なんで、調子が悪いメガバンク行員の給料が下がらないのか。潰れるという危機感がないからだ。

じゃ、どうしたら下げることができるか。安い会社の優秀な人材を雇い入れればいい。

一度上った給料を下げるのはなかなか難しい。士気が極端に下がるからだ。士気を上げたまま給料を下げることはできない。しかし、給料が安いか高いかは比較の問題だ。だから、自分よりよく働く人で、自分より優秀な人が、自分より給料が低ければ、落ち込んでいる暇はない。

銀行から他の業界へ転向する人はいるが、銀行へ他の業界から転向する人は極端に少ない。そんなに、難しいことを銀行はやっているのだろうか。そんなことは全くない。ただ、そう思わせるように自分の砦をしっかり囲っているだけだ。

最近テレビでよくコマーシャルをやっている東京スター銀行。前の東京相和銀行、その前の東京相互銀行だ。私が最初に勤めた平和相互銀行のライバル行だったが、東京相互の面接に落ちて平和相互を受けに来る人が多かった。ワンマン社長で積極的に業績を伸ばしていた。しかし、バブル崩壊後すっかり裏目に出て経営が破綻した。そこをアメリカの投資会社ローン・スターが買収した。

先月、タッド・バッジという43歳のアメリカ人が東京スター銀行の頭取になった。日本で始めての外人頭取。しかもこの若さは最年少頭取だ。彼の就任会見は、この言葉から始まった。

「健全で革新的な成長に向け、温かいご指導、ご鞭撻をお願いします」

通訳を想像するだろうが、彼が日本語で放った言葉だ。次から英語だろうと思うかもしれないが最後まで日本語。しかも、日本人より品があり説得力のある日本語だ。

私は彼をテレビで見た時に、どこかで会ったような気がした。彼はアメリカ最大の金融機関GEキャピタルにいたらしいが、その前は日本のシティバンクにいたらしい。私も1987年から3年間シティコープにいた。その時見かけた気がする。

この時の私の上司で個人融資部門の長だったT氏は日本人だがフォードの日本支社から来た人だ。その下でともに働いていたM氏はやはり銀行出身ではなかったが、シティバンクの個人金融部門で中心的に働いた。彼は、タッド・バッジ頭取とともに東京スター銀行に乗り込んでいる。

旧日本長期信用銀行の新生銀行はやはりアメリカの投資会社であるリップルウッドが買収したが、その頭取も日本のシティバンクから行った八城さんだ。彼は私がシティコープにいる時に日本代表に就任した。生え抜きではない。石油会社のエッソからやってきた人だ。八城さんがシティコープに来た時は、エッソから人事やシステムなどの部門長を連れてきた。別に業界が違っても銀行業は勤まる。

八城さんもシティバンクから何人か連れて新生銀行に行ったようだ。アメリカのシティコープの会長だったジョン・リードまで新生銀行のアドバイザーにしている。世界最大級の金融機関シティコープには、他業態から来た優秀な人材がゴロゴロいた。その人たちがシティを育て、シティがまた優秀な人材を育て他業態に排出していた。

残念ながら日本の銀行にはそういう人材の循環がない。東京三菱銀行の頭取が新日本石油の出身だとか、三井住友銀行の頭取がアサヒビールから来た人だとか、同じグループでも逆はあっても銀行のトップが他業界からの人だなんて銀行員の頭では考えられないはずだ。日本の会社でマネージャークラス(部課長クラス)が入ったり辞めたりしたら、あそこは組織に問題があると噂が立つのは必至だ。

この人材のよどみが、頭と組織を硬直化させている。銀行も早く人材を流動化させないとどんどん遅れていく。流動化すれば自然と給料は世間が納得する水準になっていく。そして、これがグローバル時代の人生発見と自分の力で給料を上げるシステムだ。組織人間からの脱却は人材流動化のバックグラウンドなくしては創出できない。


参考サイト:

Yomiuri-Online金融ニュース

新生銀行役員の状況

経営者インタビュー