっている。

クレジットカードでも借金ができる。キャッシングやカードローンが気軽に借りられる。この情報はどうなのかというと、「シー・アイ・シー」(CIC)という信販業界の情報機関に登録になる。しかし、ここでは返せなくなった「事故情報」しか登録にならない。だから、キャッシングは持っているクレジットカードの枚数だけできてしまう。

ちまたで言われている「ブラック情報」というのが返せなくなった「事故情報」や破産や不渡りの情報だ。これに対しサラ金業界でやり取りしているどこでいくら借りていくら返したというのが「ホワイト情報」。消費者にとって自分の信用を裏付けるのが「ホワイト情報」だ。ブラック情報は、返さなかったという一時点の情報だ。これに対しホワイト情報はいくら返しているという継続期間の情報だ。お金が返ってくるかどうかは長い返済期間の状態を予測する訳だから、点の情報では役に立たない。ホワイト情報こそが貸す側も借りる側も守る有力な情報なのだ。

ところが、ホワイト情報はサラ金業界ではやり取りされているが他の業界ではさっぱり通用していない。これじゃ、消費者を借金地獄から守れないと、三つの情報機関がまとまるように20年前にCRINという情報を交換するネットワークができた。サラ金の貸し過ぎが鬼のように言われていた時期だ。ところが、この情報はブラック情報の交換だけ。理由は、銀行業界も信販業界もホワイト情報の蓄積がないからだ。なんでホワイト情報の交換をやらないのか。

理由は、そんな情報を出したらいいお客を取られてしまうという銀行や信販会社の「恐れ」のせいだと言われている。確かに東京三菱銀行で住宅ローンを一回の滞りもなく返済していたら、三井住友銀行が「うちでは、0.5%お安く貸します」なんて揉み手で寄ってくる感じがする。しかし、サラ金業界だって事情は同じなのにホワイト情報の交換をやっている。理由は違うところにあるのだ。実は、役所の縄張りが違うのだ。

銀行は旧大蔵省の銀行局が管轄だ。サラ金は旧大蔵省でも財務局という出先機関が管轄。銀行局とは格が違う。クレジットカードや信販会社などは旧通産省の管轄だ。

三者とも所轄官庁が違うために一緒になろうとリーダーシップを取るところがないのだ。彼らは業界を守ることには積極的でも消費者を守ることには消極的。業界を守れば自分たちがそこに天下れるからだ。

ところが、最近は省庁再編と天下りへの批判が強いため、業界が置き去りにされている。そこに銀行の不良債権処理から儲かる体質への圧力がかかり、銀行もサラ金によだれを垂らすようになった。おりしもサラ金業界は創業者の世代交代の時期で弱まっていたところに大御所の武富士会長が盗聴事件を起こしてくれた。銀行業界はサラ金業界を一挙に飲み込もうとしている。金利が高い消費者金融は収益面では魅力的だからだ。

銀行がサラ金をやれば、イメージがよくなり借りる人も増えるというのが大方の予想だ。しかし、その予想は20年前だったら現実になったが、今ではちょっと遅すぎる。

サラ金のイメージが上がっている点と、サラ金業界がまじめに守り続けた3つのSのためにいまやサラ金ファンが多いのだ。融資はシンプル・スピード・シークレットの3つのSがないと成功しない。つまり、簡単ですぐにやってくれ、なおかつ絶対内緒。最初の二つは銀行でもすぐにできるが、最後のシークレットは日本の銀行はどうしようもなく意識が低い。平気でセールスの電話をしてきて「いつもご利用ありがとうございます。今日は夏の特別金利についてご案内いたしたいのですが」なんて本人かどうかの確認もなく言ってくる。

旦那の借金は奥さんにはタブーだし、奥さんの借金は旦那にはタブー。社長の借金は専務には内緒。これはプロなら常識。だからわざわざサラ金にお金を借りに行くのだ。

銀行で借金をしたら情報がなんかの拍子に表に出るのではないか。そう疑っている人は意外に多い。だから、銀行がサラ金をやっても金利が安くイメージがいいからという理由で雪崩現象が起こるとは言えないのだ。サラ金業界は世間から白い目で見られながらここ30年間で貴重なノウハウを身につけた。情報は盗めてもノウハウはなかなか盗めない。

2004年6月28日(月)

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参考サイト:

三者協議会とCRINについて

三井住友も動いた! 武富士“運命”の判決