ディーン・ウィルソン(33)は、アメリカのツアー予選会を7回失敗し、同僚のハワイ出身デビッド・イシイに「日本はいいぞ」と誘われ、一念発起でアジアツアーに転向したゴルファーだ。

確かに日本のコースはメンテナンスも行き届き風景も素晴らしく、主戦場としては最高だった。しかし、成績が悪く試合に出られなければ、日本に滞在するだけでお金が出て行き、早くアメリカのツアーに帰りたいという思いと戦う日々でもあった。

母方の祖父母が福岡県出身で、お母さんはヒロコさんという日系二世。お母さんがハンディ10のゴルフ好きで、13歳のときからゴルフを始めた。日本人の血が流れているとは言え、日本語はしゃべれないし習慣も違う。ホームシックと戦いながら、頑張った。

去年のつるやオープンでは、谷口徹を堅実なゴルフで振り切るなど、日本で6勝の成績を上げ念願のアメリカ・ツアーに参戦する事になった。

今日は、そのツアーの試合がテキサスである。初日の予選だが、同じ組で回る選手に今、度肝を抜かされている。試合で優勝すれば記者会見があるが、試合の前に記者会見を受けるのは受ける方も初めてなら、やる方も初めて。クラブハウスでは、支度のロッカーの部屋が違う。同じ組で回る選手は女性なのだ。

今、世界の目は、この女性に集まっている。アニカ・ソレンスタム。32歳の世界最強女性ゴルフプレーヤーだ。アメリカに住んでいるが、スウェーデン出身のスウェーデン人だ。

数年前まで、オーストラリアのカーリー・ウェブと世界一を争っていたが、今は独走状態だ。

ゴルフは個人競技だが、相撲やボクシングのように直接対戦相手と戦うゲームではないので、男女がトーナメントに出場しても戦えないゲームではない。ところが、ゴルフに限った事ではないが、ここにも強烈な男の世界があって、彼女を男子の試合に参加させる事については大変な反対があった。

しかし、反対があればあるほど盛り上がるのも事実で、今回の試合のスポンサーであるアメリカ銀行がスポンサー枠を使いアニカに声を掛けた。他にも2〜3あったようだが、スケジュールを都合でき開催コースが有利である点で、出場する事になった。

事前の興味はもっぱら、予選を通過するかどうかだが、そんな事を興味の対象としているのは男の意地としか思えない。

アニカは、パー72のゴルフ場で男子の記録と並ぶ59のスコアーを出している。平均の打数は68.70。これを下回れるのは、世界でたった一人タイガー・ウッズの68.56。

ゴルフは正確な方向と正確で更に伸びる距離が実力として備わっているかが求められる。概して男と女のゴルフの差があるとすれば距離だ。

世界で一番飛ばす女は福島晃子で269.3ヤードだ。アニカは265.6ヤードの4位。タイガー・ウッズは男では6位の293.3ヤード。飛ばす距離ではウッズとアニカの間では30ヤード近くあり、実際の試合では50ヤード近く離される可能性がある。

しかし、ゴルフはメンタルなスポーツだ。アニカが挑戦意欲満々なところで、男子ゴルファーは負けたときに何と言おうか内心穏やかでない。

試合前にインタビューを受けたディーン・ウィルソンは、歴史的な試合を一緒にできることは誇りに思うと言いながらも、

「僕の調子が悪ければ(アニカだけでなく)誰でも僕に勝てるよ」(サンスポ)と、いつもの調子が出なかったから負けたのだと戦う前から言い訳のような感じだが、もっぱら出場選手の代弁だと好意的に受け入れられている。なにせ、その表情がすっかり凍り付いて、言ったあとは大きく息をついたのだから。

政治的には大変な賭けだと言われている。もし、彼女が予選落ちするようなことがあれば、やっぱり女はまだまだと公然と言われる口実を作る。予選を堂々と突破し優勝戦線に絡めば、多くの女性ゴルファーに夢を与えると同時に、ゴルフは力ではなく頭のゲームである事を見事に証明する。更に、自由自由と口先だけのアメリカ男子社会に衝撃的な事実を突きつけることになる。アメリカ社会に潜む権威主義社会にも衝撃を与えるのは確実だ。

どんなプレーをするのか楽しみだ。ぜひとも本領発揮でのびのびとプレーしてもらいたい。


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宮里 藍

参考サイト:

サンスポcom

週刊ゴルフダイジェスト 3/11号

asahi.com

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