鹿児島市で五つ子の赤ちゃんが生まれ、ピンクレディーの「ペッパー警部」のリズムに合わせ子供がテレビの前で振り付け通りの踊りをしていた。日本は戦後生まれの人口が半数以上となった。1976年だった。

この年の一月、中国の周恩来首相が亡くなった。4年前田中角栄と電撃的な日中国交正常化を図った主役の一人だ。まるで、事をあわせるように翌二月アメリカ上院の公聴会で、ロッキード社がエアバスのトライスターを売り込むために36億円もの金を児玉誉士夫と小佐野賢治などに渡したと証言が行われた。

この資金はどこへ行ったのか。トライスター購入の約束がされたのは田中−ニクソン会談とされ、田中角栄は5億円の賄賂を受け取った疑惑で東京地検特捜部に逮捕された。5億円の授受を否定しながら田中角栄は脳梗塞で倒れた。

ロッキード事件はアメリカから起こった。賄賂を受け取った日本で問題が発覚したのではなく、送った側の国で問題になった。なんでだ。

この問題は、田中家にとって忘れがたいものになったのは想像するまでもない。田中真紀子は外務大臣になってアメリカのアーミテージ国務副長官との会談をすっぽかすほど父親の命を奪ったアメリカが嫌いだ。

小泉政権は、官房長官の福田康夫と自民党幹事長の安倍晋三の二人が支えている。小泉首相の後ろ盾はブッシュ大統領だと言われるほど、小泉純一郎はアメリカが好きだし、アメリカ頼りだ。

安倍晋三も「アメリカを抜きにした世界政治は考えられないのは事実」とイラク問題でも北朝鮮問題でも常にアメリカとの歩調を主張する。

角福戦争は、佐藤栄作内閣の後継を図る自民党の総裁選挙で、田中角栄が福田赳夫に大差で勝ったところから始まった一大戦争だ。大量の金が流れたとされるこの総裁選後、すぐに田中-ニクソン会談がハワイで行われた。ここでトライスター購入を約束。そのすぐ後に電撃的に田中角栄は日中国交正常化を果たした。アメリカの頭越しだとされている。翌年にはソ連を訪問し、ソ連が自分の領土だと主張する北方領土問題を日ソの問題として存在していると言わしめた。田中角栄は日本をアメリカだけが頼りだとする体制から、独自外交を展開しようと見せていた。ロッキード事件はそんな田中外交に釘を刺すためにアメリカで発覚させたとの疑念がある。

小泉−福田−安倍連合は、アメリカとの同盟を機軸とした日本を展開しようとしてる。田中真紀子はこの点で真っ向から対立する歴史を持っている。

反金権で総辞職をした田中内閣の次に組閣された三木内閣で安倍晋三の父、安倍晋太郎は初入閣し農林大臣になった。福田康夫の父、福田赳夫はその時経済企画庁長官で入閣し副総理。どちらも反金権、反田中だった。

田中真紀子はスカートの裾を踏んでいた小泉純一郎にその憎悪の念をあらわにしているが、それだけではない、その政権を支える福田、安倍の二人に対する感情を無視する事はできない。彼女は父親が権力の絶頂期にあった時に「お嬢様」とちやほやした連中たちが誰も来なくなった歴史をずっと父親側で見ていた。そこには福田、安倍の父親からのストーリーが存在する。

田中真紀子が小泉−福田−安倍連合を崩すほどの力はない。ただ、人気取りのはずの安倍さんが田中真紀子の対応を誤ると、このトライアングルは内部から崩壊してしまう弱さがある。恐らく田中真紀子はそれを知っている。そして、わざわざこの時期に嫌疑なしの不起訴を宣言させたのは、あの野中広務ではないだろうか。


参考資料:

Microsoftエンカルタ総合大百科2003

参考サイト:

第66代三木内閣

1976(昭和51)年

野中広務素顔と軌跡