煙幕の中の闇じゃ見えない

わかしお銀行と三井住友銀行が、今日合併した。資本金208億円のわかしお銀行が資本金1兆3千億円あまりの三井住友銀行を合併するのだからニュースだ。

ただ、三井住友銀行は昨日と変わらず今日も日本の巨大銀行として営業している。信用不安もない。そして三井住友を飲み込んだはずのわかしお銀行の名前は今日からはない。

変わった事といえば、1兆3千億円あまりあった三井住友銀行の資本金は、合併されて5,600億円になった。看板は変わらずとも資本金が減った。小さな会社になったのだ。資本金を減らす事を減資というが、減資は欠損を穴埋めする際によく用いる手法だ。

会社は資本金を株主が出して事業をスタートさせる。その資本金で事務所や土地の購入をしたり、設備を整えたりする。その後も新しいプロジェクトを始める際に資本金を増やして新事業を行ったりする。いわば資本金は会社の事業のもと金だ。

会社は順調な時ばかりでなく、損を出すこともある。その損を資本金や借入金で一時的に資金繰りをカバーしたりするが、いよいよその損をカバーしきれなくなった時、株主がその損を被ろうとする時がある。自分が出した資本金と事業の損失を相殺するのだ。つまり自分が出資したお金で、企業が生んだ損失を穴埋めしようとする。株主の最終的な責任の取り方だ。出資したお金がなくなるということは資本金が減るという事で、これが減資だ。

今回の三井住友銀行もわかしお銀行に形式的に合併させられる事でこの減資を実質的に行った感じだ。何をそんなに損したのか。三井住友銀行には保有する株式などの有価証券の価格が下がっているための損失が1兆円弱あると言われていて、この損失をカバーしたかったというのだ。

これをカバーしないと帳簿上利益が出ない恐れがあるため、株主に配当できなくなる。株主には公的資金を注入した国もいるため、配当しないと経営参加してくると恐れている。三井住友銀行は国有化されることを恐れているというのだ。

だから、帳簿の上の損を出さないように最善の努力をしただけの話だというが、そうだろうか。実質的に減資効果を狙ったのならその損失は株主が負う事になる。「減資」と直接言うと経営責任を追求されるから、経営が行き詰ったわかしお銀行を合併する事でごまかしたのではないだろうか。

三井住友銀行も銀行本体の業務努力とは直接関係のないところで、株がどんどん下がるから含み損が出て大変かもしれないが、そういう株を保有している会社を経営しているのだから本来株主に対して経営責任を取らなければいけない。

一方今回は、三井住友銀行サイドだけが問題なのではなく、実はわかしお銀行にも古傷があって、こちらも経営責任がうやむやになっている。わかしお銀行はもともとさくら銀行が持っていた銀行で、さくら銀行が三井住友銀行になって今回の合併だ。

わかしお銀行の前身は太平洋銀行だった。と言ってももなじみのない行名だ。無理もなく名乗っていた時期が短い。太平洋銀行の前身は第一相互銀行だ。

第一相互銀行は、旧相互銀行の中では中堅の銀行だったが、「バブルの帝王」の異名を持つ早坂太吉の最上恒産との癒着がもとで多額の不良債権を抱え、1989年に行名を太平洋銀行に変えたが中身は変わらず、1996年破綻した。

当時は破綻銀行の国有化制度がなく、大蔵省の要請でさくら銀行が400億円を出資して100%子会社にした。その直後、当時の三和、東海、富士の3行も劣後ローンで資金援助し「わかしお銀行」を設立し太平洋銀行を清算した。清算された太平洋銀行の業務をわかしお銀行が譲り受けた。従業員もいったん解雇になり必要な人材だけがわかしお銀行に新雇用された。

この時、預金保険機構は破綻した太平洋銀行を引き取るわかしお銀行に対して救済目的で、1,170億円を金銭贈与している。つまり、1,170億円を無償でわかしお銀行にあげたのだ。

これでわかしお銀行は上手くいくはずが全く駄目で、2000年の11月に上記のさくら銀行がわかしお銀行の減資をし、三和、東海、富士の3行が債権放棄する事で合計400億円の金融支援をわかしお銀行に対して行った。

つまり、第一相互銀行のつけを、預金保険機構と旧さくら、三和、東海、富士の4行が1,500億円以上払っているのだ。預金保険機構は政府が大部分を出資しているのでこれは国が出したに等しい。つまり税金投入だ。我々のお金という事になる。

だいたい「太平洋」だの「わかしお」だの「さくら」だの「UFJ]だの「みずほ」だの援助されたりしたりした関係者の名前が皆変わっているので、それだけで煙幕をまかれたようなのに、さらに今回の三井住友銀行の合併で、これら一連の「事件」はすっかり闇の中だろう。

金融界では、誰も責任を取らない体制が続いている。旧大蔵省や日銀や旧都市銀行などから中小金融機関へ天下りをしていている体制が問題だ。これじゃ責任取れと監督する事ができない。


参考サイト:

三井住友銀行