誰のものだか分からない新聞社

読売、朝日、毎日、産経、日経と日本を代表する新聞社の株主が誰なのか。調べても分からないという事実があったとしたら、どう思うだろう。看板だけはあっても、それが誰の看板なのか分からない会社の書いた記事をいったいどう判断したらいいのだろうか。

同じ新聞でも聖教新聞や赤旗は一般紙とは言わない。それなりに編集方針がしっかりしているし、発行部数も聖教新聞は550万部と毎日新聞の400万部より多い。赤旗は35万部と東京のシティリビングの倍ほどある。しかし、多くの人は聖教新聞や赤旗に報道の客観性や中立性を求めていない。理由は、聖教新聞は創価学会のものだし、赤旗は日本共産党のものだからだ。

新聞は誰が発行したのか、本当は誰もが気にしている点なのだ。でも、日本を代表する中立公正の新聞各社が誰のものなのかは聞こうとしないし、新聞社も積極的に自分の会社を公開しようとしない。

読売新聞社の株主は持ち株会社の「読売新聞グループ本社」だが、そのグループ本社なる株主が誰なのか、つまり誰のものなのかは非公開。説明されていない。読売新聞社は1924年(大正13年)に警視庁の警務部長だった正力松太郎が警視庁を辞めて買収した会社だ。恐らくこの歴史を考えると正力松太郎の相続人が株主なのだと思う。長男の正力亨氏、長女の婿である元自治省事務次官の小林与三次氏、正妻以外の人との間に生まれた正力武氏は読売新聞社と読売新聞が作った日本テレビの経営にも顔を出す。

朝日新聞社の株主は直接電話で聞いたところでは、上野家と村山家に社員が株主だと広報の人が答えていたが、積極的な返答ではない。上野家と村山家などと答えるからにはそれなりに影響があるのではないかと勘ぐりたくなるが、表面的には歴史が続いている。朝日新聞は村山龍平が始め、それに上野理一が加わり両名が創始者。出資金を村山が3分の2、上野が3分の1出したとされ、以降二人が朝日新聞の社主だ。NHKの調べによれば、現在の社主は村山美知子氏と上野尚一氏だ。

毎日新聞社は日本最古の新聞だが、原敬や小松原英太郎など政治家が社長になった時代から躍進が続いた。オーナー色が薄く石油危機のときに経営が悪化し、1977年に新会社を作って再出発を図った。NHKの調べによれば株主は社員株主会と栃木の下野新聞社だ。

産経新聞社の株主はフジテレビ。フジテレビの株主はニッポン放送と文化放送。ニッポン放送の1割弱の株を鹿内宏明氏が持っている。

日経新聞は、世界一の経済新聞だが、株主は社員株主会だ。子会社が35億円の不正経理を行い主犯格3人を東京地検特捜部に刑事告発していたが、今回その3人が逮捕されて昨日の新聞に載った。日経新聞も一面を裂いて報道しているが、すっきりした報道ではない。誰が何のために誰を追及しているのかが分からない。会社が誰のものだかはっきりしていないからだ。

株式が公開されていないのは、日本の新聞社だけではない。世界的な傾向だ。理由は中立な報道を続けるために、偏った株主に左右されることを恐れるためだ。朝日新聞の株をビル・ゲイツが全株買収したら、ウィンドウズをめぐる報道は、朝日一紙では納得できなくなるだろう。アメリカをめぐる報道も圧力がかかっているのではないかと思いたくなる。報道の客観性は確かに失われる可能性が大きい。

しかし、それより悪いのは誰がその会社を所有しているかが分からないことだ。仮にビル・ゲイツが朝日新聞の大株主になったら、読者はそのつもりで朝日の記事を読めばいい。いくら中立公正な報道姿勢をうたっても、記事は人間が書くものだ。書く人の立場で物事は違って見える。一番重要なことは、その記事がどういう立場で書かれているかが明らかになっていることだ。

新聞社は誰のものだと聞けば、新聞社の人は読者のものだと言うだろう。読者が読者に記事を書くはずがない。みんなのものと言えば聞こえはいいが、みんなのものなんていうものはこの世の中にはない。結局誰のものかはっきりしないと無責任な行動が横行し、私物化する人が出てくるのだ。

2003年11月25日


関連する岸田コラムは「テレビ局って結局、何者?

参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2003

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